｢ん〜！｣

 開き気味だった口を、フラウにキスによって塞がれてしまい、変な聲を出してしまう聡。

 エーリカの時の押し付けてくるようなキスとは違い、いわゆるフレンチ・キスと呼ばれる、濃厚なものであった。

ｰや、やめてくれ！ｰ

 全から力が抜けそうなのを堪えながら、聡は必死に目で訴えかける。

 だが、フラウの目には、聡の姿はマトモに映ってるようには見えず、々なをぐっと抑えるしか無かった。

ｰうぅ…。す、すまん、フラウ！ｰ

 聡はそう心の中で謝ると、フラウの背中と腰に手を回して、し強く抱き締める。

｢！｣

 先程までは、ただ必死にを貪るだけに必死になっていたフラウだったが、抱き締められるのをじて、うっとりと嬉しそうな表を作る。

ｰそんな目で見られても！くっ！【ヒュプノス】！ｰ

 ちゃっかり無詠唱で発する聡。無詠唱は高等技とされ、中々使える者は居ないのだが、そんな高等技を、『キスされてて聲を出せないから』という、何とも酷い理由で使ったのだ。

｢あ…。｣

 全から力が抜けて、その場で崩れ落ちそうになるフラウを、そのまま抱き締めた狀態で支える。

｢っはぁ、はぁはぁ…。な、何だっていきなり…。｣

 荒い息を整えながら、聡は呟く。本當は理由をしっかり理解しているのだが、がそれを認めたがらない。

｢…これがアイツ･･･を困らせたという、吸鬼の特か。『夜の王』が暴を働いた原因でもある、一度を吸って尚、殺せなかった相手への極度の依存。｣

 その依存の高さから、吸鬼達の間では、防ぐ為の薬や魔法の開発が最優先とまで言われている。

 聡は何度かトイフェルから聞いたが、その度に『ヤンデレでも盡くされるだけマシじゃん』とか言って、彼をからかったりしたが、いざ自が験すると、恐ろしさをじてしまう。

｢せっかくエーリカの事、ちゃんと考えるって決意したんだけどな。フラウもほっといたら、大変な事になるし、一俺はどうすりゃ良いんだ！｣

 頭を抱えようとして、ふと気が付く。

｢俺はいつまでフラウを抱き締めてるんだよ！｣

 幸せそうな顔で眠りについているフラウを、ゆっくりとベッドに下ろしてやる。

 そしてため息をつくと、外に出てから、誰もフラウの部屋にって來れないようにする。

｢【魔法創造マジッククリエイト、施錠ロック】。｣

 側からは、簡単に開くように、イメージを固めながら魔法を使う。これで、なくとも翌朝までは、フラウはぐっすりな筈だ。【ヒュプノス】もそうなるよう、調整してかけたつもりである。

 『鏖殺』との戦闘や、ここ1週間での創意工夫で、どうにか魔法を使う事に慣れてきたのだ。

｢くっそぉ〜！最初にを吸わせた時に、気付くべきだったぁ〜！｣

 フラウの今の狀態を、失敗と捉えてる聡は、部屋に戻ってドアを閉めてからく。

｢…また一輝から電話か。はい、もしもし。｣

 く聡のポケットで、著信音が鳴り響いたので、ノロノロとした手付きで開き、応答する。

『ん？何か元気無くね？』

｢そうか？別の意味では元気になりそうなんだけど、悩みの種がまた増えたからかね。｣

 下世話な話、エーリカに続き、フラウのキスによって、し気分が高揚していた。今なら據え膳なら、味しく頂いてしまうかもしれない。そんな気分だ。

『悩みの種？ははっ。まさかまた他のの子に告白された挙句に、キスをされたとか？』

｢…非常に近い。告白はされてないけど、キスはされた。しかもエスカレートしかけたから、強制的に眠りに落としたんだよ。｣

 あった事を、端的に説明する。

『おいおい。ホントにお前、聡かよ？』

｢おい、どういう意味だよそれ。｣

 一輝の失禮な言いに、聡はノータイムで突っ込む。

『いやだって、大學生活どころか、高校でもっ気一つ無かった聡が、今日一日で2人のの子にキスされるとか、明日槍でも降るんじゃないの？』

｢一番信じられないのは俺だけど、今回に関しては、俺が悪いってのは理解してるんだよ。｣

『悪い？』

｢吸鬼ってのは、一度を吸った相手に、強く依存するんだよ。大抵は1回で吸い殺しちゃうから、そんなに問題にはなら無いけど、俺みたいにHPが無限にあるような奴だと、大変な事になるんだ。｣

『吸鬼？まさか、この間のフラウさんの事か？15歳の？』

｢【魔法創造マジッククリエイト、消音サイレント】ォォォ！！！！！うぅわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！言わないでくれ！｣

 他の宿泊客が駆け付けてくる前に、この部屋からのび聲が聞こないようにしてから、びまくる。

『す、すまん！驚き過ぎて、つい事実を！』

｢それは何のめにもなってないわい！せっかく考えないようにしていた事を！｣

 刑法的にはOKだが、條例的にはOUTな年齢の為、聡は悶えする。

『そ、それよりも、フラウさんはどうすんの？ほっといてエーリカさんと付き合うとか、そりゃ無いよな？』

｢好きかどうかは置いといて、確かにほっとくのは無理だよな…。｣

『異世界なんだし、一夫多妻制･････なんだろ？責任取って、どっちももらっちゃえよ！』

｢…へ？いっぷたさいせい？｣

 一輝の言葉に、思考が停止してしまうのだった。