《死に戻りと長チートで異世界救済 ~バチ當たりヒキニートの異世界冒険譚~》第54話『工業大國ヘグサオスク』

ヘグサオスク共和國。

通稱『工業大國』。

人口の七割がドワーフで、その大半が何らかの職人として活躍している。

の制作はもちろん、魔道や今回お世話になる義肢なんかの技も大陸一なんだとか。

ドワーフってのは背が低くて筋質でずんぐりむっくりな型の人が多い。

平均長は150前後だが、平均重は100kgぐらい。

見た目はホント筋ダルマってじ。

顔の半分はヒゲで覆われているが、表かなんで話してるとなんかほっこりするんだわ。

怪力だが手先は用で、そのぶっとい指でどうやってそんな細かい細工を施すの? っていうぐらい繊細な工蕓品を、この街に來ていくつも見たわ。

今、目の前にいるブルーノさんも、厳つい筋ダルマ。

フランツさんからの手紙を読んでうんうん唸ってる。

「費用は問わねぇから最高のものを、ってフランツの野郎、あのお嬢ちゃんにどんだけれ込んでんだ?」

ハリエットさんとデルフィは現在宿にいる。

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一応顔合わせと腳の採寸だけは終わらせたんだが、移の疲れが出ていたようなので、デルフィを護衛につけて宿へ戻ってもらった。

「いや、れ込むとかじゃなくてですね、フランツさんの友人が彼の腳をあんな風に……」

「ああ、そいうことか」

「で、どんなじでしょうね?」

するとまたブルーノさんは難しい顔で唸り始め、手に持っていたジョッキを煽った。

中にはビールがっているのだが、ドワーフってのは酒で水分補給をするらしいのでそこは突っ込まない。

なんか酒飲みの言い訳みたいな話だが、事実なのだから仕方がない。

「急ぎかい?」

「まぁ、遅いよりは早いほうが……。長くなれば僕らの護衛報酬や滯在費もかさみますし」

「うーむ……そうなると、材料がなぁ」

ハリエットさんの採寸を終えた俺たちは、今材料保管庫に來ていた。

いろんな金屬のインゴットが所狹しと並んでいるのだが、ブルーノさんの視線の先にある棚だけ在庫がないようだ。

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「どうせなら軽くて丈夫でかしやすいミスリルで作ってやりてぇんだが、あいにくと今在庫がなくてよ」

「費用を気にしないんなら仕れたらどうです?」

するとブルーノさんはまたジョッキを煽ったあと、空いている方の手で頬をポリポリとかく。

けねえ話だが、いま金屬の流通量が減っててなぁ。特にミスリルは手しづらいんだわ」

「採掘量が減ってるとかですか?」

「いや、採掘・量は減ってねぇ。問題なのは採取・量の方なんだわ」

「採取、ですか?」

「そう、採取」

そこでブルーノさんは俺を見て何かひらめいたような表を浮かべた。

「そういやお前さん方、冒険者だったよな? それも、そこそこ高ランクの」

「ええ、一応Bランクですけど」

「ほう、Bランク? なら問題ねぇな」

ブルーノさんはジョッキを煽って殘りのビールを飲み干し、ゲップとともに大きく息を吐いた。

その息が不思議と酒臭くないのは、アルコール分解機能がヒトと異なるからだろうか。

「すまんが、ひとつ儂からの依頼をけてくれや」

そう言ってブルーノさんはニヤリと笑った。

**********

金屬の生産は主に”採掘”と”採取”に分かれる。

採掘は文字通り、鉱山から鉱石を採掘するものだ。

その鉱石を製して金屬を取り出す。

そしてもう一方の採取だが、これは特殊なダンジョンで特定のダンジョンモンスターから得られるドロップアイテムを集めることだ。

ヘグサオスクに來て最初に訪れたフュースの東に『フェイトン山』と呼ばれる山がある。

その山が丸々ダンジョンとなっているのだが、そのダンジョンには様々な種類のゴーレムが出現する。

そのゴーレムたちだが、通常のダンジョンモンスターと異なり、魔石を落とさない。

代わりにの一部を必ずドロップアイテムとして落とすのだが、例えば”アイアンゴーレム”のは高純度の鉄で出來ているので、特に製等せずそのまま使えるのだ。

今回の依頼はミスリルの採取なので、ミスリルゴーレムを倒して、そのドロップアイテムを集めなくちゃいけないわけだ。

倒せば、鉱石50~100kgに含まれるのと同等のミスリルが得られるらしい。

「しかし、なんでドロップアイテム集めるだけなのに採取量が減るんです? 最近はどのダンジョンも活発化してるんで、魔石なんかは価格が下落してるんだから、金屬だってそうなりそうなもんですけどね?」

「それよ。そのダンジョンの活発化ってのが採取量低下の原因なんだよ」

「ん? ゴーレムがたくさん出現すればその分採取量は増えるんじゃないんです?」

「そうさな。魔石ってやつはどんな弱っちいモンスターからでも採れるが、ミスリルはミリルゴーレムからしか採れねぇ」

「はぁ」

「ミスリルゴーレムってのはな、全ミスリル製なんだよ」

「あ」

「倒すのが無茶苦茶しんどいんだわ。場合によっちゃ複數のパーティーで協力しながら一週間近くかけて倒すってこともあるんだわ」

「なるほど、その厄介なモンスターが同時に2も3も出現したらそりゃ大変ですねぇ」

「そういうこった。鉄工ギルドじゃあ、そろそろ討伐報酬を大幅に上げて、腕利きの冒険者を呼びこもうかって話にもなってるんだわ。魔石の価格下落もあるし、高ランク冒険者を上手く引き込めそうではあるんだが、まだ実現はしてねぇってわけよ」

「しかしそれをやると金屬の価格が上がりませんかね?」

「上がるだろうな。しかしがないよりはマシだ。今回だって、依頼主が金に糸目をつけねぇってんだから、さえあればすぐにでも取り掛かれんだぜ? しかしがなけりゃいくら金があっても意味がねぇ」

「なるほどねぇ……。しかしそんなミスリルの塊みたいな奴を俺らで倒せますかね?」

「大丈夫じゃねぇか? お前さん方魔が得意なんだろ?」

「いや、まあそうですけど、なんで?」

「いや『ラブラブ魔道アタッカーズ』なんつーパーティー名なんだからそうなんだろうと……」

「んなっ……!?」

パーティー名? どういうことだ?

「しっかし最近の若いもんの考えはわかんねぇなぁ。儂だったら恥ずかしくてこんな名前絶対やだぜ?」

「いや、俺だって恥ずかしいですよ!!」

くそう……たぶんエレナさん辺りだな?

早急に対処しないとこの悪名がどんどん広まってしまうぞ。

「そ、そうか。まぁ事があるんだな」

ここでいくら言い訳しても無駄なので、とりあえず話題を変えねば。

「えーっと、ミスリルゴーレムって魔が効くんです?」

「まぁ理攻撃よりはな。ミスリルだから魔道耐もそこそこ高いがね」

「弱點屬とかってあります?」

「無い。無屬が無難だな」

「例えば頭に文字が書いてあったり……?」

「……? いや、聞いたことはないな」

つまり”真理”を”死”に変える戦法はとれない、と。

の真ん中辺りに核があるから、そこを破壊すればの一部を殘して消滅する」

ってことは『魔纏剣』『魔槍』あたりでなんとかなるか。

デルフィにはとりあえず魔弓からの『魔矢』で対応してもらおう。

「ああそうだ。採取に行く前にこの街の鉄工ギルドに採取士として登録しておいてくれ」

「なんかいいことあります?」

「ああ。納品専用の収納庫を無料で使えるからな。お前さん方が収納した分はすぐに儂が使えるように出來るから、作業も早めに始められる」

「なるほど。了解です」

うん、いちいち自分たちの収納庫に収めてギルドに行って納品って手間が省けるだけでもありがたいな。

それに、作業は出來るだけ早めに始めてもらった方がいいに決まってる。

「もし余分に納品できるようなら、それを報酬としてお前さん方の裝備を作ってやってもいいぞ?」

「マジですか!?」

「おう、マジマジ。まあ儂は義肢師なんで武は知り合いに頼む形にはなるがな」

「じゃあミスリル集めたらミスリル製で?」

「おう。なんならオリハルコンでもええぞ」

「おお! ちょっと頑張ってみますよ」

夢の金屬オリハルコン!! やっぱあるんだな!!

というわけで冒険者ギルドで簡単に事を説明し、フランツさんたちに連絡をとってもらった。

あと、パーティー名の変更も忘れずに行ったあと、意気揚々と宿に戻りデルフィに事を説明。

裝備作のところで目のが変わったね。

「その間ハリエットさんは?」

「こっちの冒険者ギルドで護衛を手配してくれるって。なくとも義足に必要な材料は集めないと何も始まらないんで、その護衛報酬も必要経費ってことで、フランツさんたちから了解はとったよ」

「ふーん。ハリエットさんはそれでいいですか?」

「おふたりにお任せするわ」

「では、できるだけ早めに素材集めてますね」

「ごめんなさいねぇ」

「いえいえ、俺らにもメリットあることなんで、サクッとやってきますよ」

**********

その後しばらくすると現地冒険者ギルドから護衛がきたのだが

「うっすうっす! おヒサっす!!」

と、軽いノリで現れたのは基礎戦闘訓練で1日だけ同じだった犬獣人のアルダベルトだった。

「おお、久しぶり!! アルダベルトが護衛を?」

「そうっすね! オラ、ハリエットさんのためなら命捨てる覚悟っすから、安心して行ってくるっす!!」

「ふふ、アルちゃん、その気持ちは嬉しいけど、命は大事にね」

な……!? このヤロウ稱で呼んでもらってんのか?

「ふへへ……オラもう死んでもいいっす。」

おう、さっさと死にやがれこの駄犬がっ!!

「ねぇ、変なこと考えてない?」

デルフィがジト目でこっちを見てくる。

いかんいかん、俺にはデルフィがいるじゃないか。

あの駄犬と違って俺はリア充だからな!!

「で、アルちゃん、そちらのは?」

ハリエットさんの視線の先に、小柄ながいた。

アルダベルトに気を取られて見逃してたが、パーティーメンバーか何かだろう。

1人で護衛ってのも辛いからな。

そのも同じく犬獣人と思われるが、アルダベルトがレトリーバーっぽい雰囲気ならの方はプードルっぽいな。

ぽわぽわの頭が印象的だが、小柄で細だけどは引き締まって見える。

うーん、なんかすげー可らしいじではあるけど、アルダベルトより數段強いんじゃね? ってじだなぁ。

左右それぞれの腰に短めの剣を佩いてるから、雙剣使いかな。

あ、そうそう、アルダベルトは結局大剣を選んだみたいだ。

俺の長ぐらいある大剣を背負ってるわ。

「おっと、紹介が遅れたっすね。オラの嫁のフェドーラっす。ハリエットさんのお世話は彼がするんでご安心くださいっす」

「あの、アルダベルトの妻のフェドーラです。夫がいつもお世話になっております。よろしくお願いします」

ぐぬぬ……駄犬死すべしっ!!

「ショウスケェ……?」

おっとデルフィのジト目が睨みに変わったので、しょーもないことは考えないでおこう。

「じゃあ、後は任せたぞ」

「うっす! 任せるっす!!」

「あの、おふたりともお気をつけて」

けっ! 駄犬のくせに出來た嫁さんもらいやがって……!!

「ごふっ!!」

脇腹に……デルフィの……拳が……。

「じゃあ、行ってきますね。ショウスケ! キリキリ歩く!!」

デルフィにケツを蹴り上げられつつ、俺たちはフェイトン山行きの夜行馬車に乗った。

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