《外れスキルのおで最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜》第54話 ゴブリンの巣にて

「グガァァァァァア!!」

 どでかいゴブリンの咆哮に合わせて、大量のゴブリンが取り囲むようにして現れる。

「あ、ぁぁ…。」

 その景に、から、絶したかのような聲がれる。

「ん?お前、ゴブリンキングか!」

 対して聡は、若干驚きはしたものの、お気楽な表で、どでかいゴブリンの正に辿り著いた。

 ゴブリンキングとは、文字通りゴブリン達の長であり、大きめな巣には大抵居るとされている。ゴブリン達のランクがEなのに対して、ゴブリンキングは単でBランクであり、並の冒険者では逃げるのでさえ難しい魔である。

 更に、群れを率いているとなると、Aランクにも匹敵すると言われており、今のこの狀況は、普通の人間にとっては、諦めるしかない狀態だった。

「はっ!図ばっかり立派ななりしやがって。こんな子を襲う様なクズには、『キング』何ていう名前は、ちっとばかし勿無いんじゃないかなぁ!?」

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 左手でをしっかりと固定しながら、聡は猛スピードでゴブリンキングへと駆け寄ると、首筋に向かって手刀を放つ。

「グゲェ!?」

 すると、聡を見失ったゴブリンキングが周囲を見渡そうと、かした途端、その首が綺麗にから落ちる。

「…。」

 そして、無言のまま『ズシン』と音を立てて、崩れ落ちるゴブリンキングの

『…。』

 あまりの早業に、周囲のゴブリン共は、何が起こったのか、全然理解出來ておらず、ただその場に立ち盡くしていた。

「さ〜て、お前ら。覚悟は出來てるんだろうな?」

 を地面に下ろしながら、ゴブリン達に問う。

『グゲェ!?』

 聡の放つオーラに圧倒され、驚愕の聲をあげて後ずさるゴブリン達。

「ま、覚悟出來てなくても…お前達は死ぬんだがな。」

 聡の姿が掻き消える。そしてその5秒後には、この場に居た全てのゴブリンは、言わぬ塊へとり果てたのだった。

「…やり過ぎたか?」

 山となって積まれている、ゴブリン達の死を見上げ、聡はバツが悪そうに呟く。取り敢えず、全てアイテムボックスにしまい込み、綺麗になった森の中をぼーっと見ながら考える。

 元々、生態系全という、長い目で見れば、ゴブリンもそれを構する存在の1つである。その為、獲は避けたいところだったが、が襲われている景を目の當たりにし、ついが抑えきれずに、皆殺しにしてしまった。

 恐らく、300年前の聡でも、同じように行し、考え、ゴブリンキング達に立ち向かっただろうが、今はそれらを獲できるだけの実力を持ち合わせている。

 だからこそ、後先考えずにの赴くまま、皆殺しにしてしまった事を悔いているのだ。『その気になれば、國だろうと、種族だろうと、簡単に滅ぼす事が出來る自分は、もっと理的でないといけない』と。

「やっちまったもんは仕方が無いか…。取り敢えずは、あの子をどうするか、だが…。」

 に目を向けると、半の狀態で気を失っているようで、先程下ろして橫たえたままいていなかった。

「はぁ…。ルドルフさんやエーリカさんに頼めば、何とかしてくれるかね?」

「ん、んん…。」

 聡が思案していると、が苦しそうな息をらしながら、目を薄らと開ける。

「ん?目が覚めましたか?」

 聡は呑気に聲をかける。

「い、いやぁぁ!!ゴブリンが!!」

「え、ちょ、落ち著いてって!」

 頭を掻きむしりながら、半狂で騒ぎ出すに、慌てて駆け寄った聡はそのをしっかりと抱き締めて、自傷しないように腕も押さえ付ける。

「や、止めてぇ!!離して!!」

「ゴブリン共は倒したから安心してくれ!」

 何度もそう言い聞かせてみるが、中々暴れるのを止めない

 そんなこんなで、漸くが落ち著きを取り戻したのは、それから20分後の事であった。

「もう大丈夫ですからね?あいつらは、全部倒しちゃいましたから。」

「…ぁ、ありが、とう…。」

 すっかり疲労困憊してしまったのか、はぐったりとしている。しかし、聡のに顔を填めながら、か細い聲でお禮を言ってくれる。

「どういたしまして。…さ、街に帰りましょうか?」

「う、うん…。」

「と、その前に…。はい、布をに巻いて下さいね。このまま街にはれませんから。」

「…。」

 自の格好を恥じたのか、無言で布を纏う

「じゃあ前に抱えますから、首にしっかり摑まってて下さいね。」

「分かりました…。」

 長140センチくらいだろうか。を橫抱きにして、持ち上げると、戦闘の際もじが、とても軽いように思える。

 日本に居た頃なら、30分くらいで音を上げてしまいそうなぐらいには、重はありそうだが、今の聡とっては羽みたいな軽さとなっている。

 そんな事を考えながら、がぎゅっとしがみついたのを確認した聡は、聲をかけてから走り出す。

「じゃあ、走りますね〜。」

 を抱えつつ、聡は魔法を使って、本來の目的のルング草を採取していく。

「【魔法創造マジッククリエイト、念力サイコキネシス】。」

 すると、辺りに生えていたルング草が、ひとりでに抜けたと思ったら、勝手に採取袋にどんどん放り込まれていき、およそ50本ぐらい集められた頃に、森から抜ける。

「取り敢えず、森から抜けたので、あとは真っ直ぐ街を目指すだけです。可能な限り急ぎますので、頑張ってくださいね。」

「は、はい…。」

 あの深い森からあっという間に出ただけでなく、薬草が勝手に袋に放り込まれていく様子に、は驚きの表を浮かべながら、返事をする。

 こうして、聡の初クエストは、帰りに同行人が増えるという、奇妙な結果になりはしたものの、一応は功という形に収まったのだった。

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