《外れスキルのおで最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜》第38話 旅立ち

「はい。これをけ取って貰えるかな?」

 付與魔法をかけ終わったネックレスをイルマに差し出す。

「え?これを私に?」

 すると、目をぱちくりさせながら、イルマは驚いている。

「うん。取り敢えず、自分が持ってる中で、イルマに似合ってると思うを選んだんだけど、どうかな?」

  ポリポリと頬をかく聡。

「あ、ありがとうございます!」

 聡からネックレスをけ取り、満面の笑みを浮かべるイルマ。どうやらお気に召したようである。

 イルマはご機嫌な様子で、早速ネックレスをつける。

「良かった。とても似合ってるよ。」

  実際につけてもらい、想像通りイルマのイメージにあったネックレスが作できたと安堵の笑みを浮かべる聡。

「お、イルマ、サトシ。もう起きたのか。」

 そこに、マリウスがやって來る。

「…一番飲んでるのに、何でこんなに早起きなんです?」

 聡の記憶が確かなら、マリウスは樽で一気飲みを、十數回は行っていたはずだ。いくらアルコール度數が低いとはいえ、そんな事をすれば、常人なら余裕でお陀仏である。

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 にも関わらず、余裕な表で、二日酔いした様子もなく、元気なマリウスに、聡は苦笑いを浮かべる。

「ははは。昔ほど強くはないが、あの程度じゃあ、二日酔いにはならないぞ?」

「あれで全盛期じゃないんですか…。」

「まぁな。…それよりもサトシ。」

「何でしょう?」

「もう行くのか?」

「えぇ、行こうと思います。」

「サトシさん…。」

 しんみりとした空気が、3人の間に流れる。

「まぁ、これが今生の別れって訳でもないんですし、そんな顔しないで下さいよ。」

「そ、そうだな。」

「そうですね。…私の場合、『お願い事』をきいて貰わなくちゃいけないからね。」

 イルマは頷いたあと、例の川辺で約束した事を思い起こして、小さな聲で呟く。

 イルマの呟きは、2人の耳にはらなかったようで、気にした素振りもない。

「さて、確か道屋の人が、旅の道をマリウスさんの家に屆けてくれてましたよね?」

「あぁ、そうだ。まぁ、そろそろサトシが出るだろうと思って、こっちに持ってきたんだがな。ほれっ。」

「うおっと。…あ、ありがとうございます。」

 いつの間にかマリウスの足元にあった、大きな皮袋を、聡にむかって投げてくるのを、慌ててけ止める。

「食料は、1週間分の保存食がってる。それと、地図、簡易テントと寢袋、そして水筒とナイフがセットになってるぞ。」

「はい、分かりました。お代はどうしますか?現金は…これ、使えます?」

 ポケットから取り出すフリをしながら、アイテムボックスから金貨、銀貨、銅貨をそれぞれ1枚ずつ手のひらに乗せて見せる。

 この貨幣は、トイフェルが結界に閉じこもるよりもさらに數百年前から変わらず使われてるものである。銅貨1枚で、パンが1個買えるので、大100円くらいである。

 銅貨10枚で銀貨、銀貨10枚で金貨、金貨10枚で大金貨、さらにその上に、大金貨10枚で聖貨になる。

 それを、聡は大量に持っているのだが、使える可能が高いと考えてはいたが、今まで確認が取れなかったので、不安そうな表でマリウスに見せる。

「もちろん使えるぞ?」

「お、マジですか!では「だがいらん。」え?」

 大量の貨幣が使いになると判明し、にこやかな笑みを浮かべ、聡は皮袋の中の代金を支払おうとするが、言葉の途中でマリウスが遮ってしまう。

「サトシは、我々にとって、救世主みたいなものだ。その恩は、俺の生涯を全て費やしても返しきれるものでは無い。だから、けた恩からすると些細なだが、恩返しがしたいんだ。だから、それの代金は、俺に払わせてくれ。」

「お父さん…。」

 頭を深く下げながら、マリウスは真剣な聲で言う。そんなマリウスを、イルマはビックリした様子で見つめている。

 普段は大雑把なマリウスが、ここまで真面目なのに驚いているのだ。それだけ、聡に恩義をじているという事だ。

「…そうですか。では、お言葉に甘えさせていただきます。」

 マリウスの真剣な態度に、聡は何を言っても代金をけ取っては貰えないと思ったため、素直にその好意をけ取る事にした。

「では、お世話になりました。また來ますので、その際は歓迎してくれると嬉しいです。」

「おう、もちろん歓迎するぞ!」

「はい、またいつでも來て下さい。」

「あ、イルマ。ちょっと伝え忘れた事が。」

 皮袋を擔いだ聡は、伝え忘れてしまった事があるのを思い出したため、イルマを手招きする。

「はい、なんですか?」

「何か俺の力を借りたいとか、來てしいとか思ったら、そのネックレスを握って願ってくれ。必ず君の元へ行くから。」

「う、うん。分かった。」

 唐突にそんな事を言われ、戸うイルマだが、聡の事だから何か考えがあるのだろうと、取り敢えず頷いておく。

「うん、じゃあ、またいつか。近いうちに。」

「は、はい!」

 頭をぽんぽんとでて、笑顔で別れの言葉を告げる聡に、顔を赤くしながら、それでも元気良く返事をするイルマ。

「じゃあ、マリウスさん!またお會いしましょう!」

「おう!気を付けてな!」

 「はい!」

 意気揚々と村を出る聡。その背後では、マリウスとイルマが、聡の姿が見なくなるまで、見送っていた。

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