《異世界冒険EX》アイギスの空間にて
「さて、君達に聞きたいことがある。正直に答えてくれると助かる。無駄に拷問はしたくないからね」
俺達はアイギスの空間に戻っていた。目の前には中を槍で貫かれている四人。
……茜のリクエストだ。俺が槍で殺されたからだろう。
死なないように自回復を掛けているが、刺さったままなので傷が塞がらず黒ひげ危機一髪狀況というわけだ。えぐい。
「私達の記憶はもう抜き出したのでしょう? ならばそれが全てです」
「…………」
喋る元気があるのはニルギリだけのようだ。他三人は俯いて黙り込んでいる。
「そりゃ行はわかるが、考えやといったものまではわからないんだよ。特にニルギリちゃん、君のね。答えてくれるなら他三人の槍は抜いてもいい」
アイギスの言葉を聞いたニルギリはアッシュを見て、そしてアイギスを見る。
「……何が聞きたいのですか?」
「なぜ裏切った?」
「…………」
彼は裏切っていた。
アッシュに今回の容量圧迫による世界崩壊を持ちかけたのは彼だ。
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俺にはなぜそうしたのかなんとなくはわかる……だが、それは俺が人間だからだ。
「……アッシュを好きになってしまったからです」
搾り出すように告げられたその言葉は、俺が予想していたものと同じだった。
そもそも今回の騒は本當に世界崩壊を起こすつもりは無く、それを渉材料に願いを葉えてもらうことが目的だった。
それが、ニルギリがアッシュに説明した計畫だ。
だが、実はそれだとおかしいことがある。
「ならばなぜ、私に渉を持ちかけなかったのだ?」
「えっ!?」
「…………」
アッシュが素っ頓狂な聲を上げる。だが、それも仕方ないだろう。
苦労して進めて來たのに、実際には渉を持ちかけてすらいなかったのだ。
まさに骨折り損のくたびれもうけだ。
「どういうことだ!? ニルギリ!?」
「……それは……その……」
「答えろ! 殺すぞ! 」
アッシュが勢いよく立ち上がり、ニルギリを問い詰める。よくあの狀態で立てるな。
普通なら痛みでそれどころじゃないはずだけど……。
アッシュの気迫に押されるようにニルギリはおずおずと答える。
「……アッシュの願いが葉ってほしくなかったから……」
「っ!」
これはまずい。
「ストップ。落ち著け! 今の発言で大わかった。俺が順番に説明する。だから、落ち著け。それとニルギリも、間違ってたら訂正してくれ」
噛みつこうとしたアッシュを羽い締めにして、話の主導権を奪い取る。なんというか……こう……なんともいえない話だなあ。
この四人は互いに知らない事も多いし、アイギスはなんだかんだ人間のの機微がわからない事が多い。
である以上、俺か茜がまとめないとね。さっさと元の世界に帰りたいものだ。
「まずアッシュ。お前はあの世界の始めての異世界人だな。初代勇者ってやつだ」
「ああ」
「そしてその二人が仲間。あと一人居たみたいだけどまあ、袂をわかったみたいだな。二人も仮面の集団とやらには協力してなかったみたいだけど、今回は協力した」
「當たり前だ。世界崩壊なんて馬鹿なことには協力できないが、単純に仲間が助けを求めるなら助けるものだ」
「私もアッシュには世話になったからね」
二人は諦めたようにため息をつき、答える。
どうやらこの二人も捕らえられたからしおらしくしていただけで、痛みで參っている様子はない。
……痛覚を強化してやるか? いや、そんな場合じゃないな。
「そう。ま、それはどうでもいいんだけど。その仲間達との旅の中で出會った、クレア。まあ、とてもしいでアッシュはどんどん惹かれていった。あ、もちろん茜のほうがしいし可いけどね」
「ふふふ。そうかなー」
「……はっ」
「あん? 殺すぞ」
鼻で笑うアッシュのにもう一本槍を刺す。
「…………」
やはり痛みに対しての耐が高い。
俺もアイギスとの修行という名の拷問で、種も仕掛けも無い箱にれられて串刺しにされたけどめちゃくちゃんだぞ。
流石は勇者様ご一行といったところかね。悲鳴すらあげないとは。
「しかし、何とクレアこそが目的の魔王だったのです。ですが、クレアもアッシュに惹かれていた為、問題はあったものの二人は結ばれました。元の世界に未練の無かった寂しいアッシュはこの世界でクレアと幸せに生きるぞ、と決めました」
「ちっ」
俺の説明にアッシュが舌打ちする。しかし、口は挾んで來ないという事は正解という事だろう。
「ですが、それを面白く思わない神が居ました。何とニルギリです」
「まあ、神って時點でそうだろうね」
茜の突っ込みがる。ちゃんと聞いて貰ってるようで嬉しい。
「彼はアッシュに惹かれていたのです。まだアッシュが俺と同じ世界に居た頃から。だからこそ、ニルギリの世界で問題が起こった時、アッシュ君呼べるじゃん。と、ニルギリは喜びました。そして、呼び出し、問題の解決を命じました」
「…………」
ちなみに、これで誠君呼べるじゃん! って本當に言っていたりする。
オフの時の言葉遣いはテキトーなようだ。
……加えてこの場では言わないがアッシュを見つけたのはアイギスが積みゲー解消の為に、任せていた時だったりする。
マジで全ての問題の源はアイギス説ある。
「で、問題というのは異常な存在の討伐。明らかに他と違う、容量が大きな存在が現れた。そう……それが魔王クレアだ」
まぁ、それもニルギリの仕業なんだけどね。敵存在の能力に関しては神の管轄だし。
本當にマッチポンプ、自作自演が好きな神様だね。あえてここでは言わないけれど。
「おい。呼び捨てにするのはやめろ。イラッとする」
アッシュが鋭い目つきで睨んでくる。何気に口悪いなこいつ。いつの間にか口調も気取った口調じゃなくなってるし。
「りょー。……だが、アッシュはとてもじゃないがクレアちゃんを討伐なんて無理。と、ニルギリに進言した。まあ結婚までしてるしな。ニルギリは悩んだ。クレアちゃんは嫌いだけど、それでアッシュに嫌われるのは辛い。何かいい手はないか?」
「ちゃん付けもやめろ」
「あい。そうだ。能力に制限を掛ければいい。そうすれば使用する容量も減る。ニルギリはアッシュに頼み、自分の元へ連れてこさせたクレア様に制限を掛けた」
「……さん付けにしろ」
「あい。しかし、その様子を見てニルギリはイラっとした。結果、必要以上に制限を掛け。當時のアッシュ君の十倍は強かったクレア(おば)さんは一般的なと同じ能力値になった。が、問題はない。何故なら俺が守る。アッシュは固く誓った」
「なんでさんの前に一拍あけた?」
「気のせいじゃない? それからしばらくは幸せな日々を過ごした。ニルギリも幸せそうな二人を見て、そうだ、二人の子供を狙おうと考えを改めた。しかしクレア(おば)さん(のクリームシチュー)とアッシュの子供はの子だった」
「明らかにおかしい……」
「……あー、ここからはアッシュは聞きたくなかったら耳を塞いでくれていいぞ」
「……槍が刺さってかせねえよ」
まあ、確かに。
……そういえばニルギリが答えたら槍を抜く約束だったな。
「そういえば抜く約束だったね」
一度三人の槍を抜き、またすぐに突き刺す。
「…………え?」
何故かその瞬間、周囲からの視線が俺に突き刺さる。
……いや、だって自由にすると危ないし。アイギスだってそのつもりのはず……ってあれ?
「悠斗お前……」
アイギスまで、こいつは……みたいな視線で俺を見ている。おかしいなあ。
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