その後俺たちはさらに5のミスリルゴーレムを倒した。

デルフィもさっきの俺の技を參考に、風魔法で作った矢に回転を加えることでコスパを上げるとともに、オーバーキルにならないように魔力を調整することで、魔力酔いを起こすことなくミスリルゴーレムを一撃で倒せるようになっていた。

とりあえず俺はさっき開発した、剣に纏わせた魔力を回転させつつ刺突を飛ばす技を『ねじ突き』と命名することにした。

「うーん、『ねじ突き』ってダサくない？」

「おいおいわかってねぇなぁ。左回りは闇と破壊への道なんだぜ？」

「意味分かんないし……」

「というわけでデルフィのやつは『ねじ矢』な！」

「はぁ？」

「いらっっしゃしませねじやのお～やじぇぶぅっ！！」

からかってたらビンタされたよ。

とにかく俺の『ねじ突き』とデルフィの『ねじ矢』ならミスリルゴーレムを問題なく狩れることがわかったので、一旦帰還玉で出発點に戻り、制限を解除してもらった。

この時點でハリエットさんの義足に必要な材料は充分揃ったと、納品用収納庫にブルーノさんからの通信がっていたが、ミスリル製の裝備がしかった俺たちはさらなる果を求めて25番口にった。

この時張らずにさっさと帰っておくべきだったと、後で後悔することになるわけだが……。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

25番口はいまやミスリルゴーレムの巣窟となっており、れ食い狀態で狩りまくれる。

さらに、激レアであるオリハルコンゴーレムも出現。

かなり苦戦したが『二段突き』『ねじ突き』『ねじ矢』のコンボで何とか倒せることがわかり、2時間ほどでアイアンゴーレム28、ミスリルゴーレム12、オリハルコンゴーレム4を狩ることが出來た。

さらに採取を続けようとしたところで突然景が変わる。

さっきまで坑道にいたはずだが、突然開けた場所に変わったのだ。

雰囲気的には同じフェイトン山だと思われるんだが、もしかしてなにか転移系の罠にかかったとかか？

しかし事前に調べた限りだとそういう報はなかったし、そもそもトラップなら＜罠知＞に引っかかるはずだ。

「ここ……出発點じゃない？」

「あー、確かに」

よくよく周りを見てみればそんな雰囲気だわ。

一応確認のため転移陣があるであろう辺りに移してみる。

《スタート地點を更新》

お、スタート地點が更新されたってことはやっぱ出発點だな。

転移陣も無事見つかったし。

しかしなんでいきなり出発點に？　と思ってポケットの中を確認すると、帰還玉がなかった。

「なぁ、帰還玉がねぇわ」

「え？　もしかして誤って砕いちゃったとか？」

「うーん、そんなヘマはしないと思うんだけどなぁ。誤作かなんかか？」

とりあえず帰還玉無しで探索するのは帰りが面倒なので、報告がてら付に向かおうとすると、付の方から誰か走ってくるのが見えた。

「おおーい！　急いでちょうだーい！！」

どうやら俺たちを呼んでいるらしい。

とりあえずこちらも小走りで向かい、走ってきた付のおばちゃんと合流する。

「はぁ……はぁ……。いや、ごめんねぇ。突然のことで驚いたでしょ？」

「なにごとです？　なんか気付いたら出発點に戻ってたんですけど」

「それね。帰還玉を強制発させてもらったんだわ。悪いんだけど急事態でね」

「急事態？」

「ええ。フュースがモンスターの群れに襲われちゃってね。一刻も早く救援に向かってほしいんだよ」

「モンスター？　魔じゃなく？」

「倒すと消滅するから、どこかのダンジョンモンスターだろうってことだね。一番可能が高いのはエムゼタシンテ・ダンジョンかねぇ」

なんにせよフュースに急がないと、ハリエットさんが心配だ。

「高速馬車を待たせてるよ。もう20人近い冒険者に乗ってもらってんだけど、Bランクのアンタらには出來るだけ早く向かってほしいからね！　頼んだよ！！」

と、おばちゃんにバシッと背中を叩かれる。

付のおばちゃんの言うとおり駅には高速馬車が待っており、俺たちが乗り込むと同時に出発した。

かなり急いでいるようで、スレイプニルタイプの高速馬車であるにもかかわらず、結構揺れた。

30分ほどでフュースに到著。

なかなかひどい狀態だった。

街中には見覚えのあるダンジョンモンスターが溢れており、建が破壊され、瓦礫やら踏み荒らされた雑貨やら食料等いろんなまが散らばっている。

戦している人もいれば、倒れてかない人もいる。

みたところ、ゴブリンやコボルト、オーク等、エムゼタシンテ・ダンジョン5階層ぐらいまでのモンスターが多いようだ。

いくら淺層の弱いモンスターと言っても、戦闘経験のない一般市民じゃ太刀打ち出來ないし、なにより數が半端ない。

ざっとみただけでも200～300はいるんじゃないだろうか。

「すまねぇが一匹でも多く倒してくれ！　あと治療士ギルドと冒険者ギルド周辺は安全を確保してるから、市民を見つけたら導してくれよ！！　頼りにしてるぞ！！」

馭者席から冒険者に激が飛ぶ。

冒険者達は「おう！」だの「任せとけ！」だの気合のった言葉で答え、馬車から降りると同時に駆け出してモンスター討伐に向かった。

俺たちも例外じゃない。

デルフィは混戦中の區域で風魔法の矢を使って複數攻撃を行い、的確にモンスターだけを仕留めていく。

俺は手近なモンスターを手當たり次第突き殺しつつ、モンスターだけが固まっているところを探し出しては『魔渦』で殲滅していく。

「おお！　さすが『魔道アタッカーズ』の名は伊達じゃねぇな！！」

と、近くで戦っている冒険者からお褒めの言葉をいただく。

パーティー名については早急に対処したが、名前を考えるのが面倒だったので『ラブラブ』だけ取り除かせてもらった。

はっきり言ってダサすぎるので、浸する前にまた改名しよう。

10分足らずでモンスターの群れはほぼ全滅させた。

単でウロウロしてる連中は他の冒険者にまかせ、俺たちは宿に急いだ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

宿の狀況は”最悪”の一言だった。

他の場所に比べ、ここは特に被害が大きい。

建は倒壊寸前だし、口付近に従業員や宿泊客と思われる人の死がそこかしこに見られる。

中にっても同じような狀況で、出來るだけ死を踏まないよう気をつけつつもハリエットさんの部屋に急ぐ。

「ハリエットさん！！」

悲鳴に近いびをあげてデルフィが部屋に飛び込む。

壁や天井にまでが飛び散っているが、そこにハリエットさんの姿はなく、の海で倒れ伏すアルダベルト夫妻の姿だけがあった。

幸い2人とも息はあったが、この狀態での回復魔は危険と判斷し、『止』のみかけて、俺はアルダベルトを、デルフィはフェドーラさんを抱え、いつ倒壊するとも知れない宿屋を出た。

宿屋前の広場で2人を寢かせ、狀態を見る。

フェドーラさんは右腕の肘から先と、左腳ひざ上あたりから引きちぎられており、それに伴う大量出で意識を失っているようだが、それ以外大きな傷をけた様子は無いので、デルフィが抱えて治療士ギルドに走った。

問題はアルダベルトの方だ。

や腹に貫かれたような傷が全部で4箇所。

おそらく重要な臓をいくつか損傷しており、早急に治療しなければ死んでしまうだろう。

といって回復魔は使えない。

回復魔というのは、者の魔力と被者の生命力を元に傷や疲労を回復する。

致命傷を負った怪我人に対する回復魔というのは死を早める行為となる。

こういった場合、者の魔力で被者の生命力を無理やり底上げする蘇生魔があればなんとかなるのだが、殘念ながら蘇生魔を使えるのはSランク以上の治療士に限られる。

Sランク治療士などというものは各國に1～2名しかおらず、さらに蘇生魔というのは者にかかる負擔が非常に大きいため、基本的には要人に対する急処置以外使われることはない。

つまり、このままだとアルダベルトは確実に死んでしまう。

「人の奧さんがいることを知ったときには死ね死ねと思ったが、ガチで死にかける奴があるかよ」

意識を失っていたアルダベルトだったが、2～3度咳込んだ後、意識を取り戻した。

「……面目ねぇっす……。ハリエットさんが……さらわれたっす」

さらわれた。

つまり殺されてはいないってことか？

「もういい、しゃべるな」

「フェドーラ……は……」

「デルフィが治療士ギルドに連れて行った。大丈夫だ」

「そ……っすか……」

それを聞いて安心したのか、アルダベルトは再び意識を失った。

まだ息はあるが、先程に比べ明らかに鼓は弱まっている。

「さて、どうすっかね」

回復魔は使えない。

蘇生魔はない。

このままだと數分でアルダベルトは死ぬ。

萬事休す？　いや、まだ手はある。

フェイトン山で學んだだろ？

魔がダメなら、魔法を使えばいいじゃない。