《死に戻りと長チートで異世界救済 ~バチ當たりヒキニートの異世界冒険譚~》第39話『薔薇の戦士エリック・エイタス』

冒険者エリック・エイタス。

50年ほど前に活躍した伝説的な冒険者だ。

通稱”薔薇の戦士エリック”

なぜ彼が薔薇の戦士と呼ばれているかというと、彼が”薔薇の戦士連隊”というところに所屬していたからだ。

薔薇の戦士連隊

創設者:エリック・エイタス

連隊長:エリック・エイタス

隊員:エリック・エイタス

隊資格:エリック・エイタスであること

以上

そう、このおっさん、アホなのだ。

しかし冒険者としての腕前は超一流で、噂によると『水』と『風』の”魔法”をる魔法使いで、さらに剣にも長けた魔法剣士だったとのこと。

だったら二つ名は魔法剣士とかで良さそうなもんだが、ある日突然

「この度私は薔薇の戦士連隊を創設し、その連隊長に任命された。故に今後私のことは”薔薇の戦士”と呼ぶように!」

と吹聴して回ったので定著したとか。

なぜ薔薇なのかは不明。

特に薔薇好家というわけではなく、裝備品や所持品に薔薇をモチーフにしたものはなかったという。

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數々のダンジョンを制覇し、難関依頼を達していったエリックだが、10年前、ネスノラ州エイラン地區にある深淵のダンジョンへ潛ったのを最後に行方がわからなくなった。

深淵のダンジョンは未制圧のため管理が行き屆いておらず、人の出りを把握するのは困難なため、エリックがダンジョンを出たのかどうかすらわからないらしい。

10年たっても音信がないため一応死亡扱いとなり、族の依頼により邸宅の調査にったというわけだ。

この邸宅というのもまた厄介で、トセマから南へ1時間ほど歩いたところの草原にポツンと立っている。

その辺りはステップハウンドという犬型の魔が群れで生息しているため、素人がホイホイ訪ねることが出來ないのだ。

そんなわけで冒険者ギルドに依頼が回ってきたわけだ。

この依頼をけたのはフェデーレさんの口車によるところが大きいが、魔法剣士エリックに興味があった、という部分もある。

今回の依頼は、品の中に価値のありそうなものがあったら引き取る、というもの。

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依頼のため一時的に不産屋所有の収納庫を使えるようにしてもらっており、そこへめぼしいをどんどん『収納』して行く、という比較的簡単なお仕事。

ただ、『収納』で保管できる最大容量は収納庫の大きさに依存するが、ひとつあたりの収納の大きさは者の魔力に依存する。

とちょっとした小や素材の出しれて一杯という者は意外と多い。

なくとも俺は今まで『収納』で出しれできなかったものはないし、デルフィーヌさんも魔力には自信があるようで、大型家でも『収納』出來ることがわかった不産屋は小躍りしてたな。

邸宅にゴーストが出現するのも障害っちゃあ障害だけど、その程度ならデルフィーヌさんが半狂で仕留めてくれるから問題ない。

……『聖纏剣』いらんかったのとちがう?

**********

扉を開けて部屋にる。

おそらく書斎と思われるこの部屋には、手紙のった封筒が20通ぐらい散らばっていた。

どれも封が開いていたので、試しに拾ってみた。

『連隊長、いよいよ明日です』

宛先:エリック・エイタス

差出人:エリック・エイタス

「……ねぇ、なんなの、この人?」

ここまで來るとゴーストやこの廃墟の雰囲気にも慣れたのか、デルフィーヌさんも適當に手紙を読んでいた。

呆れているということは、似たり寄ったりの容なんだろう。

「ただのアホだろ」

とりあえず手紙類はひとまとめにして『収納』。

しかし、さすがSSランク冒険者だけあって、調度品や食の類は高価そうなものばかりだった。

大きい家類もどんどん『収納』していく。

大人數用のテーブルや柱時計になると俺の魔力じゃ無理だったが、デルフィーヌさんはあっさり『収納』してしまった。

うーん、この人の魔力量、侮りがたしだな。

ただ、壁や床に建てつけてあるものはさすがに『収納』出來ないので、転寫機で寫真に納めておく。

一通りめぼしいものを『収納』し、最後に書斎を一回りした際、一通の封筒を見つけた。

これまでのものと違い、宛先は「ここを訪れたものへ」となっている。

封はされていないようなので、中を出してみた。

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君がこの手紙を呼んでいるということは、

私は既にこの世にいないということだろう。

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なんだ?

このオッサン死を予していたのだろうか?

決死の覚悟で深淵のダンジョンに挑んだとかか?

しかし、その文章の後はなんの記載もない。

ただ、手紙は3枚綴になっているようで、2枚目を見ると続きがあった。

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という書き出しの手紙を一度は書いてみたいと思っていたが、

実際書き始めてみると、自分の死ぬ姿というのが想像できないのでやめた。

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……やっぱアホだな。

一応3枚目もみとくか。

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この機の2段目の引き出しは二重底になっている。

そこに魔法剣に関する所見を記しておく。

しければ持っていけ。

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イベントアイテムキター!!

いやいや、これめっちゃ重要じゃね?

早速引き出しを開けると、手紙の通り二重底になっていた。

そこから一冊の書を取り出す。

「……いや、鍵かかってんじゃん」

その書は錠でロックされ、開くことが出來なかった。

いろいろ探してみたけど結局鍵が見つからなかったので、機の上に置いて一緒に『収納』しておいた。

「……帰ろっか」

「そうね……」

俺たちはエリック・エイタスの邸宅を後にした。

**********

日沒前にトセマへった俺達は、とりあえずギルドへの報告を終え、メシも食わずに寢臺にった。

デルフィーヌさんも自分の宿に帰る気力がなく、ギルドの寢臺を使ったようだ。

なんだか隨分と疲れる依頼だった。

翌朝起きて歯を磨いていたら洗面臺でデルフィーヌさんと鉢合わせ。

向こうは半分寢ぼけててこっちには気づいてないみたいだったけど、パジャマ姿で寢ぼけてるじはちょっと可かった。

が同じフロアに泊まるのはどうかと思ったが、聞けばギルドの寢臺には1人以上れない仕掛けがあるらしい。

タダで泊まれる個室なんてのはの気の多い冒険者からすれば格好の盛り場だもんな。

そりゃそれなりの対策をしてるわけだわ。

その後、支度を終えて階段を降りようとしたところで、さっきとは別人みたいにシャキッとしてるデルフィーヌさんと合流。

アレを見てコレをみると、ギャップのせいかこの通常バージョンも良く見えるね。

っていうか、普通に見れば”絶世の”と言っていいレベルの人だし。

絶壁だけど。

「な、なによ?」

こうやってじっと見てると軽くうろたえるのも、今にして思えば可いな。

「いえ、別に。おはようございます」

「え、ああ、おはよう」

付は例のごとく詐欺師のフェデーレさん。

「や、おふたりさん。報酬屆いてるよ」

ってことでカードを渡して報酬をけ取る。

依頼主的には大型家まで引き取れるとは思っていなかったらしく、想像を遙かに上回る果だったので、なんと報酬は本來の倍、2,000Gとなった。

本來は何回かに分けて調査を依頼する予定だったのだが、めぼしいものはすべて『収納』しており、殘りのは寫真を見た結果引き取るのは困難と判斷したので、次回以降の調査が不要になった。

場合によっては高ランクの魔士に高い報酬を払って『収納』してもらう予定だったものまで俺たちが引き取ったので、倍払っても當初の予算を大幅に下回ることになるのだとか。

協議の結果報酬は1,000Gずつ折半ってことで。

「それから、族の方からこれを預かってるよ」

手渡されたのは書斎で見つけたエリックの手記だった。

しかも錠が開いている!

「あの、これって?」

「ああ、なんでも族の方が以前預かっていた鍵があったらしくてね。試したら開いたんだって。で、容見てもよくわからないし、本人の志に従うなら発見者に渡すのが妥當だろうってことで」

というわけで、とりあえず俺がけ取った。

「これ、どうする?」

「あなたが見つけたんだから、あなたが持ってればいいでしょ」

というわけなのでありがたくいただくことにする。

「それってあのエリック・エイタスの手記だよねぇ? どんなことが書いてあるの?」

フェデーレさんが興味津々だったで、とりあえず適當なページを開いてみる。

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魔法剣『風刃剣』について

まず魔法により風を刃に纏わせる。

それを遠くに飛ばすイメージで剣を振ると、遠くの敵を倒せるので便利だ。

しかし、それならば<風魔>『風刃』を使ったほうが遙かに楽だし、威力も高い。

私は天才であるがゆえに<風魔法>と<水魔法>を數年で習得できたが、凡人である君らは一生かかっても単屬の魔法を覚えるにとどまるだろう。

だが魔士ギルドに行けば、金を払うだけで魔を覚えられるのだから、凡人は修行する時間を労働に回して金を稼ぎ、その金で魔を覚える方がいい決まっている。

ああ、魔法ではなく、魔法剣の話だったな。

先日、新たに開発されたという『風斬飛剣』というものを試してみたが、やはりそちらの方が『風刃剣』より使いやすい。

無論、天才である私が使う『風刃剣』には及ばないが、魔力あたりのコストパフォマンスを考えると『風斬飛剣』もありじゃないかな。

結論

凡人は魔法の修行をする暇があったら金を稼いで魔を覚えろ

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俺は手記を床に叩きつけた。

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