聡は召喚されてから、來る日も來る日も朝起きたら朝飯食って毆り、晝飯食ってから勉強、夕飯後にまたタコ毆りにしてから就寢という、機械的な生活を繰り返していた。

 そうして実に約300年後、遂にその時は訪れた。

｢…殘りのHPは？｣

剣を手にした聡が、靜かに問う。

｢…5だ。｣

それに対して、トイフェルは慨深そうな聲で、同じく靜かに答える。

｢そうか。長いようで、短か…くはなかったな。｣

｢ははは。そうだな。長く生きてきた余にとっても、濃い300年だったぞ。｣

両者共に長い時間をじさせる、貫祿が出た喋り方だった。

｢世話になったな。｣

｢改めて禮を言おう。｣

予期せず、2人同時に謝の言葉を口にする。

｢｢はははは！最後の最後まで締まらないな！｣｣

大笑いする2人。

｢さらばだ、友よ。｣

｢あぁ、転生でもして、また會いに來い。｣

ニヤリと笑い合う。そうして次の瞬間、聡は素早く5回、トイフェルを切り付ける。

 そして力盡きたように、足元に剣を落とす。

｢…これで、0だな。｣

｢サトシ、楽しかったぞ。｣

するといきなり周囲の建が吹き飛び、外の風景が荒野へと変わる。トイフェルのMPで、建自に結界が張られていたため、死んだ事により効果が切れたのだろう。

｢…。｣

 そんな周囲の変化に驚きもせず、トイフェルの最後の言葉を聞き屆けた聡だが、中々消えないため、無言で首を傾げる。

 そんな聡に、トイフェルは今日1番の笑みで、とんでもない事を言う。

｢的には、『転生でもして、また會いに來い』って、カッコつけて言ったのに、何故か余が中々死なないから、怪訝な表をしているのを見ているのがな。｣

｢はぁ!?ここに來て長ゼリフ!?HP0じゃないのか!?｣

｢いや、余の稱號『変態』の効果で、HPが0になっても、數十秒間存在出來るんだ。｣

｢な、なんだそのチートな効果は!?｣

驚く聡を目に、トイフェルは満足気な高笑いをする。

｢クハハ！余は満足だ！これで何の心殘りもなく、逝けるというものだ！｣

1人高笑いするトイフェルに、聡はキレ気味な様子で暴言を吐く。

｢うるせぇ！このクソ変態魔王が！さっさと死にやがれ！｣

｢最後の最後までドSだな！｣

明らかにこれから死にゆく友人に対して言うセリフではないため、トイフェルは顔をニヤケさせながら言う。

｢そういうのは良いから、さっさと去ねや！もうHPは0なんだろ!?｣

自然の摂理に従えという、己の思いをぶつけ、ぶ聡。

｢うへへへへ。これは手厳しいな！…では、さらばだ！｣

 ニヤけた面から一変、荘厳さをじる面持ちで別れの言葉を告げるトイフェルだが、最後には臺無しな緩んだ表で消えゆく。

 どうやら魔王という種族は特異らしく、死後にが一切殘らないという特徴があるらしい。

 の粒子となり、消えていく。

｢逝ったか…。はぁ〜！くっそ長かった〜！漸く終わったか〜！さっさと地上したに降りて、味い飯食って、酒でも飲むか！｣

 そうびながら、聡は地面に仰向けに寢転ぶ。ここ300年ほどで、スキル『不老不死』の超回復を、一定程度ならコントロール出來るようになった聡は、今はじる疲労にを任せ、そのまま意識を睡魔へと委ねるのだった。

｢…夜か。｣

 數時間後、目を覚ました聡の視界にってきたのは、久しぶりに見る一面の星空であった。

｢さて、どうしたものかな？｣

 ゲームならば、『死の荒野』とでも名付けられそうな、何も無い周囲の景を見回しながら呟く。

 蟲の聲すら聞こえない、そんな靜かな様子に、聡は不安をじ、つい考えを一々聲に出しながら行する。

｢えっと確か、トイフェルが言うには、奴のアイテムボックスは、倒した者に自で所有権が移転するとか何とか。騒だな…。

 それは兎も角、そういえば、アイテムボックスとは言っても本は見た事ないな。｣

 聡は自分ののあちこちを、ぺたぺたとりながら見回す。だが見つからないので、頭を悩ませてしまう。

｢しくった…。アイテムボックスの中については、大分聞いたけど、本について聞くの忘れたな。

 なら仕方が無い。適當にやってみっか。…アイテムボックスオープン！え？うわぁ!?なんじゃこりゃあ!?｣

 適當にんだ聡の脳裏に、大量の文字列が並ぶ。いきなりの事に、聡は思わず戸ってしまう。

だが落ち著いて、その文字列に意識を集中させると、アイテムボックスのリストである事が理解出來た。

｢…これはこれは。便利じゃん。ほほぅ。1番上の段には、武類って書いてあるな。んで、橫にはカーソルか。で、確定って考えると…うん、更に詳細が出ると。これ絶対、作ったやつ地球の人間だろ！｣

 仕様を確かめていると、明らかにゲームやパソコンみたいな印象をけた。

 この世界には、自分の他に地球から來た奴が居るかもしれないと、頭の片隅に置いておく聡であった。