《外れスキルのおで最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜》第107話 鏖殺(6)

「【ディスアピアー】!」

「!」

 意を決して放たれた、『鏖殺』の魔法は、正確に聡のを半分だけ消し去る。

「…や、やったか!?このクソ野郎め!」

 奇怪な攻撃をされ、聡に恐れをじてしまっていた『鏖殺』。それを恥と思い、その相手方である聡に対して、ふつふつと怒りが湧いてくる。

 だが殘念ながら、彼が相対しているのは、本の化けなのだ。を消し飛ばしたぐらいで死ねるなら、300年など生きていない。

「そりゃあ、フラグですよ?にしても、これが【ディスアピアー】ですか。あまり大した効果は無さそうです。」

 の海に倒れ伏した聡は、次の瞬間には直ぐに何事も無かったかのように、呑気な事を言いながら、すくりと立ち上がる。

「…は?何で貴様は立って…?いや、何で消し飛ばした筈のが、元に戻っている!?」

 半を消した筈なのに、五満足で、しかも一緒に消した服も元通りに立っている聡に、『鏖殺』は混してしまう。まるで幻覚でも見せられてるかのような気分だ。

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「何ででしょうねぇ?それよりも、【ディスアピアー】って、スキルとかは消せたりするの?」

「【ディスア】ぐはっ!」

 聡の質問には答えず、目の前の異様な敵を消したい一心で、『鏖殺』は魔法を放とうとするが、無防備な顔面に拳を叩き込まれて、阻止されてしまう。

 衝撃でゴロゴロと數メートル転がりながら、『鏖殺』は痛みで意識が飛びそうになる。

「死んでないよな?手加減したし。俺的には、そのイケメンの顔面に、拳を叩き込めて満足だけど。」

 見ると『鏖殺』の顔面は痛みに歪み、更には鼻も垂れ流しており、聡にとってはスカッとする景であった。

 その為か、聡の口角は異様に吊り上がり、見事な悪人面に変貌していた。

「き、貴様ぁ…。この俺に、鼻を出させるとは!爪先から10センチ刻みで消して、殺してやる!俺をコケにした事を、悔やみながら息絶えるがいい!」

 そう息巻く『鏖殺』だが、聡の表は一切変わらない。何故なら、聡からすれば、『鏖殺』など敵では無く、ただの研究対象でしかないからだ。

「あのさぁ、何か勘違いしてません?」

「…何?」

 聡のゾッとするような、冷たい聲に、『鏖殺』も思わずきを止める。

「俺にとって、お前の命なんてどうでも良いんだ。けど、何で俺が態々お前に手加減してるのかというと、単純にお前の魔法が珍しいからだ。だから何も教えてくれないんじゃ、生かしてる意味が無いんだよ。」

「魔法が珍しいから生かしてるだと!?」

「そうだ。今はお前が積み上げてきた死の數に目を瞑って、俺の興味を優先させて、その魔法を解析してるんだ。だから、こうして!…手加減をしてるわけだ。」

 喋りながら、『鏖殺』の視認できない速度で近付き、その腹に蹴りをれる。すると、サッカーボールのように吹っ飛びながら、長い距離を転がる。

「ぐほっ!ゲホゲホ!な、何なんだお前は!?うぐぁ!?」

「いい加減に、そろそろ俺の質問に答えてしいな。じゃないと、殺すよ?」

 喧しい『鏖殺』に、しイラッとした聡は、手にしている銃で、右足を撃ち抜く。すると、激痛のあまりいて、足を抱えて丸まってしまう。そのみっともない姿は、悪名高い『鏖殺』の姿だとは、誰が見ても信じないだろう。

 聡の顔は、時間が経過する毎に、どんどんと人が変わったかのように、格が悪そうな笑みに歪んでゆく。

「なぁ、早く答えてくれないかな?ガキみたいに怯えてないでさぁ!フハハハハ!それにしても、『鏖殺』っていう二つ名は、さっさと返上した方が良さそうだな!代わりに、『弱蟲』って名乗った方が良いんじゃないかな?ハハハハハハハ!」

 何がおかしいのか、聡は聲高らかに笑う。その姿は、魔王トイフェルとは対極的な、ドSと呼ぶに相応しいものである。高笑いしながら、丸まってる『鏖殺』に近付き、頭を踏み付ける。

「なるほどなるほど。魔法名を口にしないと発しないのか。それと、視界に映る、若しくは空間しか消せないと。消す場所は自由に選べる。で、視認出來ないと、対象に出來ないか。思ったよりも、強くない魔法だったな!」

 ここぞとばかりに、『鏖殺』を貶す聡。流石にこの姿は、エーリカ達には見せられないだろう。連れて來なくて正解である。

「…。」

「ふむ。だんまりか。じゃあ、拷問するしか無いか。殘念殘念!」

 何も言い返して來ない『鏖殺』を見て、頷きながらニヤリとする。言ってることとは真逆に、聡の顔は、実に楽しそうな笑顔で一杯だった。

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