《死に戻りと長チートで異世界救済 ~バチ當たりヒキニートの異世界冒険譚~》第66話『超級攻撃魔』
「あ、そういえばハリエットさん、今この街にいるらしいわよ」
結局あの後、必死で抵抗はしたものの鬼どもに食われて死んでしまった。
目の前で食われていき、絶の悲鳴を上げるデルフィの姿は出來れば忘れてしまいたい。
全に走る激痛よりもそっちの方がきつかった。
「ちょっと、聞いてる?」
「ん? ああ、ごめんごめん」
さて、今の戦力じゃ屁のつっぱりにもならんことがわかった。
はっきりいって敵の數が多すぎる。
といって今から戦力を集めても、あの勢いじゃ、あと半日遅ければエラムタ壊滅ってじだし。
っつーか、あれをどう説明すればいいのかわからんし、そもそも今の段階じゃ俺は何が起こってるか知らないはずだし。
ふむう、もっと効率よく広範囲に攻撃出來る方法はないものか……。
「……どうしたの、難しそうな顔して」
「ああ、いや別に。えっと、なんの話だったっけ?」
「だから、この街にハリエットさんがいるって話」
「ふーん、ハリエットさんがねぇ」
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「ねぇ、ちょっとだけ挨拶とか行けないかしら?」
「いやぁ……どうだろ」
いや待てよ。
ハリエットさんがいるのか……。
「ちょっとごめんよ」
一言斷って席を立ち、馭者席へ向かう。
「ちょっとすいません。SSランク冒険者のショウスケです」
『ああ、どうもどうも。なんでござんしょ?』
「悪いけど寄りたいところあるから、先に行っといてくれます?」
『えっと……』
「大丈夫。あとでちゃんと駅に行きますんで」
『はぁ……じゃあ停めやしょうか?』
「いや、このまま降りるんで、出り口の鍵だけ開けといてください」
『へぇ。じゃいつでもどうぞ』
「何ごと?」
「うわっ!?」
馭者との會話が終わり、振り返ろうとしたらデルフィがすぐ近くにいた。
いや、急に聲かけられたら驚くでしょうが!!
「ねぇ、さっきから様子がおかしいんだけど、どうしたの?」
「えっと、詳しい説明はあとでするから、とりあえず魔士ギルドに行こう」
「……まぁ、いいけど」
デルフィには不審な目を向けられたが、説明のしようがないのでとりあえずはぐらかそう。
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**********
「おらぁ、お二人さんお揃いで」
うーむ、相変わらず見事な……
「イテッ」
シバかれたよ、デルフィに。
「なんだか大変な事が起こってるみたいだけど、わざわざ挨拶に來てくれた……ってわけじゃなさそうね」
「ええ、お察しの通り」
「で、何の用かしら?」
「超級攻撃魔を覚えたいんですが」
ハリエットさんがし驚いて目を見開く。
ついでに事前説明してなかったデルフィも。
「……それは、今回の件で必要なのかしら?」
「はい。もしかするとそれでも手に負えないかもです」
「ふーん。詳しいことは何もわかってないみたいだけど?」
「まぁなんというか、SSランク冒険者の勘……とでもいいましょうか」
ハリエットさんがじっとこちらを見てくる。
しばらく探るような視線を向けてきたが、諦めたようにため息を吐いた。
「1人ひとつだけよ?」
「ありがとうございます!!」
「まぁ、お二人にはお世話になったから」
「えっと……私も覚えるの?」
デルフィが戸いつつ俺とハリエットさんを互に見る。
「もちろん」
俺ひとりじゃ荷が重い。
ホントなら上級ランク魔士かき集めたいけど、どうせ無理だろうし。
だったら1人より2人だろ。
ハリエットさんに無理をいい、無屬魔法が得意な俺は『魔陣』を、風屬魔法が得意なデルフィは『風陣』を習得した。
さらに俺はスキルを追加で習得することにした。
なんかあの鬼ども、結構なSPを持っていたらしい。
あと、最近上がりづらかったレベルも、一気に10ぐらい上がってるわ。
とりあえずSPに余裕ができたので、必要になりそうな<MP消費軽減><MP自回復><MP基本値増大>ってのを習得し、スキルレベルをMaxまで上げておく。
おう、なんかすげー勢いでMPが増え始めたわ。
1秒あたり10ぐらいのペースで回復(?)していってんな。
あ、さすがに超級攻撃魔はギルドの訓練場じゃ練習できないんで、ぶっつけで使うことになるけどね。
駅には50名ほどの冒険者が待機しており、ギルド職員が不安げに待っていた。
「すいません、遅くなりました」
「おお! ショウスケさん、デルフィーヌさん! よくぞ來てくださいました!!」
さてと、せっかく集まってくれた冒険者のみなさんだけど、たぶん何の役にも立たないんだよなぁ。
「あのー。出來れば一度俺たち2人だけで様子を見に行きたいんですが、スレイプニル1頭だけかりるとかって出來ないですかね?」
「うーん、それはありがたい申し出ではありますが、スレイプニルは魔で制してまして、きちんと契約した馭者が馬車を通じて指示を出す必要があるんですねぇ」
ああ、馬車に制裝置みたいなのがあるのかー。
うーん、それじゃ無理かなぁ……。
「おいおい、遅れて來といてなんだよその態度はよ」
おおっと、俺とギルド職員さんの會話を聞いていたのか、冒険者の一部が文句を言いながらこっちに來たよ。
先頭にいるのは、最初の回で様子見を買って出てくれたリーダーさんだな。
一応彼がこの集団をまとめてるじなのかも。
「2人だけで行くとかよ。俺らじゃ役に立てねーってか?」
「あー、いえ、そういう訳じゃ……」
うーん、その通りなんだけどね。
「ケッ……! SSランクがなんぼのもんか知らねぇけどよ、俺らの力を甘く見てもらっちゃあ困るぜ?」
あらら~、やる気満々になっちゃったなぁ。
こりゃ説得して時間を無駄にするより、このまま予定通り馬車で行ったほうがいいか。
「いや、先行できれば、と思ったんですが、無理みたいなんで予定通り行きましょうか。期待してますよ!!」
「お、おう!」
ま、あとは超級攻撃魔の威力に期待するとしよう。
**********
今までと同様、エラムタまでは問題なく進めた。
とりあえずエラムタ出発前に、この先で馬が止まったらすぐに聲をかけるよう馭者に言い含めておく。
そしてエラムタ出発から數時間。
今まで同様馬車が止まった。
『あーあー。すんません、馬が止まりましたけど、どうしましょ?』
「あ、そのまま待機で。馬車の出り口だけ開けて下さい」
馭者席の近くに待機していた俺は馭者に指示を出し、デルフィをともなって出り口へ。
デルフィはなにか言いたげだったが、詳細は後で説明する、と言ってはぐらかしておいた。
「じゃあ、俺らは外に出て様子を見に行きますんで、ここから先の行は各自お任せします」
出來ればこのまま引き返してしいけど、どうせいうことなんて聞いてくれないだろうし。
とりあえずリーダーさんが指示を出し、半數は馬車で待機、半數は俺らについて外へ出るようだ。
リーダーさんはもちろん外出組。
「な、なぁ……。罅ひびって、あれのことか?」
俺たちについてきていたリーダーさんが不安げに口を開く。
薄暗い夕暮れ、幅の広い道の先にある水平線のさらに向こう。
うっすらと見えるのが霊山ウカムだろうか。
その頂上から上方に、黒い線がびているように見えなくもない。
もしあれが本當に罅だとすれば、この距離で見えるってことはそうとうデカい罅がってるってことになるな。
前回とは異なり、中央大路を小走りに進んでいく。
俺とデルフィを先頭に、20人以上の冒険者がぞろぞろとついてきていた。
そして1分ほど進んだ辺りで、水平線上に連中の姿が見え始めた。
超級攻撃魔は詠唱時間が長い。
通常で10分ほど。
俺は<詠唱短>スキルや裝備で補正されているが、それでも3分はかかる。
俺は既に11回分の『魔陣』を詠唱済みだ。
流石に超級魔だけあって、詠唱待機時のMP消費も激しい。
秒間約10MP回復する<MP自回復>が発しているのに、2~3秒に1ずつMPが減っている。
デルフィにも既に詠唱済みの狀態で待機してもらっている。
彼のMPは無盡蔵みたいなもんなので、消費MPなんて気にしないようだ。
とりあえず程にったようなので、まずはひと當て、とばかりに『魔陣』を1回分発。
デルフィもほぼ同時に『風陣』を発させたようだ。
轟音とともに、鬼の集団がごっそりと消滅する。
前回あれだけがむしゃらに攻撃しまくったにもかかわらず、ほんのしだけしか進行を遅らせられなかった鬼の集団に、ポッカリと隙間ができる。
出來た隙間は數秒で埋まるのだが、それでもここまでの果は前回だせなかったな。
「おいおい……SSランクってのはこうも圧倒的なのかよ……」
リーダーさんがつぶやく。
いや、SSランクつーより、超級攻撃魔がえげつないんです。
先人の叡智に謝だわ。
さすが殲滅魔と呼ばれるだけあって、効果範囲が広い。
威力は『波』系『渦』系よりし弱めかな。
でも今回の場合、威力は充分足りてるので、効果範囲が広いのはありがたい。
同行した冒険者もさすがCランク以上の集まりだけあって、最初は俺たちの攻撃魔に圧倒されるばかりだったが、ある程度敵が近づいてくると、各々魔や弓、投擲なんかで遠距離攻撃を行っている。
近接戦闘職の人も、攻撃付與魔を使える人はどんどん攻撃していってるな。
ただ、向こうの數は異常に多く、左右はどこまで展開されてるのかわからんぐらい広がっているので、どうしてもこちらの攻撃が屆かない部分は西へ進まれている。
あれの進行を完全に止めるのは不可能だな。
リーダーさんは基本的に俺たちのそばに居て、他のメンバーに指示を出している。
彼自は槍使いのようで、たまに『突飛槍』で結構な數の鬼を屠ってるわ。
もしかしたらAランクぐらいかもな。
いつの間にか馬車が俺たちの近くまで來ており、中に待機していた冒険者の人たちも戦線に加わっている。
魔士や弓使いは馬車の上に乗って周りに攻撃しており、なんとか鬼どもを近づけずにすんでいた。
一応ぎりぎりのところで戦線を維持できていた俺たちだったが、やがて変化が訪れる。
「お、おい……、なんだありゃあ!?」
リーダさんが鬼の群れの中央辺りを指差す。
そこから、何かがゆっくりとせり上がってきた。
「ありゃあ……スケルトンか?」
確かにそれは人型の骸骨だったが、大きさが異常だ。
上半だけが地上に出ており、距離がつかめないのでなんとも言えないが、それでも50mとか100mとかそれぐらいはありそうだ。
たぶんあれだな、”がしゃどくろ”だな。
この調子で鬼以外の奴が出てきたらいよいよやばいかも。
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