《異世界冒険EX》悠斗の願い
「あ、そうか!」
俺は結界に閉じ込められて數時間程度を魔力回復に使い、それから出方法を考えていた。
ダラダラしている間に結界の外で何かやっていたようだが、どうでもいい……うん。
出方法だってすぐ思いついた。うん。まあ、ついさっきだけど。
「魔力無効で消してもいいんだけど、それだとね……」
ちょっと調べてみた限りでは結界には絶えず、魔力が流れている。しかも、一人分じゃない。
今の制限がかかった狀態じゃちと厳しい。
そこで、
「転移結晶~!」
どっちの聲を出すか迷ったが、昔の貓型タヌキロボットの聲を真似する。
そして、取り出した転移結晶を砕き、青白いが俺のを包み込み視界が暗転する。
次の瞬間にはアイギスの姿が見えた。
功だ。
「やあ、アイギス。忙しそうだね……」
「ああんっ!?」
目の前のアイギスは荒みきっていた。髪はれ、目は走り、手だけが周囲に浮かんだキーボードとタッチパネルを作している。
「なんだ悠斗か……って悠斗かよ!」
「うん。悠斗だよ」
おかしな突っ込みをれられてしまったが、とりあえず肯定しておく。
頭がいかれてしまった人の話は否定しちゃいけないからね。
「何だよ、もー。せっかく心配して、大急ぎで管理権の奪取を進めてたのに」
「それはまた……どうも」
こんなネトゲ廃人みたいな狀態になるまで、頑張ってくれたと考えるとちょっと照れくさいけど嬉しい。
「とにかく無事に出できたならちょっと地球に戻ってよ」
「え? そりゃまた何で?」
「ニルギリの奴が地球に二十もの魔王を送りこみやがったんだよ!」
「マジかよ……」
……とんでもないことする奴だな。魔王一人でも一日あれば一國位は落とせる位の強さだぞ。
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それが二十か……あ、その為に俺を呼び出そうとしてたのか?
ちくしょう。を返せ。
だがまぁ、我がしの故郷の為とあってはやらざるを得ない。だが、
「うーん……ちょっと待ってくれ。確定未來使うから」
魔王が二十。九割九分九厘勝てると思うが、念には念をれたい。
あれ? そう言えば……。
「あの時警察署で確定未來が使えなかったって事は、不可能だったって事だよな? でも、現に今は出出來てる。どういうことだ?」
「そりゃあれだろ。悠斗、あの時ステータスに制限掛かってたじゃん。だから多分、使えなかったんじゃない?」
「魔力量は足りてたぞ? ギリギリ」
「それだけじゃない。魔法攻撃力もある程度は無いと使えないし、それに魔法攻撃力が足りてても対象次第では使えない事も多い」
……すげえ便利だと思ってたのに。何か々と制限があるみたいだ。
「対象次第ってどういうことだ?」
「例えば……そうだな。悠斗が私と戦うで、確定未來を発させようとしても発しない」
「ん? どういう事だ? 別に戦う位ならいつでも出來るだろ」
殺せ、とかなら不可能だけど。
「対象の魔法防力を超えないと発しないんだよ」
「あー、なるほど……」
つまり自分より格下相手にしか使えないって事か。
「更に」
「まだあるのかよ」
どんどん出て來るな。それならそうと、最初に説明してくれればよかったのに。
「今回のように王都へと向かう、といった行の場合、それに関わる人間の魔法防力全てを超えないといけない」
「……つまり、俺が王都へと向かう上で邪魔になる存在全ての魔法防力を俺の魔法攻撃力が超えないといけないって事か」
「うん。全然違うね」
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呆れたように首をかしげるアイギス。仕方ないだろう。なんか話がごちゃごちゃしてるし。
「今回ならまあ、転移結晶を使って、それから私が王都に向かわせれば終わりでしょ? 邪魔になる存在なんていないじゃん?」
「でも、発しなかった」
「そう。何故なら邪魔する存在だけじゃなく、関わる存在全ての魔法防力を超えないといけないからだよ」
そういう事か。なる程……。
「つまり、アイギスの魔法防力を超えられなかったから発しなかったって訳か」
「そそ」
「そいうことなら俺が警察署で使った時に教えてくれよ」
し口を尖らせながら愚癡ると、アイギスは深く、更に深くため息をつく。
「……これは悠斗に確定未來を與えた時に言ったはずなんだけどね……」
「マジかよ」
全然記憶にない……まぁ々と忙しかったしね。しょうがないね。うん。
「てっきりその辺りも欠點消去で消すのかと思ってたよ」
「あー……出來るか微妙だな。なくともあの時點では魔力量が足りてないな」
「まあ、とにかく無事に戻って來てくれてよかったよ。てなわけで、早く行こうか」
アイギスからの圧力が強まる。そんなに地球がヤバいのだろうか。
ていうかそもそも確か……。
「地球の方は時間が止まってるんだったよな? じゃあ魔王がったとしても無駄じゃないか? というか、れないだろ」
「いや、それが……ニルギリの奴が……」
何やらバツが悪そうな顔でゴニョゴニョと歯切れの悪いアイギス。これは嫌な予がする。
この神がアホな事をやらかした時はいつもこうだ。
「その、ちょっと一時期忙しくてさ、ニルギリに地球の管理任せてたんだよね。おかげで積みゲー消化できたんだけど……」
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「は?」
な、何を言ってるんだこの神。自分が管理してる世界を他の奴に任せた、だと……。ていうかゲーム積んでんじゃねえよ。
「いや、ほら、悠斗だって夏休みの宿題、茜ちゃんに手伝って貰ってたじゃん」
「いやいや、スケールが違うだろ! え? ていうか管理って別の神でも出來るのかよ?」
「まあ、ニルギリは私が教育したからね。というか……他の神もそうだけど」
「じゃあ、どの神も基本的な所は出來る。みたいなじなのか」
「そそ。でも、そのせいで基本的なベースが私の世界のパクリなんだよねー」
……そう言えば今まで行った異世界も、確かに違うところも多かったが、似ているところも多かったな。
それはアイギスが教育していたからなのか。
「と、それで? 今はアイギスが管理してるんだろ?」
「うん。でも、なんかちょっと仕組み変えられてて、ニルギリの方からも作できるようになっちゃってたみたい」
「は?」
てへぺろ。と、舌を出すアイギスのその舌を摑む。
それで許されるレベルは明らかに超えている。
「いあい! いあいよ!」
「それお前、バックドア仕込まれてるじゃねーか!」
「ゆうおのうせにむうかしいおおしっけるだん」
なんて言ってるんだこの神は。気る団って何かすげー嫌な団だな。
キノコが団長な気がする。
「なんあだんだんいもいよく……」
「何に目覚めてんだよ!」
今のは何となくわかった。慌てて思いっきり強く舌を引っ張り、そして放す。
「ヴオオ!」
とは思えない聲を上げて、アイギスは倒れた。
ようやく悪は滅んだ……。
「今のは痛かった……今のは痛かったぞーっ!」
しかし、アイギスは立ち上がるとカリスマに定評がある宇宙の帝王の真似をする。
もうやだこの神。
「それで地球はどうなってるんだよ!? 茜は?」
「今はまだ魔王達も本格的に暴れてないからそんなに被害はないよ。せいぜい數千人位? 茜ちゃんは日本に現れてた魔王倒して、今は家でケーキ食べてるよ」
……マジか。まあ、當然と言えば當然か。俺だって過去に負けてるからな。茜には。
俺より弱い奴に負ける訳がない。
「それでも、茜を危険に曬したのは間違いないんだから反省しろよ」
「あい、とぅいまてーん!」
「…………」
第十二次人神戦爭の始まりだった。
俺に掛けられた制限もここでは消えている。
……呼び出すのは蒼い炎、近くにいるだけでが焼け、常時回復魔法を使わなければ俺自、そのまま焼かれてしまうだろう。
そんな炎を生み出す。燃え盡きろ……。
「四重結界」
だが、アイギスの聲が響くと同時に俺の周囲から酸素が消失する。
創造魔法を使い酸素を生み出すが、それもまたすぐに消失していく。
アイギスの使用した結界は四つの結界の重ね掛けのようだ。
一つ目の結界が外からの酸素の供給を防ぎ、二つ目の結界が魔力消失、更に不壊、再生となっている。
流石は神、こんなの茜位しか他に出來ないだろう。
「やってくれる……」
だが、俺が結界に手をれるとたちまち結界は消失する。まだ甘い。
「む。あ、そうか。異能か」
「アイギスにはバレてるからな。隠すこともない」
一瞬、驚いた顔をしたアイギスが納得したように頷く。
だが、よく考えればこのまま戦っても、得どころか魔力の無駄だな……。
「……今はこんな事してる場合じゃない、か」
現在も地球では魔王共が暴れているはずだ。茜以外がどうなろうと知ったことではないが、それでもまあ、なるべく早めに終わらせた方がいいだろう。
「そうそう。じゃあどこから行く? 日本はもういないから別の所に戻すよ?」
「どこでもいい」
「りょーかい」
言うと同時にアイギスのの下に大きな魔方陣が展開される。當然これもただの演出だ。
「《溢れ出る無限の魔力を糧に彼の者を氷結の大地へと送りたまえ……┃世界転位(チェンジ・ザ・ワールド)」
長えな。無駄に。
俺のが虹のの粒子となり、しずつ消えていく。マジで面倒だなこの神は。
綺麗だけど怖えわ。
ニタニタと笑うアイギスの顔を眺めていると、いつの間にか転移は終わっていた。
「寒い……」
辺りに見えるのは氷。もうものの見事に氷。そしてその中にそびえ立つ氷の城。
おそらく魔王城だろう。
「ここは後回しでいいか」
周囲に人の姿はないし、他の所を優先すべきだろう。
あの糞神は嫌がらせでここに送ったに違いない。南極か北極かの二択だな。
とりあえず、
《欠點消去》
《確定未來》《魔王達を殺す》
……うーん……発しないか。條件が曖昧だからか?
なら、《地球に存在する魔王達を殺す》
……よし、出來た。普通に可能みたいだな。
確定未來で見た未來では一ずつ殺していたが、それだとし時間がかかる。まあ、俺がそうしようと思っていたからだけど。
だが、敵の能力はわかったし、魔力を吸収するような能力はなかった。なら、こっちだ。
《マップ》
世界中に魔力を広げていく。今の俺なら地球全に広げ、地球を魔力で満たすことが可能だ。
《鑑定》
そして、知した魔王達の能力を見る。
理に弱い者、逆に強い者、魔法に長けた者、ある屬に弱い者、様々だ。
詳しく見ても、問題になりそうな奴はいないな。
「じゃあ、やるか……って、あれ?」
いつの間にか景が変わっている。味気ない氷の世界から、良い匂いがする見覚えのある部屋に。
「…………」
というかこの部屋は……茜の部屋だ。
機の上に置かれた寫真立てには俺と茜が寫っている。懐かしい。中學の學式のやつだな。可い。
「やあやあ。悠斗くん」
「茜……え? これはどういうこと?」
後ろから聲をかけられ、振り向くと茜がベッドに腰掛け笑っている。
可い。押し倒したい。戸う茜が見てみたい。テーブルに置かれたケーキの皿を舐めたい。
「何か悠斗くんの魔力をじたから」
「……あー」
マップか。あれを使った時に、逆に知されてしまったのか。
「いつもだったらすぐボクの所に戻ってくるのに、今回はずいぶん遠くだったから……。何か厄介ごと?」
「うーん、まあ、そうといえばそうなんだけど……」
どうしようかな。説明してもいいけど、茜にはしでも危険な事はしてほしくないんだよなぁ。
「そう言えば北海道の方に何か居たから消しといたけど、もしかして関係してる?」
たぶん魔王なんだろうなぁ。電気つけっぱだったから消しといたみたいに言ってるけど。
「……実は今回、転移した先の神がこっちの世界に魔王をばらまいたらしくてさ、その駆除をする所」
「何か蟲みたいな扱いだねえ」
茜はし考える様な素振りを見せたあと、パンと手を打つ。
「よし! ボクも手伝うよ!」
その眩しい笑顔につい頷きたくなるが、駄目だ。過保護と言われようとなるべく俺だけで片付けたい。
「いや、大丈夫。もう終わるところだから」
「えー? 久々に悠斗くんと冒険出來そうだったのになー」
殘念そうな表の茜だが、こればかりは仕方ない。
「もう世界中に魔力を満たしているから、後は魔王のいる場所にそれぞれの弱點に対応した魔法を発させるだけだよ」
俺はどれだけ離れていようと、自の魔力がそこにあれば魔法を発出來る。
まあ、どうやら茜も出來るみたいだけど……。
「え? それだと魔王の周囲にいる人達も巻き込まれない?」
茜が片眉を吊り上げ聞いてくるが、それは仕方ない。
「それはしょうがない。必要な犠牲だよ」
魔王の傍にいるなら遅かれ早かれ死ぬだろう。なら、そんなこと気にしてもしょうがない。
「いや、駄目でしょ。そうだなぁ……」
目を瞑り、黙り込む茜。
こっそりキスしたらどうするんだろう? 怒るかな。いや、そんなに怒らないだろ。
「…………」
ゆっくりと顔を近付けていく。
茜のき通るようなに、薄い。それに俺のがれるかれないかの所でパッと茜の目が開く。
「っ……悠斗くん!?」
「……い、いや、ほら……心配して覗き込んだだけだよ? ホントだよ?」
真っ赤になって距離を取る茜に、慌てて弁明する。……惜しい所だった。
「そ、それで何を考えてたんだ?」
「あ、えーと……」
(こ、ここからは私が説明しよう)
頭の中でアイギスの聲が響く。いつもの聲とはし違い、震えている気がする。
何かまたやらかしたのか……。
(魔王の位置は把握できてるんだよな? だったらその位置報を茜さんにもリンクして、茜さんが結界で魔王達を拘束。後は悠斗が結界の魔力を使用し、エンド)
流れるような早口での説明だが、概ね理解出來た。
アイギスが茜に脅されているのも。
「じゃあ、そんな訳だからアイギスさん。よろしく」
(はい。思考リンクですね)
震えたアイギスの聲が脳に響く、その瞬間から茜にもこちらの考えが伝わるようだ。
(悠斗くん! 魔王達の位置報を教えて?)
まあ、ここからなら安全は確保されている。仕方ないか。
関係ないが、茜の聲が脳に響くと何だか興する。
(えーと……)
マップをもう一度発し、それぞれの位置報を茜へと伝える。
(じゃあ……うん、捕まえたよ)
茜は事も無げに言っているが、複數の結界を遠距離に発し、更に魔王クラスを捕獲するなどはっきりいって不可能だ。
(あはは。暴れてる。本當に蟲みたいだね)
しかし、茜にとっては何でもないようことのようだ。恐ろしいような、頼もしいような。
(それで、あの、茜さん、そろそろ私の方の結界を解除して頂きたいのですが……)
(え? うーん……今回の事ってアイギスさんが原因なんだよね? だったらさ……罰が必要だよね?)
どうやらアイギスも捕まっているようだ。殘念な事にアイギスの空間には俺の魔力はない。
……どんまい。アイギス。
俺ならまだ軽く燃やす位で済ませてあげたが……。
と、俺は俺の仕事をしないとな。茜が魔王達を閉じ込めてる結界部に、それぞれの弱點に対応した魔法を発させる。
頭の中でアイギスの悲鳴と懇願と嗚咽が響いているが、気にしては駄目だ。
(あはは。もっと激しくなった)
茜の無邪気な聲がとても怖いが、そんな所も大好きだ。
あ、そうだ。
(茜、大好きだよ)
(な、何、急に? えーと、ボクも大好きだよ! 悠斗くん!)
(……なかなか思考リンクなんて珍しい狀況はないからさ、ちょっとやってみたくて)
目の前にはしだけ顔を赤くした茜が居る。多分、俺の顔も同じだろう。
(茜の顔、名前の通り茜になってるぞ)
(えー? 悠斗くんだってそうだよー)
見つめ合いながら心の中で會話する。照れたり、笑ったり、し怒ったり、拗ねたり。
ああ。幸せだ。
そう、そうだ。こんな幸せな毎日が続くこと。それが、俺のたった一つの願いなんだ。
(茜、いいよね?)
(……うん……)
次第に小さくなるアイギスの聲を聞きながら、俺と茜はを重ねる。
そしてどちらからともなく離れると、お互いに照れ笑いで目を逸らす。
ああ。幸せだ。ほんの一瞬でこうも幸せになれることが他にあるだろうか。いや、ない。
あ、あと魔王達は死んだ。
◆◇◆
「だからね? ボクが言いたいのは飲み口が広くなったコーンスープの缶は邪道だよねって事なんだよ」
「でも、あれのおで缶の口の所で舌を切ることがなくなった訳だし……」
あれから數時間程、茜とのトークを楽しんでいる。ちょっと前に思考リンクが切れた為、普通に口頭で。
アイギスが力盡きたのだろう。
やっぱり耳で聞くのもいい。茜の可くて澄んだ聲がたまらない。
「いや、缶に殘ったコーンとパピコの先っちょを同列視するのは……」
「でも、あれだってコーンスープを最後の一粒まで飲む事と一緒の行為でしょ」
「まあ、確かに外であの小さい先っちょを吸ってるの見るとしうわぁって思うけど」
「でしょ? でも、あそこが一番味しい訳じゃん! コーンスープも同じだよ! 最後の一粒が一番味しいんだ! だからみっともなくともボクはやる!」
言いながら缶のコーンスープの最後の一粒を何とか取ろうと、舌をかす茜。
ああ、俺は缶になりたい。
「っ痛い!」
「大丈夫か!?」
舌を切ったようで、茜は舌を出したまま缶を離す。
「まったく……」
俺はすぐに回復魔法を使用し、茜の怪我を癒やす。
「缶の下まで落としたら後は吸った方が早いよ」
「えー? んー……」
さてと。俺はそろそろ行かないとね。
神の指から転移結晶を取り出す。
何度かアイギスに通信してみたが、返事がない。ただのになっていないことを祈るばかりだ。
「おお! なるほど!」
取れたようで幸せそうに笑う茜を見ながら思う。
この笑顔も俺が回復魔法を持っていなかったら、見れなかった。
だから茜のため、いや、俺の幸せの為に俺は……何でも出來る俺になるんだ。
もう二度と茜が泣かないで済むように、幸せで、いつまでも笑っていられるように……。
「……あれ? もう一粒あった!」
そんな俺の決意を橫目に、茜はコンコンと缶を叩き、殘ったコーンを缶の口の所に落とすと、一気に吸い込む。
「……んふっ!? っごほっ! ごほっ!」
「おいおい……大丈夫か?」
どうやらにダイレクトアタックされたようで、茜は真っ赤な顔で咳き込む。
やっぱりコーンにもなりたい。
「……んふー。大丈夫、大丈夫。……ほら」
「…………」
茜が舌をペロっと前に出すと、その舌の上には一粒のコーンが乗っている。
……全く。
「っうぇ!?」
當然、そんなを見せられては我慢できようもない。
「んー!? んー!!」
茜のにキスすると共に、舌に置かれたコーンを奪い取る。
そしてを離すと、もの言いたげな視線で見てくる茜に笑みを浮かべて告げる。
「……うん。じゃあまた!」
「……っ……ボクのコーン!」
気にするのそっちかよ! 俺はツッコむと共に転移結晶を砕いた。
◆◇◆
「隨分とお楽しみでしたね」
「見てたのかよ……趣味が悪いなぁ」
アイギスの空間に戻ると同時に、ふて腐れたアイギスの聲が聞こえる。
アイギスは地球の管理を完全に取り戻したらしく、次はニルギリの世界の管理権を奪おうとしているようだ。
どんな罰をけていたのか服はボロボロのようだが、自に傷はない。回復しただけかもしれないが。
「じゃ、そろそろ戻るよ。茜の為にも頑張らなきゃ……」
「そうだねー。茜さんの為にも頑張ってねー」
「…………」
アイギスはし拗ねた子供のような聲を出してくる。
……アイギスは聲帯模寫が得意だから、多分これも罠か何かなんだろうけど。
どさくさで聞いた一つの言葉が頭をよぎる。流石にこのままなかった事には出來ないよな。
「あの……アイギス、責任は取るつもりだから。ちゃんと茜にも話すし、その結果もけ止める」
「え? いや、別にそんな……」
「俺は茜が大好きだ。それは未來永劫変わらないと思う。でも、アイギスの事もさ……その……」
當然ながら嫌いじゃない。斷然好きだ。でも、茜ほどじゃない……ってそんなクズな事言える訳がないし、でも好きなのは本當だし……。
「…………」
「……えーと……一発ヤッとく?」
「何でだよっ!」
全くアイギスは……。こっちは真剣に話してるってのに。
「そうそう。私達はそれでいいじゃん。お互いボケて、ツッコんで……。まあ、ベッドの上では悠斗だけが突っ込むんだけど」
「アイギスって、意外と下ネタ好きだよな」
「……否定はしない」
はぁ……まあいいか。いつかアイギスにも、そして茜にも言わないといけないな。
俺の願いとその為の計畫を。
「……じゃあ、戻るよ」
「うん。今回は神が敵なだけあって、だいぶ面倒だからね……。何もなければいいけど……」
「フラグを立てるなよ。大丈夫だ。あの年は俺をどうにかするつもりのようだからな。あそこに罠をはり、待ち伏せしてればだいぶ敵は倒せるはずだ。そうなれば、俺の制限も解除出來るし、仲間を呼ぶことも出來る」
不安要素はないはずだ。相手が神だろうと、それぞれの空間以外でなら勝機はある。
「ま、無理はしないようにね。念の為、容量が空いたら自で制限を解除するようにしておくよ」
「ありがとさん」
そういってニルギリの世界へと戻った俺は罠をはり、敵の出方を待った。
見落としはないはずだった。まさか敵が、召喚するとは、出來るとは思わなかったんだ…………俺の何より大切な茜を。
スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★
西暦2040年の日本。 100人に1人の割合で超能力者が生まれるようになった時代。 ボッチな主人公は、戦闘系能力者にいじめられる日々を送っていた。 ある日、日本政府はとあるプロジェクトのために、日本中の超能力者を集めた。 そのタイミングで、主人公も超能力者であることが判明。 しかも能力は極めて有用性が高く、プロジェクトでは大活躍、學校でもヒーロー扱い。 一方で戦闘系能力者は、プロジェクトでは役に立たず、転落していく。 ※※ 著者紹介 ※※ 鏡銀鉢(かがみ・ぎんぱち) 2012年、『地球唯一の男』で第8回MF文庫Jライトノベル新人賞にて佳作を受賞、同作を『忘卻の軍神と裝甲戦姫』と改題しデビュー。 他の著作に、『獨立學園國家の召喚術科生』『俺たちは空気が読めない』『平社員は大金が欲しい』『無雙で無敵の規格外魔法使い』がある。
8 186NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?
作品名:NPC勇者○○はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!? *最新話隨時更新中* 最新の超期待作ゲーム。その世界限定先行テストプレイに見事當選した主人公。 しかし、開始からバグのオンパレードでキャラエディットが出來ずに強制開始ときたから不満はもう大爆発! スキルも能力も全く設定されていない、開発者専用アカウント「勇者〇〇(まるまる)」としてログインした主人公は本來のプレイヤー名を名乗る事はおろか、バグの影響でログアウトも出來ず、更に運営にまでNPCだと勘違いされてしまいただ1人ゲーム世界に取り殘される。 ここで生き殘る為に使えるのは、自らが今まで培ってきたゲーム知識と…まさかの公式チート『デバッグメニュー』!? 資金無限、即時復活、限定解除にステータス変更不能からウィンクひとつでコミュランク強制MAX!・・・これ、現実に戻らなくてもいいんじゃね!? 現実とゲームの世界を越えた、絆で結ばれたNPC達との大冒険が、今ここに始まる。 はたして勇者○○は本來の自分を取り戻し、ログアウトする事が出來るのか?それともこのままNPCとしてゲーム世界に取り殘されてしまうのか。 ゲーム発売まで殘りあとわずか…それまでにNPC勇者○○はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!? イラスト提供:ナス(転載禁止) 作者、激しく補助席希望をTwitterで検索! @999_RC_att なお、同名にてSPOONによるLIVE配信も行っております。気になる方は要チェック!!いつでも気軽に遊びに來て下さい。 また、隨時質問や感想等もコメント大募集しております。あなたのコメントが作者のヤル気とモチベを爆上げさせますので、是非お願いします!
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エリート引きこもりニート山岡勝介は、しょーもないバチ當たり行為が原因で異世界に飛ばされ、その世界を救うことを義務付けられる。罰として異世界勇者的な人外チートはないものの、死んだらステータスを維持したままスタート地點(セーブポイント)からやり直しとなる”死に戻り”と、異世界の住人には使えないステータス機能、成長チートとも呼べる成長補正を駆使し、世界を救うために奮闘する。 ※小説家になろう・カクヨムにて同時掲載
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8 53異世界エルフの奴隷ちゃん
ひょんなことから迷宮都市で奴隷として生きることになったエルフちゃんは、ライバル奴隷の犬耳ちゃんと一緒に『さすごしゅ』ライフをおくっていた。 奴隷の溢れるこの世界でエルフちゃんは生き殘ることができるのか!? チートなご主人さまと、2人の奴隷ちゃんによる、ちょっぴりエッチでときどき腹黒(?)な日常コメディ!
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