《異世界冒険EX》説明回

「……ここは?」

「ここはデュエルの中心、ドルカの近くよ。あんたには……首都といった方がわかりやすいかしら」

慌てた様子もなく、フロリアは答える。転移に慣れているのだろう。

俺はまだ慣れていないし、し気持ち悪い。

「そこに勇者がいるのですか?」

なくとも年上ではあるようなので、敬語を使う。

先輩とも言える訳だし。

「そうよ」

「じゃあ、早速行きましょう!」

さっさっと終わらせて帰りたい。ゲームの世界に憧れた事もあるけれど、もう七十年も元の世界に戻っていないのだもの。早く帰りたい。

「馬鹿なの? アンタ」

「へ?」

フロリアは呆れたような目でこちらを見ている。

何だ? 何か間違えたか?

「勇者達はね……卑怯!」

「卑怯……」

「そして、下衆!」

「……下衆」

「更にクズ!」

「……クズ」

「だけど、強いわ……」

勢いよく指差していたかと思うと、急にうなだれるフロリア。

何だか緒不安定な人が多いなぁ。この業界。ちょっと怖いぞ。

「つまり、今の俺たちでは勝てないという事ですか?」

「……そういうこと。まあ、アンタのステータスが飛び抜けてるっていうんなら、話は別だけどね。と、いう訳でステータスを開いて」

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「わかりました」

「あと、敬語はやめなさい。アンタみたいな子供が敬語使ってるのは気持ち悪いわ」

「……<<ステータス>>」

し傷つきながらも、自報が表示された金の板を出現させる。

名前:神木 悠斗

別:男

種族:人間

職業:小學生

レベル:145

力:15000/15000

魔力:33000/33000

理攻撃力:10000

理防力:10000

素早さ :20000

魔法攻撃力:44000

魔法防力:25000

運 :1000

スキル:強化魔法 武 格闘

固有魔法:創造魔法……自の記憶にあるものを創造することが出來る。

「……神の空間では筋力は鍛えられないはずなのに結構……これならまあ……って何で強化魔法だけなのよ!」

「しょうがないじゃん。それ以外教わってないし」

俺だってもっと派手な魔法を覚えたかったわ。手から炎とか水とか出してみたいわ。

「ま、まあいいわ……強化魔法が使えるなら他の魔法も簡単に覚えられるだろうし」

「マジ?」

「……アンタを教えた神がどういうつもりかわからないけれど……強化魔法は魔法の中でも難易度がめちゃくちゃ高いのよ」

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確かに使えるようになるのに五年はかかったな……。あんの糞神め。

「その強化魔法をステータスに表示されるぐらい使えているなら、屬魔法なんかは數時間もあれば覚えられると思うわ」

マジかよ……。それならついでに教えてくれれば良かったのに。スマ○ラSPやってる場合じゃなかった。

とりあえずゼル○はチート。

「幸いにもこの世界は魔法を覚えるにはピッタリの世界だし」

あー……だから、アイギスも最初に難しい強化魔法を教えてくれたのかな……。

うん。たぶん違うな。アミダか何かだろうな。おそらく。

「ただ……。いえ、それよりもこの世界には他の世界にはないルールがあるわ。今のうちに教えておきたいのだけど」

「ルール?」

やはり別世界となると、法律や法則が違ったりするのだろうか。

なくとも重力はあるようだけれど。

呼吸も普通に出來ているし、風も吹いている。何か違いがあるようには思えないけれど。

「そう。……うーん、口で説明するより戦いながらの方がわかりやすいわ。試合をしましょう」

「わかった」

俺が答えると同時に、フロリアの神の指り、その手にレイピアが握られる。

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レイピアとは細で先端の鋭く尖った刺突用の片手剣だ。

本來はもう片方の手にダガー等の短剣を持つのが基本だが、フロリアは持たないようだ。

片手をフリーにしておきたい理由があるのだろうか。

まあ、何にしても突き技なら……。

「そんなもの指の中にあったかしら?」

「いや、固有魔法? って奴を使ってみたんだ。名前から能力は想像出來たし、刀の修行に使ってた奴を創造してみた」

アイギスとの修行で使っていた逆刃刀。

どんな刀でも生み出せる、とアイギスが豪語していたので絶対に折れない、そして造形は昔見た漫畫のアレにしてみた。

いつか風魔法で奧義を放とうと思う。

「いきなりで使えるなんて……し評価を上げるべきかしら?」

「それはどーも。……もう始めていいのか?」

「いいわよ」

答えたフロリアの姿がブレる。

その次の瞬間には元にレイピアの切っ先が迫っている。

ゼロからトップスピードに達するまでが速い。まさに急襲といった攻撃だ。

だが、

「……なるほど、ね」

そう呟いたフロリアの手からはレイピアが無くなり、俺の手にはいつの間にか抜き放たれた逆刃刀がある。

遠くに落ちたレイピアが、勝負の結果を語っている。

「俺の勝ちだな」

涼しい顔でそう宣言するが、額にはうっすらと汗が滲んでいる。平靜を裝ってはいるが、心めちゃくちゃ焦った。

……マジで死んだかと思った。

まさか元突いてくるなんて殺す気満々じゃないか。

だが、敵の攻撃を頭で理解するより前にはしっかりと反応していた。

アイギスの容赦ない攻撃のおかげだろう。休みなく襲い來る苛烈な攻撃に、考えるよりも先にくようになっている。

それにアイギスとの修行によって俺の居合いの速度は常人のそれを遙かに超えている。

フロリアの突きは確かに速かった。が、それ以上に俺の居合の方が圧倒的に速い。

レイピアを使う以上、突き技だろうと予想がついたしね。

「……こう見えても魔法なしの戦いでも負けるつもりは無かったのだけれど……。ちょっとアンタには勝てそうもないわね。まあ、次はこの世界での戦い方を教えるわ」

フロリアは落ち込んだ様子もなく、おもむろに右手を前に出し、そのまま右側にかす。

微量だがその右手からは魔力が出ている。何をする気だ?

「……ん?」

気づけばかされたフロリアの右手のあとを追うように、長方形の紙が浮かんでいる。

その數は全部で七枚。なるほど。

だからカードと魔法の世界、か。詳しいことはまだわからないけどおそらく……

「うおっ!?」

フロリアが左手でカードにれた瞬間、小さな火の玉が俺の顔のすぐ傍を高速で通り抜ける。

「ま、こんな風に魔法を閉じ込めたカードを使い、魔法を発させる事が出來るのがこの世界の特徴よ」

いや、普通に頬火傷したんだけど。しかも、避けたから當たらなかっただけで、避けなかったら顔面直撃コースだったからね。

何でそんなに殺そうとしてくるのか……。いや、あの程度なら死なないとは思うけど。

「……右手で生して、左手でタッチすることで発できるわ。ただ、一度に生み出せる枚數は人によって違うわ。基本的に魔力作が上手いほど多くの枚數を生出來るわ」

頬をり、火傷したことをアピールしてみるが、気にした様子もなく説明を続けているフロリア。

コイツもアイギスと同じドSか。最悪だ。

「……というか、普通に魔法を発するのとどう違うんだ?」

フロリアの口ぶりから別にカードを使わなくても、魔法は使えそうだ。

それならあまりカードで発するメリットはないようにじる。

「そうねえ……詠唱時間の短、同時発が可能な點、この辺りがメリットかしら。あと相手にカードを出されたらカード以外の攻撃手段が使えなくなるからってのもあるわね」

し考えた後フロリアは言った。そしてそこには聞き捨てならない話があった。

「詳しく」

続きを促すと、フロリアは淡々と説明を続ける。真面目な奴ではあるようだ。

「普通に発しようとしたら時間のかかる大掛かりな魔法でも、カードを使えば一瞬で発させることが出來るのよ。それにカードを重ねることで二つ以上の魔法を同時に発することも可能ってわけ」

「……なるほど。それで、カード以外の攻撃手段が使えなくなるってのは?」

もしも俺の想像通りなら、あの長く、そして辛い修行は殆どアレ、ということになる。

時間をかけて作り上げた黃金の泥団子を、い床に落としてしまった時と同じ……そう。時間の無駄。

そんな馬鹿な。

「言葉のままよ。相手がカードを出した時點で、カード以外の攻撃手段が使えなくなるわ」

「……そ、それはつまり、俺が修行した格闘や武は使えなくなる、ということなのか?」

しつこく確認する俺。

だってそんな、もしそうならふざけんなよ、クソ神って話じゃん。そういう世界なら常識的に考えて魔法を教えるだろ、普通。

あ……そうか。

よく考えたらアイギスは常識や普通とは真逆の神だったわ。

俺としたことが。アハハハハ。

「ま、全くの無駄という訳じゃないのよ」

うなだれる俺に、焦ったようにフロリアは答える。

どうやら流石に全くの無駄という訳ではないようだ。良かった。

「相手がカードを出す前に倒してしまえば関係ない訳だし、最悪の場合は攻撃方法をカードにする事も可能よ」

言われてみれば確かに。

何も正々堂々戦う事もないだろう。不意打ちして倒してしまえば問題はないか。

それはいいけど……。

「前半はわかるけど、攻撃方法をカードにって?」

「うーん……。まあ、やってみるのが早いわね。まずは今の狀態で私にその刀でもそれ以外でもいいから攻撃しようとしてみて?」

「わかった」

俺は頷くと逆刃刀に手をかける。

だが、

「あれ?」

何故か逆刃刀を抜くことが出來ない。

なるほど。こういう事なのか。カード以外の攻撃手段が使えなくなるというのは。

「…………」

攻撃の意思をなくし、単純に抜こうとしてみると、逆刃刀は簡単に引き抜かれた。

どうやら意思の問題のようだ。

「なるほど。確かに攻撃は出來ないみたいだな」

「次はカードを出してみなさい」

「わかった」

先程のフロリアのきを真似るように、魔力を軽く放出しながら右手をかす。

「はー……なるほど」

「ストップ! 何枚出してるのよ!」

調子に乗ってぐるりと一周、の周りにカードを生した所でフロリアからストップがかかる。

その表には珍しく焦りが浮かんでいる。まあ會ったばかりだから珍しいかわからないけど。

「……ど、どれだけな魔力作なのよ。こんなの私でも……。もしも魔法を覚えたなら……計畫の修正を……」

「あれ?」

フロリアは何事か呟いているが、それより気になる事に気づいた。

カードが無地なのだ。

試しにフロリアと同じようには左手でタッチしてみるが、全く反応はない。

「……當たり前でしょ? 何も登録してないんだから」

何か考えていたフロリアはチラリとこちらを見て、呆れたようにため息をつく。

そして新たに一枚のカードを生する。

「このカードは見ての通りアンタと同じ無地よ」

フロリアは俺にカードを見せるように裏返す。

ある程度自由にカードはかせるようだ。

「これにれたまま登録したい魔法を使用すれば登録されるわ。他の攻撃方法ならイメージだけで登録出來るわ」

……ふむふむ。

強化魔法に加えて、いくつか武を使用した攻撃方法を登録してみる。

「あれ……?」

しかし、カードに登録されたのはイメージした刀での攻撃……ではあるものの。

「これ攻撃方向まで限定されるのかよ……」

カードには刀のマークに加え、左下に向けて斜めに矢印が描かれている。

他に格闘も技ごとの登録になっている。

「……ちなみにステータスを見てみなさい」

「もしかして……《ステータス》」

名前:神木 悠斗

別:男

種族:人間

職業:小學生

レベル:145

力:15000/15000

魔力:25000/25000

理攻撃力:10000

理防力:10000

素早さ :20000

魔法攻撃力:44000

魔法防力:25000

運 :1000

「……なるほど」

「カードを生する毎に最大魔力が減っていくわ。魔法を登録するなら、その消費魔力もね」

「と、なると最大魔力までしかカードは作れないって訳か」

ならこんな攻撃手段も方向も指定されるカードに使うのは……。

魔法や回復魔法なんかもカード化しておかないと……。まあ、俺は今はどちらも使えないけれど。

「…………」

通常ならその場に応じて魔法の選択が出來るが、この世界では相手にカードを出された時點で、あらかじめ登録しておいたカードしか使うことが出來なくなる。

つまり、カードの構が大事になってくる訳か。

攻撃ばかりで守りや回復を疎かにすれば、攻められた時に弱い。

逆に守りを固めれば攻撃の種が盡きやすい、と。

「……まあ參考までに言っておくけれど、魔法以外を登録している人は、私が知っている限りいないわ」

「だろうね……」

それでもいくつか登録しておこう。無地よりはマシだろう。

さっき試してみたら上書きは出來るみたいだし。

「ちなみにカードを出した時、自由に魔法や攻撃が出來なくなるのは対象に指定した一人だけよ。つまり、私達に対して敵が一人ならどちらかは自由に魔法も攻撃も行えるわ。もちろんカードでの戦闘もね」

「と、なると仲間が多ければ多いほど有利って訳か」

「そうね。まあ、それは通常の戦闘でもいえることだけれど……。そうよ、私にもちゃんとした仲間がいればあの時……」

「フロリア?」

急に虛ろな目で何事か呟きだしたフロリアに思わず、聲をかける。

「あ、何でもないわ……。それよりとりあえずはこんなものかしら?」

「ああ。ありがとう。またわからないところがあったら聞くよ」

「ええ。じゃあ、勇者討伐の計畫を説明するわ」

「頼む」

やっぱり先輩なだけあって、もう計畫まで立てているようだ。頼りになる。ならばそれに乗っかるのが一番だ。

コホンと一つ咳払いし、俺の視線を自分に向けさせたフロリアは、勇者討伐計畫の説明を始めた。

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