《異世界冒険EX》リザルト

「ま、とにかく終わったわけだしさ、次はどうするんだ?」

疲れたをむりやり起こし、フロリアに話しかける。

「……休むに決まってるでしょ?」

どうやらフロリアも疲れているようだ。

だけど、時間が無いはずじゃ……。

「何で?」

「私はもう魔力切れ寸前だし、あんたも殘りしでしょ?」

「……まぁ、一割ぐらいかな」

「そんな狀態で出歩くなんて自殺行為よ」

「……?」

「それにまだここですることがあるわ」

フロリアの元仲間以外は完全に消失しているし、これ以上何をすると言うのだろう。

「カードの回収よ」

「ああ……そうか」

「カードを手にれる方法について教えたわよね?」

「ああ。人を倒すか、殺すかするんだろ?」

「そう。……じゃあ、わかるわね?」

フロリアが前髪をりながら続ける。奪え、という事だろう。

「ちなみに殺しておいた方が後腐れはないし、簡単よ? 今回みたいに敵に回復魔法の使い手がいるならなおさらね」

「うーん……」

「……そんなに悩む必要は無いでしょ? あんたの世界とは違って、こっちでは人の命は軽いのよ」

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確かにそうかも知れない。

これから殺し合いになるかも知れないというのに、今回の戦いを止める奴は一人もいなかった。

この世界では、人間同士も敵なのかも知れない。

でも。

「世界とか関係ないよ。命は命だ。俺はなるべく殺さない道を選ぶよ」

なるべく、ってところが重要だ。俺も死にたくはないからね。

「……それが命取りにならないことを祈るわ」

「あはは。ありがとう」

軽く笑ってみたが、あからさまに肩を落とすフロリア。

確かにフロリアの心配は正しい。殺す事よりも倒す方が難しい。彼もそれを経験で知っているようだ。

だけど俺はなるべく負い目なく、茜の側に居たい。

「じゃ、まずはこの三人から奪うわね」

フロリアはジークのへと手をばす。

その手がジークのれた瞬間、ジークのりだし、フロリアの手がするりとっていく。

「あら? 一枚増えてるわね」

引き抜かれたフロリアの手にはカードが七枚握られていた。

……ショボくね? いや、まぁいいけど。

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「それがジークの……」

「そう。ジークの持っていた魔法よ。カード化していたものに限るけどね」

「……ジークは大丈夫なのか?」

「大丈夫、とも言えないけれど命の危険はないわ。練習すれば、奪われた魔法もまた使えるようになるかもしれないしね」

「うーん……ま、いいか」

と、人心地ついた瞬間、俺の頭に電流が走る……。

圧倒的 閃きっ…………!!

殘りは…………から抜き取る。

「フロリア…………ちょっと俺にもやらせてくれないか? 一応、練習しとかないと」

「必要ないわ。手に魔力を流しながら相手のに手を當て、そのまま進めてカードに手が當たったら引き抜く、それだけよ」

「それでもやってみないと。ほら、フロリアも魔力切れ寸前で大変だろ?」

ニコッと渾の笑顔を浮かべてみる。

元の世界でも、アイギスとの修行期間も、鏡の前で練習してきた渾の笑みだ。

仮に練度というステータスがあったなら、とうにカンストしているはずの笑顔だ。更にいうなら魔法で歯をらせれば更にグッドなはずだ。

しかし、

「……なんだか気持ちが悪いわ。あんたはあっちのを拾ってきなさい」

「え?」

ゴート達が立っていた場所に出來た大を指差すフロリア。

思わず、口の端がひきつる。

「殺してもカードは落ちるわ。つまり、あのの中にあるはずだから」

「え?」

「さっさっと行きなさい」

「で、でも……」

「#早く行きなさい__・__#」

……仕方がない。今回は諦めよう。今度、の冒険者を襲って……いや、冗談だけれど。

◆◇◆

「はぁー、まったく……」

フロリアは悠斗を追いやると、顔を両手で抑えて座り込む。

その顔はほんのりと赤みを帯びている。

(ああああああ可い! 可い! 何よあの笑顔! 可すぎでしょ! でも駄目! 私は頼れる先輩キャラなのよ! それに王でしょ! 落ち著きなさい……明鏡止水の心持ちよ。でも……何であんな好みの子を送ってくるかなぁ! これじゃあ使い潰そうと思ってたのに出來ないじゃない!)

フロリアは顔を抑えたまま、微だにしない。

が、頭の中では目まぐるしく何かを考えている。

(それに助けてくれた! 二回も! もしかして悠斗も私のこと……駄目よ! 落ち著きなさい! 私! ……でもそうならキャラを変えてラブラブ勇者討伐なんてのも……いや、でも……あ、そうだこんな時こそ……)

フロリアは顔を抑えたまま、心の中で唱える。

(<<確率計算>>)

フロリアの異能……確率計算。

異能とはアイギスの世界……つまり地球へと別の世界から転移することで與えられる能力だ。

その一番の特徴は魔力ではなく、生命力を使うという點だ。

使いすぎれば死に繋がってしまうが、魔力を消費しない為、奧の手として使うことができる。

それに加えて魔力よりも回復速度が速いため、常時発や連続発をしない限りは使いすぎるということはない。

そしてフロリアの異能である確率計算。

その能力はその名が示すとおり確率の計算を行う能力だ。

フロリアが知りたい事について、その確率を計算してくれる能力である。

例えば今回の件だ。ゴートに絡まれた時點で発し、勝利する可能を計算していた。

そして百パーセントと出た為、簡単に乗ったのだ。……作戦に必要な以上、五十パーセントでも乗っただろうが。

だが、あくまで計算の材料になるのはフロリアが知覚したものだけである。

ゴート達がフロリアの知る頃よりも、大きく長していればあっさりと負けていただろう。

その長までは知ることはできないからだ。

あくまでフロリアが意識的に、及び無意識的に、知りえたものを元に計算された確率である。

(えーと……悠斗が私にを寄せている、もしくはこれからを寄せる確率は?)

フロリアの前に座るシフォンは、座り込んだフロリアを見て、逃げるチャンスかと靜かに立ち上がろうとする。

「……はぁ?」

しかしシフォンが腰を浮かせた瞬間、フロリアが顔をあげる。

その顔はまさに般若の様だった。

慌ててシフォンは腰を落とし、これからの事を考える。

(え? ……ゼロ? そんな馬鹿な!? 自慢じゃないけれど私の顔は世間一般的に考えて整っているはずよ! 悠斗も可いとはいえ、男である以上見た目だけでも多の可能はあるはずじゃ……。おかしいわ! こんなことはありえない……そうよ……あっ、まさか……悠斗は……同者? ……そうだ、きっとそうだわ。それなら納得ね。……いいわ。今回の任務で私がの魅力に気付かせてあげる。……でも男同士、か。確か前に地球に行った時にそんな文化があったわね。確か……ボーイズラブだったかしら? 整った顔の年同士のの事だったはず。こっちの世界だとジークなんかが顔はいいわね。好みではないけれど。……つまり近なところで考えるとジーク×悠斗となるわけね。…………なるほど、ちょっとイイじゃない。ジークはもう一回仲間におうかしら? いえ、待ちなさいフロリア。今のジークは魔法も使えない雑魚……つまりヘタレって奴ね。そうなると悠斗が攻めかしら? ……それもアリだわ。小悪魔キャラってじで「あれ? ジークさんもう我慢できないんですか? こっちの方も俺の勝ちですね」……みたいなじでどうかしら? うーん……あ、そうだわ! 逆に「フロリア!」

「な、何かしら?」

的はずれな推測と思考を続けていたフロリアは、悠斗の呼びかけで我にかえる。

慌てて前髪をりながら立ち上がり、悠斗を見る。

「いや、こっちはカードの回収も終わったし、そっちはどうかなって思ったんだけど」

悠斗の視線が殘りの二人に向かう。そこには怯えているシフォンと縛られたまま倒れているレオナ。

「ちょ、ちょっと考え事をしていたわ。さっさと片付けるわね」

フロリアは慌てて殘りの二人のに手を突っ込むとカードを取り出した。

シフォンはしだけ抵抗したようだが、魔力切れではほとんど意味がなかった。

「全部で七十二枚ね。中々じゃない」

「で、どうするの? このカード達は」

「もちろんアンタの修行に使うわ」

そう言うとフロリアは悠斗にカードを手渡す。

「わかった。で、どうやって使うんだ?」

「覚えたい魔法のカードを自分の何も書かれていないカードにれさせるだけよ」

「それだけでその魔法が使えるのか?」

「うーん……カードでならね。それに使えるのはそのカードの魔法だけで、他の……例えば炎屬のファイアのカードなら他の炎屬の魔法は使えないし、ファイアもそのカードでしか使えないわ」

「……つまり、あくまで奪った魔法のカードがカードとして使えるだけで、それ以外の炎屬の魔法は使えないし、カード以外ではファイアも使えないって訳か……」

「あら? 結構理解が早いじゃない」

「まあね。アイギスからも技の覚えはいいって褒められたもんだよ。ただ忘れっぽいとも言われるけど」

「……あ、それから寫すときに魔力を使うから今の狀態で何枚もやっていると……って遅かったわね」

フロリアがドサリという音に、後ろを振り返ると悠斗が倒れている。

散らばったカードからどうやら一気に寫そうとして魔力切れになったようだ。

「……はぁ。仕方ないわね」

フロリアはそう呟き、上空へと最後の一枚のカードを使い、炎の玉を打ち上げる。

「お呼びでしょうか?」

その瞬間、空間に魔法陣が浮かび、いつの間にかフロリアの隣にはメイド服のがいる。

金髪に青い目のにはあまりメイド服は似合っていない。悠斗が起きていたならそう考えていたことだろう。

「ええ。一旦、この三人と家に戻るわ。アナタは悠斗の修行に付き合ってあげて。目標は三屬の魔法の習得と、Aランクの冒険者になる事よ」

「わかりました。お任せください」

メイド服のは頭を下げると、カードを生し、タッチする。

その瞬間、フロリアと元仲間の三人の姿が消失し、後に殘されたのは悠斗とメイド服のだけだった。

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