｢さ、サトシ様･。兵達が取り押さえた際、一切の抵抗をしなかった事に、深く謝致します。出來れば、あの場で指示を出していた、娘の護衛隊長の首だけで納めてはいただけないでしょうか？｣

 絶句から復活したコルネリウスは、その第一聲からとんでもない事を言い出す。しかも、深々と頭を下げてだ。

｢ちょ、コルネリウス様!?そんな事されても困ります！｣

當の聡は、コルネリウスのとんでもない発言に、思わず大聲を出してしまう。

 すると、何を勘違いしたのか、コルネリウスは顔を青くして、し震えながら言う。

｢で、では、私の首｢首は要りません!!謝罪のみで結構ですから!!｣…わ、分かりました。直ぐに呼びます。おい、ディルクを連れて來てくれ！｣

『畏まりました。』

 肩をがっしりと摑みながら、全力で言い聞かせるつもりで、コルネリウスの目を見て言う。

 その必死さが通じたのか、何とか納得してくれたのか、コルネリウスは扉の外に向けて呼びかけると、外に居た （恐らくメイド）が返事をして、そのまま気配を消す。

｢それと、本來なら娘も今すぐここに來させて、謝罪をさせるべきなのだろうが、本當に申し訳ない。｣

｢い、いえ。まぁ一応、様子を見たいので、後日に元気な姿･･･････を見せていただければ、それで大丈夫です。｣

 最初から謝罪しようという気持ちは伝わってきてたのだが、先程から異様なまでに、聡にへりくだってきているため、このままだとニコラをベッドから引っ張り出して來かねないと思い、手を打つ事にする。

｢…元気な姿、ですか。分かりました。ありがとうございます。｣

 聡の言葉から、一瞬で意図を汲み取ってくれたコルネリウスは、ぎこちないが、笑顔を浮かべながらお禮を言ってくる。

｢はい!?…そ、そうしていただければ幸いです。｣

 朗らかに笑いながら、言葉を返そうとした聡だったが、その途中で、遂にエーリカの肩と腕がれてきて、思わず変な聲を出してしまう。

｢サトシ殿？｣

 その聲を不思議に思ったコルネリウスが訝しげな表をするが、聡は無表をり付け、平坦な聲で言う。

｢何でもありません。｣

｢し、しかし今。｣

｢何でもありません。｣

 もう一度、同じ事を言う。

｢そ、そうか。｣

 コルネリウスは、チラリとエーリカに視線を向けるも、何かを察したかのように、大人しく引き下がる。

 聡とエーリカの対面に腰掛ける、ルドガーとルドルフ兄弟は、驚きの表で固まっている。まるで、有り得ないものを見たかのような表である。

ｰな、何故エーリカさんはこんな事を!?マジで、が考える事が分からねぇ!!ｰ

 聡は大混の真っ最中である。

ｰち、近過ぎるって！てか、腕らか！そして、謎のいい匂いが!!ｰ

 300年を超える時を生きた生（？）とは思えないほどの、慌てぶりである。それもそのはず。殘念な事に、聡の経験は、21歳の青年並みのものであるからだ。…まぁ、=年齢なのだが。

｢サトシさん。｣

 カチカチに張してる聡に、エーリカが聲をかける。聡が視線を向けると、長差のせいで、上目遣いになっているエーリカと近距離で目があってしまい、更に張してしまう。

｢な、何ですか？｣

｢…ちょっと話したい事があるんだけど、その前に、その敬語を止めてもらえるかしら？何だか距離をじるから。｣

｢え？…まぁ、エーリカさんがそう言うなら、素で話すよ。｣

｢…むぅ。｣

｢な、何？｣

｢そのさん付けも止めない？｣

｢…分かったよ、エーリカ。それなら、エーリカも、俺の事をさん付けするの止めない？不平等だぞ？｣

 しの間、躊躇するも、思い切って呼び捨てにしてみる。しドキドキするが、表には出さないように気を付ける。

｢うん！分かったわ、サトシ。｣

 すると、エーリカは何ら気恥しさなどじていないかのように、あっさりと呼び捨てを実行してきて、聡はし驚きをじる。

ｰあれ？掌で転がされたか？ま、喜んでる様だし、別に良いか…。ｰ

｢じゃあ、本題だけど、サトシは明日、時間ある？｣

｢特に予定はありま…無いよ。何か用？｣

 あまり考えずに言葉を返したため、つい敬語になりそうになるが、エーリカの視線をじて、慌てて口調を崩す。

｢うん。ちょっと1日、私に付き合ってしいの。｣

｢…エーリカに？か、買いの、荷持ちか何か？｣

 思わぬおいに、聡の心拍數はし上がってしまう。悲しいかな、綺麗なにわれれば、ドキドキしてしまうのは男のサガである。

｢…うん、まぁそんなところかな？｣

 聡の質問に、若干言葉を濁すエーリカ。何故かし恥ずかしそうである。

｢う〜ん。晝前はしやりたい事があるから、午後からでも大丈夫？｣

 し思案しながら、答える。

 今日の戦闘を思い起こす聡。とてもじゃないが、人に見せられるような景では無かった。 

 素手で、しかも、ごく短時間であの景を引き起こせる人間になど、なくとも聡は、お近付きにはなりたくないと思う。

 かといって、急時にあれ以上の手加減は難しいし、武を使えば、更に有り得ない景を引き起こすので、早急に何かの対策を打つ必要があると、真剣に悩む聡であった。