《異世界冒険EX》宴と靜寂

「あの……ユウトさんも異世界人だったんですか?」

盜賊たちの後を追い窟を歩いていると、コソコソと近づいてきたケイトが尋ねてくる。

「あ、言ってなかったっけ。そ、俺も異世界人」

「なるほど。それで、同じ異世界人を探していたと……」

「まあ、他にも理由はあるんだけど……まあ、食べも作れるし今日は楽しもうぜ」

ケイトも々調べておきたい事が多い。その為には油斷してもらわねば。

「食べも作れるのか!? 本當に便利だな! その固有魔法!」

小聲で話していたつもりだったが、ということもあり聞こえていたらしく、盜賊の頭が會話に割り込んでくる。

どうでもいいが顔が近い。俺のパーソナルスペースは男で違うんだ。離れてほしい。

「……ああ。俺が知ってるものだけだけどな」

「モ○の照り焼きチキンバーガーは? 俺あれ好きなんだけど」

俺がしだけペースを遅らせ、距離を離すと盜賊の頭は期待した顔を近づけて聞いてきた。

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……とりあえずその意見には同意だ。しだけ評価を上方修正しよう。その上で顔を近づけてきたので下方修正。

つまりトントンだ。

「あるぞ。俺も好きだからな。ついでにロースカツバーガーもな」

「やったぜ! 楽しみがまた増えた!」

テンションの上がった頭に先導され、數分ほど歩くと木製の扉があった。……窟の中に。なんかの漫畫で見たぞコレ。

「ここが俺達のアジトだ」

思わず立ち止まった俺を気にすることもなく、盜賊の頭がその扉を開け、中にる。

仕方なく俺もその後を追い、中へとった。

「うわ」

窟の中に扉がある時點でおかしいと思ったが、扉を開けるとさらにおかしかった。

広く、清潔で、快適そうな部屋が目の前には広がっていた。

長いテーブルや椅子、それにソファーやクッションまである。床もフローリングだ。いや、なんでだよ。

しかも、カーペットまで敷いてあるし……。というか、何で二階もあるんだよ。

「これどうやったんだ?」

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窟の中に二階建ての家を作ったのよ。凄いだろ?」

「は?」

窟を掘りまくって広げて、崩れそうになったから土屬の魔法で固めて、それで出來た空間に辺りの木を使って家を建てた」

「ちょっ、お前それ……」

「ああ。安心しろよ。俺がいる限り、窟が崩れる事はない」

いや、それもだけど。普通に地上に作ればいいんじゃないの? 何でわざわざに……。盜賊っぽいからか? いや、まさかな。

「留めや工何かは武を加工して作ったり、この辺りには魔も出るからそいつらを狩って、牙や皮も手にれてクッションやベッドも作った」

「そりゃ……凄いな。あっちは非常口か?」

部屋の奧には人が走ってるマークを書かれた緑の扉がある。まあ、一目でわかるな。日本の奴ならだけど。

「ああ。何故か知らないが、最近よく賞金稼ぎが來るんだよ。雑魚なら適當に痛めつけて、逃がすんだけど、もしも強い奴が來たときは向こうから逃げて、追って來た所を土魔法を解除して潰すのさ」

……なるほど。に作ったのはそういう訳か。ちゃんと考えがあったようだ。良かった。

「ていうか、そんなペラペラ喋っていいのか? 俺が敵だったら不味いんじゃねーか?」

「まあ、その時は俺の人を見る目が無かっただけのことよ。隠し玉は他にもあるしな」

隠し玉、ねえ。……し気になるな。鑑定を使うか? ……いや、何があるかわからない。知系の能力持ちだったら厄介だ。

「……じゃ、まあちゃんとしたテーブルもあることだし、始めようかね」

創造魔法を使ってお酒やジュース、お茶、お菓子に俺が知る限りの料理を出していく。もちろんバーガー類やナゲット、フライドポテトもだ。

目をキラキラさせながら、それらを見た頭と手下共は、何といただきますと言ってから食べだした。

……無駄に教育されてるな。

「うめえええええ!」

「なんだこれめちゃくちゃ甘いし味しい」

「懐かしいなあ。やっぱ食文化は地球の方が上だぜ」

味しいです!」

ケイトも普通に一緒になって食べている。おいおい。ちょろすぎるだろ。しっかりしろ、警察。

見たことも無い料理や飲みに宴は盛り上がり、どいつもこいつも大きな聲で騒ぎ、俺の背中を叩き、泣き出し、笑い出し、怒り出し、歌いだし、眠りだし、暴れだす。

まさに地獄絵図といったところだろうか。せめてもっと綺麗どころがいればなぁ。

いや、ケイトは人だけどね。制服補正もあるし。

そして、いつの間にかテーブルの上には空になったお菓子の袋や瓶、皿が並ぶだけになった。

「…………」

「よお、ユウト……だったか?」

そろそろお開きにしようと考えていたところ、赤い顔をした盜賊の頭が話しかけてきた。

名前はどうやらケイトとの會話の時に聞かれていたようだ。

「そういえばちゃんと自己紹介もしてなかったな。俺は佐藤だ」

「俺は神木悠斗……ってって顔じゃねーだろ! どう見ても剛己とか巖男とかそんな名前だろ!」

俺が慌てて突っ込むと、真っ赤な巖石顔、まさに溶顔(ようがん)を顰めて答える。上手い!

いや、酒は飲んでないよ。うん。俺はまだ中學生じゃから。

「うるせーな! それは俺だって思ってるよ! だからこっちではドルゲって名前で通してるんだよ!」

「あーそっちのがしっくりくるな。よろしくな、ドルゲ」

し悲しそうな聲になったドルゲには悪いが、そっちの方がしっくりくる。

めちゃくちゃしっくりくる。

「……それで本當は何しに來たんだ?」

呆れたように笑っていたドルゲだが、急に真剣な表を作ると俺にそう尋ねた。

「んー。あいつは町の警察の副署長らしく、賞金稼ぎとか邪魔者の排除とか言ってたけど……」

「……にしちゃ、部下の奴らと楽しそうにしてるが」

「だねえ……」

ケイトは盜賊共と肩を組みながら大聲で何か歌っている。酔っ払ったんだろうけど馬鹿な奴だ。今までよく生きてこられたものだ。

「まあ、もしもドルゲ達が問答無用で襲ってきたりしたなら潰してたな」

「はっ。そりゃ怖い」

橫を向き、鼻を鳴らすドルゲは小さく笑みを浮かべている。どうやら戦闘には自信があるらしい。

「……ずいぶん余裕があるな」

ドルゲの態度は明らかに負けるわけがないと考えている態度だ。

ちょっとその自信の元が知りたいなぁ。

「ま、戦いでは負ける気はしないな」

「ふーん。ま、今は戦う理由は俺にはあんまり無いから安心していいよ」

「……あんまり?」

「ああ。町でお前の手下に襲われたからな。しはある。でも、そいつらは返り討ちにしたし、終わった話だ」

ぐびりと手に持ったコーヒー牛を飲む。し歪な形の円筒狀の容ったそれは、甘すぎず苦すぎず、いい塩梅の甘さで俺を癒やしてくれる。

お気にりの一本だ。

「あ? 俺の手下は全員ここに居るはずだぞ? 町に行った事もほとんどねえし」

「……え? 本當か?」

怪訝な顔のドルゲに、町でどんな手下にどんな風に襲われたかを話しても、ドルゲの態度に変化は無い。いや、むしろより一層、怪訝な顔をしている。

おかげでし酔いが覚めてきた……というのは冗談だ。ああ。

「……なんかおかしいな。俺が聞いた話ではお前らが町に來る旅人を襲って資金源にしてるって聞いたんだが?」

「そりゃ前の盜賊団の話だろ?」

「前の……」

だが、それだとあの掲示板にドルゲの名前があるのはおかしい……。ケイトが指差したあの時はわからなかったが、今思い出すと確かにドルゲの名前があった。

しかも、結構な額の賞金がかかっていた。……どういうことだ? 俺が見た限り、ケイトもドルゲも噓をついている様には見えない。

「……まあいいか。悪いが々調べさせてもらうぞ」

これが一番手っ取り早そうだ。

「はあ!? ……っ!?」

急に襲いかかる睡魔に、ドルゲの表が歪む。……抵抗してるのか。凄いな。他の奴らは皆、もうおねむだというのに。

気づけば大聲で歌っていたケイト達もその場に倒れている。

「まあ、悪いことしてなきゃ危害は加えないから安心してよ」

「ま、待て、なんだ、これ、毒の類はってなかったはず……だ」

「あ、一応チェックしてたんだな。でも、甘い」

俺の創造魔法は當然だが、俺の魔力を元にして記憶に有るものを生み出している。

つまり、こいつらが食べたり飲んだりした後で創造魔法を解除すれば、こいつらのの中には俺の魔力がってるって訳だ。

あとはその魔力を使って、幻を掛ければいい。からの魔法を防げる魔法なんてほとんど無いからな。

まあ、魔法解除自が俺以外には出來ないだろうから、そこまで意識が回らないのもしょうがないかも知れないけれど。

ちなみに、幻といっても漫畫のように言や行を完全にったりは出來ない。

掛ける対象にもよるが、出來るのは相手の意識を眠らせんだ映像を見せるだけ。その映像の中で質問に答えさせれば、現実の方でも無意識にそれを口にしてしまう。

今回のように本人に直接掛ける場合は、それぐらいしか出來ない。

「…………」

先程まで騒がしかった部屋が一転、水を打ったように靜まり返る。し面倒だったがこれだけの人數が居るんだ、なにかしら有益な報もあるだろう。

とりあえず々と探っていきますかね……。

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