《異世界冒険EX》定番

「なんだこりゃ」

道中、下げられたステータスでの戦い方を無駄に出てくる魔達で確認しながら辿り著いた町は、アイギスからの報とは大きく変わっていた。

報では、薬草が特産で緑かな牧歌的な町のはずだ。

だが、目の前の町の様子は牧歌的とは程遠い、殺伐としたものだ。

薬草どころか枯れ草しか生えていない荒野に、ボロ布の服を著て家畜の世話をしている人、酒場の店員、更には腰に銃を下げ、危ない目つきで掲示板と思われる木の板を眺めている人。

……なんだか西部劇のセットみたいな町みたいだ。

「獲発見~」

「なんだその格好? 初代勇者の真似か?」

「綺麗だし、こりゃ高値で売れそうだぜ。人気があるからなあ、初代勇者のレプリカ品」

チラチラと辺りを眺めていると、見るからに悪人面で小っぽい三人の男達が現れた。なんでどの世界にもこういうかませ役が居るんだろうなあ。

いや、むしろどの町にすらいる気がする。

男たちは俺の後ろに二人、前に一人。囲んだつもりなのだろう。にやにやと笑うその顔は勝利を確信しているようだ。

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「じゃ、金目のものと服と裝備一式置いてってもらおうか?」

「早い話、全になれって訳だ」

「まあ可い顔してるし、一つでも生きていけるよ」

見たじ正面の男が一番マシなようだ。鑑定のチートを使えばステータスも見れるけれど、こんな雑魚に使うのはもったいない。

それにしても、周りの人は気にも留めてないようだがこれがこの町の日常なのか?

「おいっ!」

し考え事をしていた所、後ろの二人のうち一人が急に大聲でぶ。

それと同時に正面の男が腰の銃を抜き、銃口を俺の手に向け、引き金を引いた。

馬鹿なヤツ。

「<<風鎧>>」

魔力によって生まれた風が、俺の手の周囲で激しく渦巻く。

正面の男の放った弾丸はその風に簡単に弾かれ、見當違いの場所へと著弾する。

まあ、ぶっちゃけ無詠唱でも発できたけれど、あえて適當な魔法名を詠唱する。

何でも出來ないと思われていた方が得だからな。どこに監視の目があるかわからない以上、気をつけておかないと。

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「っ! こいつ、魔師だ!」

「銃弾を弾くほどの風魔法だと……!?」

「おいおい、何者だよ! こいつ!」

やっぱり風魔法は便利だ。防にも、移にも、そして當然、攻撃にも使える。

「<<風枷>>」

三人の両手の周りに俺と同じように小さな竜巻を発生させる。

くな」

「ぎゃああああああ!」

「っぐう!」

あれ? 漫畫とかだとくなって言った瞬間、止まるのに。おかしいな。

いてる途中だった為に、後ろの一人と正面の男の両手が千切れ飛ぶ。

男達の手首から勢いよくが吹き出し、地面に流れていく。

「やっぱ首にしとこう。<<風の枷>>」

いてる部分に発させると、間違って殺しかねない。というわけで、今度は首周りに小さな竜巻を発生させる。

「「えっ!?」」

しまった……。

どうやら痛みにうずくまろうとした様子の二人。と泣き分かれである。

失敗したなぁ。殺すつもりは無かったのに。まあ、噓だけど。

「お前一人になっちゃったな」

「……え?」

の死からが噴出し、地面に染み込んでいく中、生き殘った一人の方を振り向き話しかける。

両手と首に風の枷を付けられた男は狀況が理解できていないのか、ただただ呆然としている。

「さて。一つ質問だ。別の世界から來た人間を知っているか? 噂でもいいんだが」

「…………」

どうやら呆けていて、使いになら無いみたいだな。仕方ない、殺すか。

(……悠斗ってば変わったねー。昔の優しい悠斗はどこいったんだろう)

(誰のせいだよ)

(「別の世界とか関係ない! 命は命だよ!」なんて言ってたのに)

(無駄に上手いな。聲帯模寫)

(まあ、特技の一つだからね。わしの特技は百八まであるぞ?)

(そう……。で、ご用件は?)

(極悪の悠斗だからもう思いついてると思うけど、普通の人を殺して容量空けるのは程々にしてね。大量殺とかされたら流石に上から怒られるから……)

(ふーん……。了解。って誰が極悪だよ!)

(あ)

「え?」

「……う!」

間違えた。思わず閉じてしまった。また首ちょんぱしちゃったよ。

どうしよっかな…………燃やすか。

「あ、々お待ちを!」

「ん?」

靜止をかける聲が聞こえた方を振り向くと、西部劇でよく見る保安の服を著たが立っている。

金髪のサラサラショートの髪のに、かに実った、腰の左右にそれぞれ銃を下げている。

「私はケイト。この町の警察です」

……警察。銃。服。町。

(アイギス)

(りょー……あれ? この世界の住人だね)

マジか。

てっきり西部劇にハマったこのが、固有魔法でこんな町にしてるのかと思ったが……違うのか。

でもまぁ、

(……異世界人が関わってるみたいだな)

(そだねー。しかも町に影響を與えれるほどの能力持ちみたい)

(めんどくせえ……ま、とりあえずケイトとやらに話を聞いてみるわ)

(ういーがんばー)

アイギスとの通信を終え、目の前のケイトに意識を戻す。

「……俺はユウトだ。で、絡まれたから反撃したんだけど駄目だったのか?」

「いえいえ。この町では自己責任が基本なので、駄目なことはほとんどないですよ」

「ほとんど?」

「ええ。駄目な事は二つだけです。町から出る事と、私達警察に逆らう事です」

ふと、ってきた門を見るといつの間にか立ち塞がるように二人の男が立っている。

これはまた……怪しいなぁ。

明らかに警察が何かやってるなこれ。

「じゃあケイトは何をしに來たんだ?」

「死と裝備の回収、それと新人の勧ですね」

「……死は邪魔だし持って行って貰えると助かるが……新人?」

「はい。ユウトさん、警察にってみませんか?」

そう言いながら死を裝備品ごと回収していくケイト。あまり熱心に勧しようとは考えてないようだ。

男たちのはケイトがれた瞬間、裝備ごと消えていく。出來れば裝備品は置いてって貰いたい所だけど……ってあの指

「……それ空間魔法か?」

「え? いえ、これはこの不思議な指のおかげです」

「やっぱりそうか……」

「あれ、ユウトさんも同じ指を……?」

なんでケイトのやつが神の指を持ってるんだ……? 俺がしているのとはまた違う種類みたいだが。

「あ、微妙に違いますね。それにしても指五個って……。あ、左手にも一個」

むう。俺の右手を見たケイトが不審者に向ける目をこちらに向けてくる。

まあ確かに右手全部に指はちょっと変かもしれないが、しょうがないのだ。各異世界ごとにアイテムを分けているんだから。

神の指とは簡単に言うならアイテムボックスだ。インベントリといってもいい。亜空間にを取り込め、出しれも自由の便利グッズだ。

俺の指はそれぞれの世界の神と共用で使っていて、アイギスの指にアイギスがなにかれれば、俺もアイギスから貰った指でそれを取り出せる。

「その指、どこで手にれた?」

しキツイ聞き方になってしまったが、仕方ない。最悪の可能を考えると出元はどこか、しっかり確認しておかねば。

「え? 昇進したお祝いに署長から貰いましたけど……」

「……なるほど、署長ね。俺もその署長さんに會いたいんだけど、會えるか?」

署長とやらならなくともケイトよりはいろいろと知っていそうだ。

「えーと、ちょっとお忙しい方なので絶対とは言えないですね……。今日もいらっしゃいませんし」

そう簡単にはいかないか。まあいい。それよりも一つ、アイギスに確認しておかねば。

(アイギス……もしもこの世界の神が敵だったら殺していいのか?)

(んー……なるべく止めてほしいかな。々調べないといけないし)

(了解……なるべく、は努力するよ)

まあ、むりやり指だけ奪われている可能もあるし、今は異世界人を減らすことに集中しよう。

「ところでケイトは別の世界から來た人とか異世界人について何か知ってるか?」

「異世界人ですか? えーと、初代勇者さんが異世界人と呼ばれていたはずですけど……後は……あ、近くの森の奧に窟があるんですが、そこの盜賊達の頭が異世界人だそうですよ。噂ですが」

「ふーん。ありがと。じゃ、またな」

「え? 警察には?」

森へと歩きだそうとした俺に、慌ててケイトが待ったをかけてくる。

署長がいないなら向かう意味はない。だがまぁ、それをそのまま言うわけにもいかないし……うーん。

「……俺が使った魔法の屬わかるか?」

「風、ですよね?」

「そう。風は、囚われないから風なんだ……」

「…………は?」

(……なにいってんのユウト。唖然としてるじゃん。ケイト)

(いや、ちょっとなんとなく……え? カッコよくない?)

(悠斗って時々馬鹿だよね。……いや、逆か)

(うるさい。てか、アイギスからも見えてるのか?)

(悠斗が見てるものだけだけどね)

(ふーん……)

(あ、Hな事するときは事前に言ってくれれば接続切るから安心していーよ)

(……そんな事するわけ無いだろ……うん)

(三十二回、この數が何かわかるか?)

(……全然わからんな)

(悠斗の視線がケイトのに向かった數だ)

(…………おっと電波が……)

(電波関係な)

……いや、そりゃ見るでしょ。俺だって男なんだしさ。ケイト可いし。ただあくまでライクであってラブじゃない。うん。

「それじゃあ、どこに行くんですか?」

フリーズしていたケイトが復活し、訝しげな視線で尋ねてくる。さっきの発言についてはスルーするつもりらしい。ありがたい。

「そうだな……俺は異世界人に用事があるから、盜賊の頭にでも會いに行くかな」

「……そうですか。なら、それ私もついていきます」

「は?」

「実はその盜賊、私としても邪魔な存在なんですよ」

「……いや、別に俺は話をしにいくだけで戦う気はないぞ? 流れ次第ではわからないけど」

「それに奴は賞金首ですからね……。倒せば賞金が貰えますよ? ただ、強いですからなかなか誰も引きけないみたいですが」

そういって掲示板を指差すケイト。……掲示板にはいくつも紙がられており、そこに盜賊のボスの名前もあるようだ。

名前も顔も知らないからどれかわからないけれど。

「更に奴らは常駐させてる手下に旅人を襲わせ、資金源にしているそうです。先程、ユウトさんも襲われたように」

どうやらケイトは俺に戦わせたいようだ。確かに警察としては、治安をすような輩は邪魔だろう。

しかし、先程手を出さなかったということは、ケイトだけでは盜賊共を倒せないという事だ。いや、盜賊共は倒せても頭は倒せないだけかも知れないが。

「…………」

利用されるのは癪だが、敵対した場合はどちらにせよ殺すし、ケイトも戦力として數えられる分、同行するのが得かも知れない。

と戦っている中でだいたい調整は出來たけれど、それでもまだイメージときがあっていない。

である以上、戦力は多ければ多いほうがいいか。

「それに私とじゃないと、町から出られませんし」

そう言ってケイトは門の男達へと手を軽く上げる。

すると向こうも同じように返している。なるほどね。

「……まあついてくるのはいいけど、邪魔だけはするなよ。まずは話しに行くだけだからな」

「はい。もちろん」

「じゃ、行こう……って、そういえば場所わかんないな」

「はぁ……私が案します」

ケイトはそう言ってし呆れた目をこちらに向けた後、俺のし前に出て歩き出した。

しょうがないじゃん。アイギスが把握してた頃は、この辺に窟なんて無かったみたいだし。

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