《世界にたった一人だけの職業》ギルドマスター。そして、話し合い。

「そ、それって本當なの?」

リリーは驚いたような顔でこちらを見る。

「ええ。間違いないです。俺たちは當事者だったのですから」

秀治はリリーに対して、淡々とけ答えをする。

「……それほど重要な案件なら、ギルドマスターにも報告しないといけないわ。二人とも、ちょっと待っててもらっていい?」

リリーはそう言いながらこの部屋をでていった。

「……なあ、秀治。このギルドって信用しても平気なのか? その……さ、國王陛下があれだったし、この國全がグルって可能も……」

蓮斗は不安な様子で秀治に尋ねる。

「…………多分大丈夫だろう。確か保安ギルドは、権力とかそういったからは獨立している場所だったと思う。……まあ、あくまで俺の推測に過ぎんが」

秀治も確信が持てないようで、難しい顔をしながら答えた。

「……。まあ、そう安易には信用できないってことか」

「……そういうことになるな。すまん。俺が調べ損ねたばっかりに」

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「いやいや、秀治は別に悪くないよ。そもそも、そんな時間はなかったんだから。……秀治、ふと気になった事があるんだけど……」

蓮斗がそう言いかけるとこの部屋のドアが開き、中に二人の人ってくる。一人は先程蓮斗達の話を聞いてくれた付嬢のリリーで、もう一人は格のいい凜々しい姿の銀髪の男だった。歳は、多分三十代くらいだろうか。俺達は、ソファーから立ち上がる。

「保安ギルドマスターのゲーゼ・ファルフレムだ。君達が今回の重要な案件を報告しに來てくれたのかな?」

保安ギルドマスターのゲーゼは確認の意味を込めてそう聞いた。

「はい。俺は、西川秀治です。そして、こちらが柏沢蓮斗です」

蓮斗は秀治に紹介をけ、軽く一禮する。

「今回の重要な案件を持ち込んだのは俺達です」

「そうか。では、もう一度詳しく聞かせてもらってもいいかな?」

ゲーゼにそう言われ、俺達は再度王宮での事件の一連の出來事を話す。

「……そうか。ふむふむ。國王陛下の黒い噂が流れていたが、まさか本當だったとは……」

「……黒い噂って何ですか?」

蓮斗は疑問に思い、ゲーゼに尋ねる。

「ああ、黒い噂って言うのは……。勇者を利用しようとしていたという噂さ」

「!?」

蓮斗はゲーゼの返した答えに驚愕を隠せない。だが、対照的に秀治は落ち著きを払っていた。

「……勇者をどのように利用しようとしていたのかまではわかりますか?」

「……殘念ながら、そこまでは」

「……そうですか」

秀治はし落膽した様子で頷く。まあ、噂さなのだから、そこまで詳しい事がわからないのは仕方ないだろう。

「……ですが、大の推測でよければ話すけど……どうかな? 今後の事も一応説明するからさ」

「「はい! お願いします」」

秀治と蓮斗は推測だけでも聞ければ十分だったので、ゲーゼの提案は二人にとってとてもありがたかった。

「わかった。では、推測も含めて今後の事を話そう」

ゲーゼは真剣な顔つきになって語りだした。

「國王陛下は恐らくだけど……この世界自を支配しようとしているのだと思う」

「!?」

二人ともゲーゼの口から予想外の言葉が飛び出て驚愕している。だが、ゲーゼは更に言葉を続けた。

「その証拠に、國王陛下は七年前に獣人族の國"シランドゥ"に攻め込む命令を下し、シランドゥを支配下に置こうとしたのさ。まあ、結局支配下には置けなかったようだけどね。そのせいでここ"ガルン"は他の國々からも敵視されるようになったんだ」

ゲーゼは苦笑いを浮かべながらそう言った。

「"シランドゥ"について、詳しく聞いても?」

秀治は、ゲーゼにそう尋ねる。ゲーゼも了承の意を込めて軽く頷き、話し始める。

「シランドゥって言うのはさっき言った通り獣人族の國だ。獣人族と言うのは獣耳や尾の生えた人間のような姿をした種族だ。シランドゥはこの世界でも第2位を誇る大國だ。國土も馬鹿にならないほど広いし、技力もガルン程ではないがそれでも高い。……その國を落とせば國王陛下もこの世界に実力を示せると思ったんだろう。だからなのかあの國王陛下はリスクも考えずにあのシランドゥに攻め込んだんだ。あいつのせいで、他の種族からは忌み嫌われた挙げ句、領土も幾つかとられたんだ……」

ゲーゼは自分でそう言いとても苦々しい顔をしていた。國王陛下を心の底から憎んでおり、その顔には憎悪のも混じっていた。

「……そうだったんですね……」

蓮斗はゲーゼの言葉をただただ頷いて聞くことしかできなかった。自分が軽々しく何かを言う場面ではないと思ったからだ。

「……ああ、ごめん。話がしそれたな。話を戻そう。今後の事だけど、俺は各保安ギルドに協力を要請して、國王陛下を探すことにする。君達にも危害が及ばないよう、配慮もしておこう。君達も油斷はだぞ。どこに潛んでるかわかったもんじゃないからな。見つけたらすぐ保安ギルドに知らせるように」

「「……はい」」

「では、私はこれで失禮する。くれぐれも無茶は起こさないように」

ゲーゼはそう言うと、この部屋の扉を開いて出ていった。

「二人ともり口まで送るわ」

リリーはそう言って、俺達を保安ギルドのり口まで送ってくれた。

「気をつけて帰ってね」

リリーの言葉に蓮斗と秀治は軽く會釈し、保安ギルドを後にするのだった。

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