《不良の俺、異世界で召喚獣になる》1章1話

「……こんなもんかァ……弱よえェなてめェら」

「ぶっ……ぐ……!」

「腕が……腕、がぁぁぁ……!」

「こい、つ……まさか『鬼神』……?!」

深夜、真っ暗な路地裏。

そこに、1人の男が立っていた。

「おォ、俺の事知ってんのかァ……ならなんで喧嘩吹っ掛けてきてんだよォ。勝てねェってわかってんだろォ?」

男の足下―――そこには、き聲を上げる男が5人ほど転がっていた。

腕が曲がっている者もいれば、口からを吐く者もいる。さらにはぐったりしてかない者もいた。

「はァ……てめェらが仕掛けてきたのに、わけねェなァ」

拳をに濡らし、退屈そうなため息を吐く。

「………………俺、なんのために生きてんだかなァ……」

寂しそうに呟く男―――と、突然辺りが輝き始める。

「チッ……おい、なんかしたかァ?」

グルンと振り向き、ダルそうに男が問い掛ける。

地面に倒れる男たちは、俺たちじゃないと手を振る。

そうしている間にも、輝きは増して―――

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「……あァ……?」

ゴウゴウと吹き抜ける風。

見知らぬ大地……そこに、男は立っていた。

「チッ……スマホは―――」

「……できちゃいました……」

と、男の背後から綺麗な聲が聞こえた。

眼を細め、警戒心と共に振り向く。

―――そこには、橙髪のが、男に手を差し出していた。

怪訝に思いながらも、男はの手を握り、握手をわした。

「んでェ……てめェはァ?……ここはどこだァ?」

「あ、えっと……急に呼び出してすみません!私、召喚士の『リリアナ・ベルガノート』と言います!……それで……えっと……あなたが伝説の『反逆霊鬼リベリオン』ですか?」

「……はァ?」

當然、男は困する。

さっきまで深夜の路地裏にいたはずなのに、次の瞬間には見知らぬ大地に立っており、さらにはコスプレが奇怪な言葉を言ったのだから。

「いや……そりゃ人違いだろォ。俺ァ『百鬼なきり 兇牙きょうが』だァ。そのリベなんちゃらってのじゃねェよォ」

「……でも……私は確かに『反逆霊鬼リベリオン』を……」

首を傾げ、ブツブツと何かを呟き始めるリリアナ。

それを見た兇牙の考えは1つだ。

―――関わったらヤバイ。

そう考えると、次の行は早かった。

すぐにリリアナに背中を向け、平和な草原を歩き出す。

「あ、ちょっと待ってください!」

「……………」

「待って!止まって!もう、『命令 止まれ』!」

リリアナが命令口調になった―――瞬間。

兇牙のが、金縛りにあったようにかなくなった。

「なっ……あァ……?!」

「あ……す、すみません!すぐに解きますから!『命令解除』!」

ふっと、兇牙のから不可視の力が消え去る。

―――次の瞬間、目に見えない早さで距離を詰め、リリアナを片手で持ち上げていた。

「あ、ふっ……?!」

「おいコラてめェ、今俺に何しやがったァ?返答によっちゃァ……握り潰して殺すぞ」

リリアナを片手で持ち上げたまま、威圧的に問い掛ける。

「あふっ、あふぅ……!」

『ギブ!ギブ!』といわんばかりに、リリアナが兇牙の手を連続して叩く。

舌打ちしながら手を放し、咳き込むリリアナを冷たい視線で見下ろした。

「俺の問いに答えろォ……今俺に何をしたァ?」

「はぁ……はぁ……え、えっと―――」

リリアナ曰いわく、こういう事らしい。

―――ここは『アナザー』という世界。

この世界には『騎士』と『魔士』と『召喚士』が存在しており、リリアナは『召喚士』らしいのだ。

……だが、リリアナは『無能』と呼ばれるほど『召喚士』の才能がなかった。

下級の召喚獣も召喚できない無能……ヤケになったリリアナが、最上級の『反逆霊鬼リベリオン』の召喚を行おこなったら―――

「あなたが現れたんです」

「…………………………はァ?」

何1つ理解できない兇牙は、本日何度目になるかわからないため息を吐いた。

先ほどの金縛りは、リリアナと召喚獣としての契約を結んだからとの事。

もちろん、兇牙は契約なんて結んだ覚えはない。

「それはさっきの握手です!あれで契約が完了しました!」

「そんなので契約した事になんのかよォ……」

これからどうするか、兇牙は靜かに考える。

―――兇牙には両親はいない。

さらには、この『最強質』のせいで友人だっていなかった。

それに……兇牙の『最強質』は、使い方は誤れば人を殺しかねない。

詰つまる所ところ―――あの世界に、兇牙の居場所はないのだ。

「……わっけわかんねェけどォ……お前に付いて行くしかないだろォなァ……」

「えっと……それで、あなたの事は、なんと呼べば良いでしょうか?」

「キョーガでいい……」

「キョーガさんですね!あ、私の事は、リリアナと呼んでください!」

そう言ってリリアナは、心底嬉しそうな笑みを見せた。

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