《世界にたった一人だけの職業》帰途。そして、盜賊。 ー1

「ではな、蓮斗。また近いうちに會おう」

ラヴィはそう言うとし名殘惜しそうな顔をしながらもその場を目にも止まらぬスピードで立ち去っていった。

「……相変わらず規格外だな……」

蓮斗はラヴィの走り去ったスピードを見て苦笑を浮かべる。魔族とはつくづくとんでもない種族だと思う。

「俺もそろそろ帰らないとな……」

ラヴィと話しているうちにすっかり日も傾きかけていた。日本の時間で言うなら夕方といったところだろうか。いつもならもう宿へ戻っている時間帯だ。川崎も心配なのか、俺が前にし遅れて宿に戻ってきたときに、「蓮斗くん! 五分も遅れて宿に戻ってきて……!   本當に心配したんだからね!」何て事を言われた。今回もまた言われるんだろうなぁ……。蓮斗はそんなことを思いながらも急いで宿へ向かおうとした、その時。

「イヤアアァァァァァァァ!!」

遠くの方から何やら悲鳴が響いてきた。蓮斗は一瞬スルーしようかとも思ったが、後々後悔するのもご免なので仕方なく悲鳴のした方へ向かった。はぁ……。今日は前途多難だよ……。

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「ひ……!? いや……!!」

一人のけないような聲を出し、小さく悲鳴を上げる。

「まあまあ、嬢ちゃん。そう怖がってくれるなよ。俺らがたっぷり可がってやるからよ……!」

一人のにそう言ったのは「ザティック盜賊団」の一人の男。軀は端的に言えばデブ。顔も豚みたいな顔をしたやつだ。その癖に、きが何かと素早いのだ。

「いや……! 來ないで!!」

はそうぶが、男はそれに構わず一歩ずつ地面にへたれこんでいるに近づく。一歩、そして、もう一歩。近づいてくる度にの顔が絶に染まっていく。

…………誰でもいいから、誰でもいいから……! 助けて……!

「手を合わせたって誰も來ねえよ? 嬢ちゃん」

ついに眼前まで來たデブの男。の目から完全にが失われる。その男の鼻息は荒く……とても興しているようだった。

ーーああ。ここであたしも終わりか……。こいつらにメチャクチャにされてーー

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気づけばの目からは一粒の涙がこぼれ落ちていた。

ーーの乗っていた馬車は、先程「ザティック盜賊団」の襲撃をけた。その馬車は所謂武等を運ぶ貨馬車で、貴重品ほどのは載せてはいなかったが、そこそこ価値のあるは載せていた。ソリューカの森の手前までは何事もなく進んでいたのだが、ソリューカの森にって數分後。森の茂みの奧から、6人の男が馬車の前に立ち塞がるように現れた。馬車の護衛についていた人々は、警戒心をに武を構える。騎士は鞘から剣を抜き自分の正面に剣を構え、魔師は杖を前に突き出すように構えた。

「……お前らの馬車にあるもん全て寄越せ」

警戒制にっている騎士や魔師に向かって傲慢に言い放ったのは、リーダー格とおぼしきデブの男。豚のような顔をした奴だ。そいつの言い放った一言がその場の空気を更にピリピリさせる。その男は武も何も持っていなかった。

「……なめられたものだな」

護衛のの一人の男がそう言い放つ。今のを挑発だと捉えたのだろうか。その護衛の顔には僅かばかり嘲笑が浮かんでいた。

「……なめてるのはどっちだろう、な!」

そう言いながらデブの男はその護衛に向かって一直線に駆け出していく。

「な……! はやっ……!」

護衛の男はそう言いながら咄嗟に剣で盜賊の男の初撃をけ流す。何とかけ流せたことで安心していた護衛だったが……そこが命取りとなった。

「がっ……!?」

突如として首に衝撃をじる護衛の男。次の瞬間、頸脈からが吹き出る。護衛の男は悲鳴をあげることもできず、その場に倒れ込んでしまった。

「キャーーーー!? フェリルが……! フェリルが…………!!」

護衛の男ーーもとい、フェリルが倒れたことに魔師のが悲鳴をあげる。彼、シフォンもフェリルのパーティーメンバーの一人だ。他にも拳闘師の男、ジオルやアーチャーの、ルルがおりフェリルがリーダーで四人パーティーを組んでいた。今日は貨馬車の護衛の依頼をけ、この馬車の護衛をしていたのだ。この四人パーティー「スペリア」はそこそこ有名なパーティーで、ガルンでも將來が有なパーティーとして、そこそこ名の馳せたパーティーだったのだ。その実態は自分達がモンスターを倒すのではなく、金と適當な理由をつけて傭兵とかを雇い、その人に倒させて自分達は素材だけを剝ぎ取り、ギルドに提出すると言うずさんなものだったのだが、今までひた隠しにしてきた。

今日も傭兵を雇うつもりでいたのだが、生憎空いてる傭兵がいなく、「まあ、俺達ならなんとかなるだろ!」というじで、そのまま護衛の依頼をけてしてしまったのだ。その結果がこれなのかもしれない。目の前にいる盜賊だって、いわば何の変哲もない只の盜賊なのだ。その盜賊のスピードについていけないほど「スペリア」のパーティーメンバーは弱かった。

「い、いやよ……! 私は死にたくない……!」

シフォンはそう言いながら何かぶつぶつと唱え始める。やがて、シフォンの足元を中心に白い魔法陣が広がっていく。その魔法陣はを放ち、シフォンを包み込まんとしたーーその時。

「ーー行かせると思うか?」

その聲にギョッとしたシフォンが後ろを向こうとしたーーが、その前にザシュッというような切られる音がした。後ろにはやはりデブの男がおり、的確に頸脈を切っていた。やはり、先程のフェリル同様頸脈からが吹き出ており、悲鳴をあげる間も無く地面に倒れ伏した。

「おい、お前ら。お前らもぼさっとしてねえで護衛を始末しろ!」

背後に控えていた盜賊達は、護衛の弱さに驚きながらも返事をし、次々と襲いかかる。當然、「スペリア」のメンバー達は為すもなく次々に切られていく。一分も経たないに「スペリア」のメンバーは全滅してしまった。

「さあてっと……。この馬車を調べてみるとするか……」

デブの男はそう言いながら、三日月ような裂けた不気味な笑みを浮かべる。デブの男が馬車のり口にるとそこにはーーーと二人の質素な服裝の男がいた。二人の男はそのを庇うようにしながらデブの男を睨み付ける。その後ろにいるは恐怖に満ちたような顔をしており、をブルブルと震わせていた。

「……今日の獲・・は大當たりだな!」

デブの男はそう言いながら舌なめずりをして……嗤っていた。そのデブの男が言葉を発したし後に、他の盜賊達もゾロゾロと狹い馬車にり、三人を取り囲むように陣を組む。

「おい、ヴァン。あのを捕らえろ。勿論あの男二人は殺しておけ。の方は……いつも通り、楽しんだ後に奴隷・・として売っぱらう」

そう。こいつら、盜賊とは言っても主に奴隷・・を連れていく盜賊なのだ。盜賊にも々と種類がいて、品系を盜む盜賊、そして、今のこいつらのような奴隷を拐ってくる盜賊と大大まかに分けて二種類いるのだ。

「了解」

ヴァンと呼ばれたデブの男の隣にいた、小太りの男は即座に返事をすると、ゆっくりと三人の方へ近づいていく。を庇うように立っている二人の男はガクガクと膝が震え、中を冷や汗が伝うがヴァンをキッと睨み付けていた。

「……貴様らには悪いがここで死んでもらう」

「……そう簡単に終わってたまるかよ!」

そう言いながら二人の男の、若い方がいつの間にか手に握っていた短剣でヴァンを

攻撃する。若い男の振るった短剣は中々に鋭い攻撃となったがーーいかんせん力任せに振ったせいで単調なものになってしまう。案の定ヴァンはその攻撃をし橫にずれて易々とかわす。

「がはっ……!?」

若い男は次の瞬間、ヴァンのナイフの攻撃で腹部を深く抉られてしまう。

「がああぁぁぁぁぁ!!」

若い男はあまりの激痛に顔を歪め、悲鳴をあげながらその場に蹲うずくまってしまう。それが命取りとなった。

ザシュッ

若い男が蹲っている隙にヴァンはもう一度腹部を力強くナイフで貫く。若い男はそのままだらだらとを流し、意識を無くしたように馬車の床に倒れ伏した。

「にいに……? にいにぃぃぃぃぃ!!」

は若い男ーー兄のリュークが倒れた瞬間、悲痛な聲で泣きぶ。だが、不幸はこれだけでは終わらない。

「ぐっ!?」

もう一人の男、の父親ガルフの方にもヴァンのナイフが突き刺さっていた。ガルフは、悲鳴をあげることすら葉わずそのまま馬車の床に倒れる。

「お父さん……? お父さん……!? イヤアアァァァァァァァ!!」

ーールミエールの悲鳴は馬車を突き抜け、森中に木霊した。

今回は自分でも書いててモヤモヤするような展開になってしまいました……。何とかハッピーエンド的な展開に持っていけるよう、頑張る所存です!! 後、行間をし開けてみましたが……。どうだったでしょうか? よろしければ意見の方もよろしくお願いします!

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