《外れスキルのおで最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜》第56話 突撃!貴族様の屋敷!(ちゃんと招待されてます)

「あれ?そういえば、両手足の拘束はどうしたんですか?」

 牢屋から出ようとした所、ふと、聡が本來なら著けられている筈の、拘束を著けていない事に気が付いたヴィリーが、不思議そうに問うてくる。

「あぁ、それなら千切りました・・・・・・。」

「はい?」

「あ、殘骸はこれです。」

 笑いながら、ヴィリーにねじ切られた鉄で出來た拘束を手渡す。

「こ、この拘束は、魔法を封じる効果がある筈なんですけど、どうやって壊したんですか?」

「窮屈だったんで、ちょっと力を込めたら、罅がったので、そのまま腕をそれぞれ反対方向にこう回して…。」

「千切ったんですか…。」

「えぇ。序に、足も窮屈だったので、ちょっと力を込めて…。」

「破壊したんですね…。」

 遠い目で、呟くヴィリー。どうも、反応があまり宜しくない。

 聡の予想だと、苦笑い程度で済ませてくれると思っていたが、今のヴィリーは、驚愕が9割を占めていて、殘りの1割に呆れが含まれているような聲音だった。

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「と、兎も角、上で皆さんがお待ちですので、早く行きましょうか…。」

「は、はい…。」

 微妙な空気の中、聡とヴィリーは並んで地上へと出る。

 ギギギッと軋む音をたてながら、ヴィリーが外へと通ずるドアを開けると、夜風が中にって來て、聡の頬をでた。

「おぉ。シャバの空気は味しいですね。」

 外の空気を肺いっぱいに吸い込み、呟く聡。あの牢屋が地下だったためか、空気が澱んでいて、正直息が詰まりそうだったのだ。

「では、こちらの馬車にお乗り下さい。」

 ヴィリーの指し示した方向には、二匹の馬が繋げられた、見るからに立派な馬車が止まっていた。

 取り敢えず、大人しく馬車に乗り込んだ聡は、後から乗ってきたヴィリーに聞く。

「上って、ここの事じゃなくて、代様がいらっしゃる屋敷の事ですか。」

「あ、はい、そうです。言葉足らずでしたね。これから、コルネリウス様の屋敷へと向かいます。者さん、お願いします。」

 席に座ったヴィリーは、馬車の中から聲をかける。すると、ガタガタと音を立てながら、馬車が出立する。

「おぉ…。」

「どうしたんですか?」

 嘆の聲をらした聡に、ヴィリーが問う。

「私は平民なので、馬車に乗ったのは、これが初めてなんですよ。だから、こんなじなんだなぁと思ったんです。」

 現代日本で、一どんな暮らしをしていれば、馬車に乗れるのか、非常に気になるが、なくとも聡は乗った事が無いので、初めての馬車にし興を覚える。

「え、そうなんですか?てっきりサトシ様の正は、どこかの貴族様か、若しくは仕えていた者かの2択だと思っていました。」

「まさか。私は生粋の一般市民ですよ。」

 冗談めかして言う聡。だが、ヴィリーは驚愕の表を浮かべて、固まってしまう。

「…え。」

「いや、そこは笑うところでは?」

「す、すみません。サトシ様が、驚くような事を言ったので、つい反応出來ませんでした。ゴブリンキングと、ゴブリンの群れを、人を守りながら殲滅できる人は、一般市民とは言いませんよ。それに、あの拘束は、普通の人には破壊出來ませんし。」

「あははは…。」

 それを言われてしまっては、誤魔化し笑いするしか無い聡。

 そのまま揺られる事數分。馬車の速度が落ちたかと思ったら、直ぐにゆっくりと停車する。

「さて、著きました。中は広いので、私が先導します。サトシ様には、そのまま著いてきていただければ。」

「分かりました。」

 若干、方向音癡のきらいがある聡は、絶対にヴィリーを見失うもんかと頷いて、しっかりとその後を著いて、馬車から降りる。

 すると、目の前に、大きな屋敷がそびえ立っていた。どうやら、敷地って、屋敷の玄関の橫に直接つけた様だ。

「うわ、大きいですね。」

ー地方の図書館より、若干大きいような…。どんだけ金をかけてるんだ?ー

 兎に角どでかい屋敷に、聡は気圧されながらも、ヴィリーの後を著いて行く。

 ヴィリーが、重厚な木で出來たドアをノックすると、側から開きのドアが開かれていく。

 そして、中には、

『ようこそおいでくださいました、サトシ様。』

 ズラ〜っと左右に綺麗に並んで出迎えてくれた、メイドたちが居た。

「…は?」

「さぁ、行きましょう。」

 ヴィリーにとっては、當たり前の景なのだろうか?びっくりして固まっている聡には気付かずに、中にスタスタとって行ってしまう。

「え、ちょ…。あ、どうも。」

 それを慌てて追いかけようとするが、メイドたちを無視して突っ切るのも気が引けたので、何となくぺこりと軽く會釈してから、小走りでヴィリーの元へと寄っていく。

 中は赤い絨毯が敷き詰められており、歩いていても、フカフカで床のさが全然じられない程であった。

 この世界では、勿論住居の中は土足が基本だというのに、寢っ転がっても問題無さそうなほど、この絨毯は何処も彼処も綺麗に掃除が行き屆いていた。

 中にってからはあまり會話は無く、黙々と進んで行くヴィリー。

 そして、結構り組んだ屋敷を、だいぶ歩いたところで、1つの扉の前で立ち止まる。

「こちらに、コルネリウス様、ギルドマスターをはじめとする、他の方々もいらっしゃいます。」

「そうですか。作法とかって、どうしましょうか?こことは違う文化圏での、最低限のマナーしか守れませんが…。」

「今回は、コルネリウス様が、恩人に対する禮を失していたという事から、サトシ様をお呼びになられましたので、最低限口調や態度を気を付けていただければ、問題無いです。」

「なるほど、分かりました。」

「では、りましょうか。」

 扉を『コンコンコン』と叩いてから、し聲を張って、向こう側に呼びかける。

「お待たせ致しました。サトシ様をお連れしましたので、中に通してもよろしいでしょうか?」

『うむ。れて差し上げろ。』

「畏まりました。」

 1拍空けてから、ヴィリーはドアを開ける。

 その様子を、聡は後ろから張した面持ちで眺める。

ー代か…。アノマリーみたいな奴じゃなければ良いけど…。ー

 権力者への第一印象が悪過ぎた聡は、不安をじたまま、扉の向こうへと、1歩足を踏みれるのだった。

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