《勇者の孫、パーティーを追放される~杖を握れば最強なのに勇者やらされてました~》第十七話 『來訪者』
合宿最終日。
エリザとミカは真剣な表で爺ちゃんに相対している。
「よいか二人とも。わしからこの銀貨を奪い取ることが出來れば試験合格じゃ」
銀貨が先端についた紐を首から下げた爺ちゃんが合宿の最終試験の説明をしている。
俺はそれを遠く離れた場所からボケーっと見ていると、後ろから見知らぬ人に聲をかけられた。
「お前がアルフか?」
話しかけてきたのは銀髪に碧眼、赤いマントを付け、肩に三つの大きな袋を背負った異様な出で立ちの男だ。
「そうですけど、なにか?」
「フフッ、面白いものを見せてやろうと思ってな」
男は袋をドサッと地面に置き、中を開けると糞三銃士のサイフォス、フィーナ、ライトが後ろ手に縛られた狀態で姿を現した。
「アルフ!! 頼む、助けを呼んできてくれ!」
サイフォスが開口一番俺に救いを求めてくる。
「ちょっと待って、狀況がよくわからないんだけど。銀髪のあんたは何者だよ」
「我は魔人ジャキ。勇者の筋を滅ぼさんとする者だ。貴様が伝説の勇者の孫で間違いないな?」
「確かに孫だけど……。つまりこの三人は人質ってことか? 汚いやり方だな」
ジャキはくくっと小さく笑う。
「折角の獲に逃げられては困るのでな」
「ふーん、そっか。でもその三人には縁切られたようなものだしなぁ」
俺がぼそっと呟くと、
「お願い、助けを呼んで! 今までしたことは謝るから!」
フィーナは泣きながら懇願してくる。
「わしも謝ろう……だから今回だけは助けてくれ」
ライトは神妙な面持ちで言う。
こういうときだけ都合のいいやつらだ。
俺はそのまま無言でいるとサイフォスの野郎が、
「くそっ、助けを呼ぶことすらできないとは。もうおしまいだ、俺達は……」
イラっときたのでし意地悪をしてやる。
「あ、そ。それじゃあ俺は転移魔法テレポートで逃げるんで、じゃあな」
魔法を詠唱し大袈裟に杖を振るう。
それにあせった三人は泣きながらぶ。
「噓だ、今言ったことは謝る! 俺が悪かった」
「お願い、アルフ! また一緒にパーティーを組んであげるから!」
「嗚呼……お慈悲を……」
その瞬間、三人のが消えた。
転移魔法テレポートは俺にかけたのではなく、糞三銃士にかけてあげたのだ。
爺ちゃん達の居るほうに飛ばしたのでもう心配はないだろう。
俺は杖を持つ手を前にばして魔人に向ける
「安心しろ魔人ジャキ。人質なんていなくても俺は逃げも隠れもしない! 正々堂々と勝負を始めようぜ!」
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