《死に戻りと長チートで異世界救済 ~バチ當たりヒキニートの異世界冒険譚~》第85話『最後の戦い』

フェイトン山ダンジョンコアの本田沙彌香が消えた後に現れた一振りの刀を手に取ってみる。

いままでレイピア以外まともに持ったことのなかった俺はし不安だったが、いざ手にしてみると非常に手に馴染む作りだった。

俺が日本人だからなのか、本田が俺用にカスタマイズしてくれたからか、いやその両方かもしれないな。

それは飾り気のないシンプルなデザインの直刀だった。

「……にしても、シンプルすぎねぇ?」

ツヤのない黒い鞘を払ってみると、反りのない真っ直ぐな刀が現れた。

俺が思ってる刀より刀の幅が細いような気がするな。

切っ先も普通の刀に比べて鋭くなってるか。

たしかにコレだと片刃のレイピアってじだわ、うん。

し慣れればいけそうだな。

「一応鑑定してみるか……」

刀を鞘に収め、<鑑定>を発

「おう……、そういうことか」

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『忍刀:魂影破突』

攻:X

魔攻:X

<防無視>

<耐無視>

<刺突特化>

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その刃は魂の影をも貫き、いかなる存在も阻むこと能わず……

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いや中二病全開じゃねぇか!!

まず能の『X』ってなに?

『SSS』の上ってこと?

そういや別も年齢も『X』っていうドラマーがいたな……。

確かにあの人は最強っぽいから、『SSS』の上ってことでいいだろう、うん。

にしてもこの説明文だよ。

魂の影ってなんだよ影って!!

最後の『……』とかさ、ちょっとかっこいいと思ってしまった自分に腹立つわ。

あと忍刀? 直刀=忍刀って安直すぎねぇ?

これ忍刀にしては刀長すぎでしょ。

こんな長い刀持って隠任務とか邪魔でしょうがないし。

やたらシンプルなデザインなのと、鍔つばが四角いのは忍刀だからか。

試しに鞘の先端引っ張ってみたらスポって取れたよ。

うん、これで水に潛ってもシュノーケル代わりにして息ができるね。

水遁ってやつ? 潛らねぇけど。

鞘に長いひもがついてるけど、鍔を踏み臺にして高い壁昇ったりする事はないから邪魔だし取っておこう。

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……取れねぇよ、クソッ!!

「さっきからなにバタバタやってんのよ」

デルフィが冷めた視線を送ってくる。

自分が武もらえなかったから、ちょっと不機嫌になってんな?

「いや、まぁいろいろ確認をね」

「ふーん。ちょっと変わってるけどいい剣じゃない」

「うん。俺の故郷獨特のものだね」

剣じゃなくて刀だけどね。

しかも忍刀。

ああ、大枠のカテゴリ的には刀も剣に含まれるのか? わかんねぇや。

「ちょっと試すか」

一旦付に戻った俺たちは、改めて26番口に案してもらう。

最初に襲ってきたのがミスリルゴーレムだったので、とりあえず一切魔力を纏わせず、素の狀態で突いてみた。

「うおっ!?」

まるで豆腐に包丁を刺すように、なんの抵抗もなく裝甲を貫き核を破壊できた。

「まじか……」

その後、アイアンゴーレムとオリハルコンゴーレム、そして比較的らかいティンゴーレムも試してみたが、覚はすべて同じだった。

「防無視すげーな!!」

試しに斬ってみたところ、こちらは突くよりも抵抗があった。

なるほど、<刺突特化>ってのはそういうことか。

それでも攻Xと<防無視>の効果で、オリハルコンだろうが簡単に斬り裂くことが出來た。

「楽しそうね」

俺が目につくゴーレムを突いたり斬ったりしてるのを見て、デルフィが呆れたようにつぶやいた。

**********

その後はひたすら深淵のダンジョン深層で修行に勤いそしんだ。

一応エリックじいさんに事を説明して手伝ってもらえないか聞いてみたが、積みゲーを半分も終えてない狀態なので無理、とのことだった。

まぁ、そんなことだろうと思ってたけどさ。

今回深淵のダンジョンは、ヘクター夫妻とフランツさん、フレデリックさんのパーティーと、ガンドルフォさんのパーティーが合同で攻略したそうだ。

各地のダンジョンも順調に攻略され、短期間で復活したものは何度も攻略されている。

薔薇の戦士連隊に関しては、現隊員から天啓の噂を聞きつけた冒険者や魔士、軍人たちからの隊希が殺到した。

可能な限り隊をれ、最終的には一萬人を超える大所帯となる。

一応その時にちょっとした仕込みを行っておいた。

最後の戦いで役に立つはずだ。

新たなスキルを習得し、『ねじ突き』の練度を高め、斬撃についても特訓し、戦の幅を広げた。

訓練をしたり隊希者をれたりしているに時は流れ、俺は三たび賢歴573年の6月を迎えた。

**********

6月中旬から、俺は霊山ウカムの山頂で寢泊まりしている。

いつ罅が現れても対応できるようにだ。

今回、俺は出來るだけ被害を出さないようにしようと思っている。

なので、百鬼夜行の開始と同時にコンちゃんと戦うつもりだ。

もちろん妖怪が溢れるのを止められるわけではないので、薔薇の戦士連隊を始めとする各地の冒険者や各國の軍隊には霊山ウカムの麓に陣取ってもらっている。

それ以外にも、各都市の城壁や外壁上に対空設備を設置、さらに砦を百箇所以上作し、飛行系妖怪に対応出來るようにもなっている。

そして6月18日未明

突如夜よりも深い闇が現れた。

「おおう、罅ってのは一瞬で現れるんだな」

山頂にいるのは俺1人。

デルフィは麓あたりでテキロに乗って飛行系妖怪やデカブツの対処に回ってもらっている。

どちらも一緒に戦いたがったが、わがままを通させてもらった。

そして闇の向こうから、コンちゃんが現れた。

《お早いお著きで》

現れたコンちゃんは今までと違って、大型犬ぐらいの大きさだった。

HPは予想通り1,000億程度。

ギリギリいけるかなぁ……。

「お、今回は小さいんだね」

「あら、おひとりさま? ほな気ぃ使わんでよろしなぁ」

「あれ、気を使って念話だったの?」

「そらウチと仲良う話しとったら周りにいらん疑持たれるやろ?」

「そりゃどうも。じゃ、始めるかい?」

「そやねぇ」

辺りを見回すと、妖怪どもは俺達のいる場所を避けて進行しているみたいだ。

いたれりつくせりだな。

「あ、そや。ショウスケはん今回でケリ付ける気やんねぇ?」

「まあ、一応」

「ほな、今回で決められへんかったらウチの勝ちっちゅうことでどないでしょ?」

「……俺が負けたらなんかあるの?」

「別に……。勝ちは勝ち、負けは負け。それだけやで」

「へぇ……、いいね」

「ほな行きましょか」

その言葉とともに、コンちゃんが飛びかかってきた。

俺はそれを飛び退いてかわし、鞘を払う。

「あら素敵な刀やこと」

「そりゃどうも」

早速『ねじ突き』を放つ。

攻撃直後の隙きを突いた一撃がコンちゃんの脇腹に直撃した。

ダメージは約500萬。

の恩恵もあるが、前回の10倍程度。

頑張ったなぁ、俺。

「えらい強なりましたなぁ。でもそないな普通の攻撃でよろしの?」

コンちゃんが結界を張る。

その瞬間、もう一発『ねじ突き』をかます。

もちろんダメージはほぼ変わらず。

「へええ、おもろい武やねぇ」

「へへ、いーだろ」

「ほな喰らうわけにはいきまへんなぁ」

そこからはコンちゃんも本気を出したのか、俺の攻撃も3回に1回はかわされるようになる。

あの巨ならともかく、今のサイズで素早くかれると、捉えるのが難しい。

敵を點で捉える『ねじ突き』だけなら多分10回に1回當たるかどうかってとこだろうか。

ここにきて線で捉える斬撃の訓練をしておいてよかったと思う。

一応斬撃も飛ばせるようになっており、そちらはエリックじいさんの『風刃剣』にちなんで『魔刃剣』と名付けた。

斬撃のダメージは刺突の半分ぐらいだ。

『魔刃剣』でコンちゃんのきを牽制しつつ、いけそうなら『ねじ突き』を放つ。

もし忍刀を手にれていなければ斬撃の訓練なんかしなかっただろうから、この戦は採れなかったかな。

忍刀を殘してくれた本田に謝だ。

ただ、俺の方も無傷という訳にはいかない。

さすがラスボスだけあって、ちょっと掠めただけでHPをごっそり持っていかれる。

こまめに回復魔をかけていかないと、すぐに死んでしまいそうだ。

(テキロ置いてきたのは失敗だったかなぁ……)

まあ、この勝負は一応タイマンと決めていたからしょうがない。

コンちゃんとの攻防は6時間近くに及んでいる。

はまだ姿を見せないが、徐々に空が白んできた。

常に攻撃をし続け、たまにクリティカルヒットみたいなので1000萬超えのダメージはあったものの、數え切れないほどの攻撃を加え、そしてけた。

<思考加速>をフル稼働し、ゆっくりと流れる時間の中でも出來るだけ速くけるよう魔力で能力にブーストを掛ける。

実際の時間は半日にも満たないが、覚的にはもう何年も戦い続けている気分だ。

百鬼夜行がどうなっているのか、山の下をちら見する間もないからわからんが、デルフィとテキロ、隊員のみんなを信じるしか無いだろう。

「ショウスケはん、きが鈍なってきましたなぁ」

隨分前から攻撃がほとんど當たらなくなっている。

俺の方に疲れが出たってのもあるが、コンちゃんが俺のきを見切れるようになってきたってのデカいだろう。

時間の流れもどんどん速くなっていっているし、<思考加速>に回せる神力も空っぽになりつつあるのかも。

「そろそろ限界かな」

與えたダメージは約半分の500億程度。

1萬回ぐらい攻撃を加えたことになるのか。

よく頑張ったな、俺。

「あらぁ。ほな今回はウチの勝ちってことでええんかしら?」

「最後っ屁ぐらいは出させてもらうよ」

《テキロ、デルフィに合図!!》

《ウェーイ!!》

現在戦闘中のデルフィに最も早く合図を伝える方法はテキロへの念話を経由することだ。

実はデルフィにも<魔調教>を習得してもらい、テキロの主人になってもらっている。

二人を同時に主人と出來るかどうか賭けだったが、上手くいったようだった。

<念話>っつースキルがあれば話は早いんだが、殘念ながらなかったのでね。

レベルアップだが、400を超えるところまでは頑張った。

俺のMPは『魔刃剣』と『ねじ突き』の発でかなり減っているが、まだデルフィのMPが250萬以上殘っている。

デルフィも一緒にレベルを上げたのだが、さすがMPチートのハイエルフだけあって、長幅も半端ないわ。

HPはかなり削られているが、これは『上級回復』である程度回復可能だ。

通常であれば100MPあたり1,000HPは回復出來る『上級回復』だが、繰り返し使っていると効果はどんどん下がっていく。

それでもまだ1回で500HPぐらいは回復できるので、とりあえずMPが三桁になるまで繰り返し使い、HPは2萬ぐらいまで回復させた。

これで100億近いダメージを與えられる。

半日掛けて6割か……、まあ悪くない結果だろう。

「じゃあ、いくぜぃ!!」

刀を構え<決死の一撃>を放つ。

「あいかわらずえげつない攻撃やねぇ」

殘りHP400億とし。

「でも、まだまだ及びまへんでしたなぁ」

そう言いうとコンちゃんは間合いを詰め、<決死の一撃>を放ってけなくなった俺に前足を振り下ろした。

「ぐあっ!!」

僅かに殘っていたHPが0になる。

まあ、HPが0になっても即死するわけじゃない。

何とか意識を繋ぎ、コンちゃんを見據える。

「ほな今回はウチの勝ちいうことで……」

「ああ……認めるよ……」

徐々に視界が薄れてくるが、それでも俺はコンちゃんから視線を外さない。

「コンちゃんの……勝ち……だ……」

そして最後の力を振り絞って、口の端を引き上げた。

「第一ラウンドは……な」

「……なんやて?」

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