《勇者の孫、パーティーを追放される~杖を握れば最強なのに勇者やらされてました~》第十五話 『祖父』

「アルフー、どこに向かってるのー?」

「ん、ちょっとな」

「もー! いい加減教えてよー」

「わたしも気になります!」

今日は早朝から町を出発し、ある場所に向かっている。

「お、見えてきたな」

視界には一軒のぼろっちい小屋がある。

「えっ、ここが目的地なんですか?」

「そうだ。ここは先代魔王を倒した勇者の家だ。……俺の爺ちゃんの家でもある」

突然の告白に驚くエリザとミカ。

「えー!? アルフさんが勇者の孫ってことですか! 凄いじゃないですか! 何でもっと早く教えてくれなかったんですか!?」

「うちもびっくりだよー。アルフは只者じゃないとは思ってたけどさー」

二人には眼鏡で見てほしくなかったので今まで言っていなかった。

しかし爺ちゃんに會わせるとなると言わないわけにもいかないだろう。

「それにしてもなんでそのお爺様の家に行くんですか?」

「それはな、お前たち二人の特訓の為だよ」

爺ちゃんは伝説の勇者であり、後進育のプロでもある。

俺が以前、曲がりなりにも勇者をできていたのは爺ちゃんの指導があったからだ。

「爺ちゃーん! 居るか―!?」

小屋のドアをノックすると、ギィと扉が開いた。

「全く騒がしいのぅ……。むっ、お前はアルフじゃないか!? どうした、考えを変えて勇者をやる気にでもなったのか?」

「いや、俺は相変わらず杖職にしか興味ないよ。今日は爺ちゃんに頼みがあってきたんだ」

「頼み……じゃと?」

「この二人の育をお願いしたいんだ」

エリザとミカの紹介をする。

魔王討伐が思ったよりもやっかいな仕事になりそうなので、念のため二人も鍛えておくことにしたのだ。

「ふむ、お主ら二人が勇者候補というわけか」

「えっ、そうなんですか!? わたしは特訓するとしか聞いてないんですけど」

「うちも勇者になるなんて聞いてないってのー」

二人は懐疑の目で俺を見つめてくる。

「いや、別に勇者になれっていうわけじゃないけどさ」

とりあえずエリザとミカのステータスを爺ちゃんに見せる。

「……なるほど、基礎能力を鍛えてしいということじゃな」

「そういうこと。あまりのんびりはしてられないんで、一週間のプランで頼むよ」

エリザはじーっとこちらを見ながら、

「HPが1なのはわたしの才能だから変えないでくださいね、頼みますよ!」

「そのこだわりはなんなんだよ……。まあいいや、他にも1のステータスいっぱいあるだろ? それを治してくれ」

「しかたないですね」

渋々ながら特訓を了解してくれたようだ。

「うちは何を鍛えればいいのー?」

「全部だよ!」

「うへー」

ミカに関してはまだレベルが低いのでびしろがある。

そういう意味ではちょっと期待をしている。

「よし、早速特訓を始めるとするかの」

爺ちゃん家での一週間の合宿が始まった。

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