《生産職を極めた勇者が帰還してイージーモードで楽しみます》會合②

「お前は何者だ?」

瀬戸源十郎。目の前にいるこの老人は戦闘のせの字も知らないど素人だろう。だが向こうの戦士に勝るとも劣らない威圧と圧迫を出している。これは長い時を生き抜いた奴が出す時間の重みだろう。

部屋中にがひりつくようなが走る。護衛の何人かもたじろいでいるし、息子の直継とその嫁さんも冷や汗を流している。平然としているのは源十郎の嫁さんだけだ。

俺は自分の口角が釣り上がるのを自覚した。俺はやっぱりこういう狀況が好きだ。

「何者、、、何者ねぇ」

敢えて軽い口調で返す。

佳から聞いておる。お前からもらった金を飲んだら聲が戻ったと。

あり得ん。

もし仮に佳が病気で聲が出せないのなら薬で治ることもあるかもしれん。そうだとしても即効があるわけではない。何年もかけて飲み続けるものだ。

ましてや佳は病気ではなく怪我だった。もし治るとすれば手以外にない。薬で治ることなどありえんのだ。

もう一度聞こう、お前は何者だ?」

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「く、ククククッ!だから名乗っただろう?悪魔だと」

「それを信じろと言うのか!

いや、儂らが知らんだけで悪魔が存在したとして、お前が悪魔だとして、悪魔を信用できると思っているのか?」

俺を睨みながら問いかける源十郎。だが

「プッ!クハッ!ハハハハハ!おいおい、面白いことを言うなぁ!」

「なんだと?」

「アンタの言い方だとまるで人間なら信用できるって言ってるように聞こえるぜぇ?瀬戸の爺さんよう。

アンタも知ってるだろう?この世で一番信用ならんのは人間だ!」

向こうの世界でそうだった。世界が変わったくらいで人間の本質が変わったりはしない。

俺の言葉に室が靜寂に包まれる。だが次の瞬間顰めっ面だった源十郎が破顔する。

「全く、その通りだ!儂としたことがっ、はっはっはっはっは!」

俺と爺さんは笑い合う。業界の重鎮なんて立場にいる奴が人間の本質を理解していないはずがない。

「いや、線なきことを聞いた。お主が何者でもよい」

「まぁ、素面で昔話なんぞしたくないしな。酔ってても過去の話をするつもりはない」

「そうか。ではそのことについてはもう聞かんことにする」

「ああ、助かる。、、、そういえば口調がブレブレだぞ?話しやすい口調でいい」

「む。そうかの。それならばお言葉に甘えるとするかの。この喋り方は爺むさいんじゃよ」

「気にするな。俺の知り合いにそう言う喋り方のやつがいた。長老って呼ばれてるやつだがな」

俺はエルフの里の長老を思い出す。長命のエルフの中でも最長命、齢千歳を超える爺さんだ。人間社會よりも時の流れが遅いエルフの里からも隠遁を決め込んだある種の仙人だ。

「それで他の3人は何も話さないのか?」

俺は爺さん以外の3人に視線を向ける。爺さんの嫁さんは

「ふふ、私と主人は古い人間でしてね、亭主関白というやつなの。主人が話しているときに口なんて挾めないわ」

らかい笑顔を見せながらそう言った。特に悲観的な様子はない。

「僕も父さんの話に口を挾むようなことはしないよ。貴方も同時に話しかけられては大変でしょう」

直継の言葉に同意するように嫁さんも1つ頷く。

「儂はもうよい。あとはお前達が話すといい。場所も変わろう」

爺さんは席を立って自分の嫁さんの隣に座る。もともと四角いテーブルを囲んで四方にソファがあり、俺の正面のソファに爺さん、右のソファに婆さん、左側に息子夫妻となっていた。

「いいの?父さん。々聞きたいことがあったんじゃないの?」

「もうよいのだ。儂には負い目があった。佳が怪我を負ったのはそもそも儂が蕓能界にったからだ。儂はこの男に禮を言いたかっただけなのだ」

「そうか。なら僕達が話をさせてもらおうかな」

そう言って夫婦で俺の対面に座る。

「改めて佳の父の直継です」

「母の梨です」

「「この度は娘を助けていただきありがとうございます」」

夫婦揃って頭を下げる。

「ああ、気にするな。それより2人も蕓能界の関係者か?」

「いや、僕は貿易會社をやっているよ。海運のね」

「私はその補佐かしら」

「ほ〜、なりからしてうまくいってるみたいだな」

直継達が著ているスーツとドレスを見る。向こうの世界で20年近く貴族どもと付き合っていれば見る目も養われる。ワザワザ鑑定しなくても上質なものと分かる。

「ははは、まぁ初期資本が潤沢だったからね。奇をてらわず堅実にやればそれなりだよ」

「それが出來ん奴も大勢いるだろう」

苦笑いをする直継にそう言った。これは本心だ。金持ちの子供ってのは傲慢になりがちで、自分の能力に拠のない自信を持つ。だから失敗しても自分の指示通りにできないやつが悪いと言い始める。救い難いアホだ。

そこで會話が途切れると直継は意を決したように真剣な顔をする。余程なのか嫁さんの手を握っている。嫁さんの方も何を言いだすかわかっているのか真剣な顔で直継の手を握り返す。そうしてゴクリと息を飲んだ後に口を開いた。

「君に助けてもらっておきながら更にお願いするのは申し訳ないと思っている。だがどうか娘の、佳の左眼「やめろ」っ!!!」

何を言おうとしているのか気がついた俺は口を挾む。闘気と殺気を周囲に撒き散らす。それに反応して周囲の護衛が全員銃を抜いて俺に銃口を向けるが俺はそれを無視して直継を睥睨する。

直接俺の殺気を向けられている直継と梨は冷や汗を流し、爺さんと婆さんはピクリと眉をかしを強張らせたがそれ以上の反応はない。

「あの左眼はあの子が自らの意思で差し出した。聲を取り戻すための『覚悟』だ。それに口を出すのはでもやっちゃいけねぇ。違うか?」

俺は人の覚悟を尊重する。正しくても間違っていても覚悟とは尊いものだ。

「っ!くっ!す、すまない。失言だった」

直継が素直に謝罪したので俺も殺気を収める。向こうの世界で系化された殺気だがそれにも々種類があった。俺が使っているのは重力系だ。俺の殺気をけるとが重くなって重力が強くなったような錯覚が起きる。

「気をつけろよ。俺の機嫌を損なうとかじゃなくて今のはあの子の覚悟を貶す行為だ」

「ああ、申し訳ない。わかってはいたのだがそれでも娘が大切なんだ」

「ん、まぁ、それはそうだろうな。様子を見てれば分かる。あんたら4人はあの子を大切にしているようだ」

「1人娘でね。僕達は所謂大金持ちの部類にる。そういう家には柵が多い。佳にも々苦労させたが曲がらず素直ないい子に育ってくれた。自慢の娘だ」

微笑みながら娘の話をする姿を見ればその想いが本だと分かる。だが俺は敢えて口を挾むことにする。この手合いは向こうでもいた。その時は一晩中娘自慢を聞かされたのだ。

「ああ、それでお前達は何か聞きたいことはないのか?」

「聞きたいことというかお願いがあるんだ」

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