《死に戻りと長チートで異世界救済 ~バチ當たりヒキニートの異世界冒険譚~》第62話『実家にご挨拶』

街を歩いてると時々デルフィが聲をかけられるんだが、なんというか、日常がハンパねぇ。

1年以上里を離れてんのに「久しぶり」が一切ないの。

家に著いた後もそう。

「ただいまー」

「あらデルフィお帰り。夕飯どうする?」

「あー、うん、食べる。父さんは?」

「お父さんなら裏庭でゴロゴロしてたわよ」

「はーい」

ってじで、里帰りゼロだよ。

今朝出かけて夕方帰ってきました、的な雰囲気だわ。

これって長命のエルフあるある?

「あら、お客さん?」

デルフィに促されて家にると、俺の存在に気付いた、おそらく母親と思われるが顔をのぞかせた。

うーん、似てるっちゃあ似てるか?

さすがエルフだけあって、歳は20代にしか見えないけどね。

「あ、どうも」

「あの、後で、ちゃんと紹介するから!」

軽く挨拶をしたら、デルフィが間に割ってってきた。

「あらそう? じゃまたあとでね」

と母親らしき人は奧に引っ込んでいった。

家の中は歐米風というかなんというか、とりあえず靴のまま上がるじで、家の中を突っ切って裏庭へ。

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裏庭は生け垣で囲まれた芝生のスペースがあり、そこに安楽椅子が一腳。

1人のエルフの青年がこちらに背を向ける形で椅子に座っていた。

「父さん」

「んー? おー、デルフィ」

デルフィの父親は、なんかアロハシャツみたいな派手なガラの半袖シャツと、白いヒザ下ぐらいまでの短パン姿でゴロゴロしていた。

振り向いた顔は、あまり似合うとはいえない大きなサングラス(レンズ無し・遮機能により半明)で半分が隠れていた。

「話あるんだけど」

「ほいほーい。んじゃ晩飯ン時でいい?」

「うん」

「じゃあ後でー」

と、向こうを向いてゴロゴロを再會。

俺に気付いたかどうかはサングラスで視線が隠れてわからなかった。

「どうする? 里の中見て回る? それともちょと休んでく?」

「んー、なんやかんやで歩き通しだったし、ちょっと休みたいかな」

「そ。じゃこっち」

とデルフィについて二階へ。

階段を昇る前に靴はぐらしい。

うーむ、よくわからん風習だ。

階段を昇った先にいくつか部屋があり、そののひとつのドアを開けて部屋にる。

見たところ、デルフィの寢室みたいだ。

これといって目につくもののない、なんだかガランとした部屋だな。

部屋の端にセミダブルぐらいのベッドがあり、サイドテーブルとちょっとした照明

本棚やクローゼットは空だった。

「何もないねぇ」

「出るときに全部処分したからね」

「ふーん。でも埃とか全然たまってないな」

「一応『浄化』機能付きの家だから」

やっぱ便利だな『浄化』。

「よっこらせっと」

ベッドに腰掛け、ばしつつそのまま仰向けに倒れたところ、なんだか一気に疲れが出て、そのまま眠ってしまった。

**********

2時間ほどで起こされ、食卓へ。

なんかすっげーいいにおいがしてるんだけど。

「ちょ、母さん、これ……」

食卓テーブルの上には、金屬プレート皿に乗せられたステーキが4人分並んでいた。

ジュウジュウと味そうな音とにおいを漂わせている。

「ドラゴンステーキじゃない!」

ドラゴンステーキ!!

ヘルキサの塔で1回食ったんだがすげー味かったんだよな。

ドラゴンてのはあの図で飛び回るわけだが、筋力だけで飛び回るなんてのは理的に考えて不可能なわけだ。

それどころか、単純な筋力だけでは自重を支えることも出來ない。

なので、ドラゴンというのはその一挙手一投足に至るまで、必要なエネルギーのほとんどを魔力で補っているのだ。

つまり、あれだけ大きいで、力強いきが出來るにも関わらず、あまり筋を使っていないということになる。

ということはだ、が非常にらかい、ということになるらしい。

「おおー、ドラゴンステーキじゃーん! なになにー? なにか良いことあったのー?」

裏庭から親父さんが戻ってきたようだ。

「だってぇ、デルフィちゃんが男の人連れてきたんだもん。ちょっと発しちゃった」

そこでご両親2人の視線がこちらに向く。

親父さんはすでにサングラスを外している。

「あっれぇ? もしかして彼氏、的な~?」

と、俺を指差す。

「しかもヒト族じゃ~ん」

「えーっと、あの……」

「ま、いいや。早く食べようぜー。さ、座って座って」

一応挨拶でもしておこうと思ったのだが、親父さんはさっさと座ってにナイフをれ始めた。

デルフィが軽くため息をつき、座るよう促してきたので、とりあえず席につく。

親父さんはナイフで切り分けだを口に放り込み、2~3度噛むと、目を見開いでお袋さんの方を見た。

そのあと急いで咀嚼し、飲み込む。

「ママァ、これすっげぇ瑞々しいんだけど、何ドラゴンよー? 超うめーわー」

「あのねぇ、ブルードラゴンのおが出てたのよ―」

「ブルードラゴンー? わーお、それって超レアじゃーん。でもって……超レアじゃーん!」

と、後半の部分での斷面を得意げに見せてくる。

見たところ斷面の中心は赤く、生に近い狀態のようだ。

つまり、希価値と焼き加減をかけてるってことだよな。

「あらぁ、パパったらおかしー」

うん、見た目青年だけど中オッサンだわ、この親父。

んでお袋さんもおばちゃんだわ。

とりあえず話は後にしてステーキをいただくことにした。

いや、マジうめーわ。

ヘルキサの塔で食ったドラゴンステーキより味いし、付け合せの野菜のソテーとかスープとかも味い。

パンもギルドの食堂で出る黒パンと違ってらかいし。

結局大した會話もなく食事に集中してしまった。

ドラゴンステーキを平らげたあと、食後のコーヒーが出たので、それを飲み干し、いよいよ俺は切り出すことにした。

「えーっと、その、はじめまして。デルフィーヌさんと結婚を前提にお付き合いさせていただいている、ショウスケといいます」

ふう、なんとか言えたぜ。

「ほーう、結婚ねぇ」

「あらぁ」

「えっと……そういうことだから」

好奇の視線を俺たちに送っていたご両親だったが、ふと2人揃って真顔になり、デルフィの方を向いた。

「デルフィ。言ってなかったけど、俺とママは初婚じゃないんだわ」

「は?」

ここで突然ご両親の昔語りが始まった。

親父さんとお袋さんは、時期は異なるもののそれぞれヒトの伴がいたらしい。

しかし壽命が違うためそれぞれ相手を看取り、里に戻ったあと、いろいろ縁があって再婚したのだとか。

ただ、お互いデルフィ以外に子供はいないとのこと。

「ま、何が言いたいかっつーと、自分が若いまま相手が老いて死んでいくってのは、結構きついもんがあるぜ、ってことよ。その辺の覚悟はしときな」

「えっと、うん」

うーん、なんか結構重い話してるはずなんだけど、親父さんの口調のせいで微妙に軽くじるなぁ。

すると親父さん、今度は俺の方を向いた。

「ショウちゃん」

っていきなり気安いなぁ。

「俺は相手を置いて死んでいく奴の気持ちってのはわかんねーわけだけど、もしかしたらそれはそれでキツイかもしんねーよ? そこんとこ大丈夫なじ?」

まぁ確かに種族の差ってのは深く考えてなかったなぁ。

「えっと、そうですね。その辺はもうし時間をかけてお互い見極めていければと……」

「おーっと、まっじめー!! いいじゃんいいじゃん、デルフィいい男見つけたじゃーん?」

いや、真面目な話でそのノリうぜーわー。

「ところでショウちゃんってばヒト族? なーんか雰囲気ちがくね?」

「あのね、ショウスケは異世界人なのよ」

これについてはちゃんと話すと事前に決めていた。

「異世界人? じゃあサンペーのじいさんとおんなじニホンジンなわけー?」

「あ、はい。やっぱ賢者サンペーが日本人ってのは有名な話なんですかねぇ?」

「さぁ? 俺は本人に聞いたからねー」

おいおいこのおっさんサラッととんでもないこと言いやがったな。

「もしかして、會ったことあるんですか?」

「あるよー。っつーかマブダチ的な? エルフの里にサンペーじいさんの技持ち込んだの俺だしー」

あれ、この人もしかしてすごい人?

「俺がサンペーじいさんに會ったのはまだ200歳になる前だったかなぁ。あのずんぐりむっくりのじいさんが今や賢者とか呼ばれてんだもんなー。イメージないわー」

と、ここでちょっとした思い出話をつらつらと聞いた。

親父さんがサンペーじいさんに會った頃はすでにそれなりの名聲を得ていた後で、サンペーじいさんは基本的にずっと畑で野良仕事してたらしい。

そこに國の重鎮やら研究機関の偉いさんやらが足繁く通って教えを請うていた。

フットワークも軽かったらしく、んな所から請われては視察に行き、その土地にあった農業の知識を広めていっていたのだとか。

「まあ、あれだ、デルフィ。俺らエルフは長生きだから、多の失敗は後からいくらでも挽回できるわけだし、とりあえず若い頃は好きな様に生きとけ」

「うん」

「ショウちゃん、デルフィのことよろしくね」

「あ、はい」

なんというか、相手の両親への挨拶イベントってこんなんでいいの? と疑問に思わんこともないが、良好な関係が築けたのはよかったな、と思う。

壽命の差は後々問題になるかもしれんが、それはまぁそのうち考えることにして、しばらくはデルフィと2人で楽しくやっていこう。

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