《不良の俺、異世界で召喚獣になる》1章4話
「…………はァ……」
風呂にるキョーガが、顔にタオルを當てながら深く息を吐いた。
リリアナの家―――家というより、小さな屋敷だ。
『なんだよボンボンの娘か』と思うキョーガ……あながち、外れではない。
―――リリアナは、伯爵の娘なのだ。
もちろん、キョーガはそんな事は知らない。
そもそも、そんな事に興味は無いし―――リリアナは悪いやつじゃないと信じているからだ。
「……んァ……?」
「キョーガさん!っていいですか?」
曇りガラスの向こう―――の何かがいていた。
「いやダメに決まってんだろォがバカかおめェ」
「えっ……でもお父様が『友だちができたら背中を流してやるんだぞ』って……」
「おめェバカだよな?普通、男が一緒に風呂る事なんてねェからなァ?」
それでも、所にいるリリアナは、リビングに戻ろうとしない。
と、何か白いが宙に浮いた。
曇りガラス越しだからよくわからないが……白いタオルだと思われる。
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「……おい、ったら殺すぞォ?」
「酷い?!私は仮にも『召喚士』ですよ?!キョーガさんの『召喚士』ですよ?!」
「だからなんだよォ……」
キョーガがため息を吐く―――と同時、風呂場の扉が開けられた。
白いタオルを巻いたリリアナが、し顔を赤くしながら中にってくる。
対するキョーガは、殺気を放つことでリリアナを外に出そうとするが―――
「ふふん!キョーガさんのその殺気は、怒ってないですね!」
「あァ……?んでおめェにそんな事がわかんだァ?」
「さっきアバンさんに向けた殺気……あれが本當の殺気ですよね?なら、今出してる殺気は、全然本気で怒ってないですもん!」
小さなを張り、自慢気にリリアナが指摘する。
―――リリアナの言う通りだ。
キョーガは本気で追い払いたいわけではない。
別に、もっと濃な殺気を出そうと思えば出せるのだが―――今のキョーガは、それをしていない。
理由は単純。
……嫌われたくないのだ。
キョーガはリリアナに嫌われたくない……たった1日しか付き合っていないが、キョーガはリリアナの事を気にっている。
それはリリアナも同じ事。リリアナもキョーガの事を気にっている。
キョーガが本気で拒絶するなら大人しくを引くつもりだったが―――本気じゃなく、照れ隠しのようにじる殺気だ、とリリアナはじた。
「ほら、浴槽から出てください!背中流します!」
「二度は言わねェ……今すぐ出ろォ」
「大丈夫です、痛くしませんから!」
「……今すぐ出ろォ」
「……キョーガさん、もしかして恥ずかしいんですか?」
二度は言わないと言ったのに、同じことを言うキョーガ。
―――リリアナはだ。
それこそ、普通の人間ならば歓喜して背中を差し出すほどに。
なら何故なぜ、キョーガはそうしないのか?
……リリアナの事は気にっているが、今まで友人がいなかったキョーガにとっては、他人にをらせるなんて、ハードルが高過ぎるのだ。しかもそれがなど、以もっての外ほかだ。
「……自分で事を決められねェショボいかと思えばァ、わけわかんねェとこで大膽たァ、どんなキャラだよォ」
「ほら!早く早く!」
「チッ……わかったわかったァ。早く終わらせろよなァ」
そう言って立ち上がり、顔に當てていたタオルを巻くキョーガの顔は―――やっぱり、優しい表だった。
―――――――――――――――――――――――――
「……これァなんだァ?」
「?……あ、それは昔話ですよ。かなり古いですが、本當に起こった出來事を書いてあるみたいです」
リビングにポツンと置いてある本を見て、キョーガが夕食を作っているリリアナに問い掛ける。
わざわざなんでリリアナに聞いたのか―――この本、日本語で書いていないのである。
おそらく異世界語だろうと仮定し、キョーガが本を開く。
文字は読めないが……小さな子どもが書いたようなヘタクソな絵を見たキョーガが、再びリリアナに問い掛けた。
「なァ、この3人の人間は何なんだァ?」
「『勇者』と『魔』、それと『死霊士』ですね」
「……なんだそりゃァ?」
「ちょっと待っててください、もうすぐ終わるので」
せっせと料理をするリリアナを見て、『邪魔をしたな』と1人反省する。
『勇者』に『魔』、『死霊士』……?
それは、リリアナがキョーガに教えてくれた、『騎士』と『魔士』と『召喚士』の事だろうか。
「さ、できましたよ!」
「んァ……ありがとよォ」
「いえいえ!キョーガさんは……一応召喚獣なんですから、召喚獣を養うのも、召喚士の務めですよ!」
やはりキョーガの事を召喚獣と呼ぶのは嫌なのか、一応と付けるリリアナ。
その言葉にキョーガは苦笑―――する事なく、リリアナの出した料理に目を向けていた。
……黒い塊。雑にみじん切りされた野菜。生の。
「なんだこれェ?」
「え?焼き魚とサラダとハンバーグですけど……苦手な、ありました?」
「苦手とかそんなレベルじゃねェよォ!おめェこれが焼き魚って言うのかァ?!焼き過ぎて中まで炭すみになってんじゃねェかァ!どうやって食うんだよォ?!これに至っては生だろォ?!チッ、食いもん末にしやがってェ……臺所借りるぞォ!」
サラダに口出ししなかったのは、もう野菜だからサラダで良いや、とキョーガが妥協したからである。
リリアナの著ていたエプロンを剝ぎ取り、キョーガが臺所に向かった。
―――キョーガは12歳か・ら・施設に預けられていた。
その施設は貧乏で、1日1食あるかないか、そんな環境だった。
だから……食べに関しては、ものすごく厳しいのだ。
「ちょっと待ってろォ、すぐに作るからよォ」
「え?……キョーガさん、料理できるんですか?」
「おめェ俺をバカにすんなよォ?基本的には何でもできっからなァ?」
不機嫌そうなキョーガが、置いてあった包丁を手に取り料理を始めた―――
―――――――――――――――――――――――――
「……ほらよォ、食えやァ」
「わぁ……!スゴいです!味しそうです!」
並べられた料理を見て、リリアナが歓喜する。
リリアナが用意した料理―――あれのせいで殘っている食材がなかった。
だからキョーガはし工夫して、リリアナが作っていたハンバーグ(もどき)を焼き直して、食べられるハンバーグにした。
雑に切ってあったサラダも、細かく切って食べやすいようにしてあり―――
「キョーガさんって、何でもできるんですね!」
「まあなァ……何でもできるようにさ・れ・て・る・からなァ」
「されてる……って、どういう事です?」
「……気にすんなァ、とっとと食おうぜェ」
誤魔化すようなキョーガの言葉に、リリアナが一瞬口を開くが―――キョーガの悲しそうな顔を見て、その口を閉じた。
―――話したくない過去があるのだろう。
それはきっと―――私にも話せない。話したくないような容だろう。
―――いつか、もっと仲良くなったら……話してくれるかな?
「……そォいやァ……その本、なんて書いてあんだァ?」
「『魔王』を討伐する昔話です」
「……って事はァ、昔は『魔王』がいたって事かァ?」
「はい、そうだと聞いてます」
本を開くリリアナが、容を話してくれた。
『昔々、平和な世界に『魔王』が現れました。
『魔王』は七人の『大罪人』を連れ、平和な世界を支配し、何もかも自分のにしようとしました。
人間と『魔王』の戦いは、長年に亙わたって続きました。
戦いのに、海は蒸発し、木は燃え盡き、大地は砂と化し、空は赤く染まってしまいました。
しかし、七人の『大罪人』が強くて、人間は負けそうになってしまいます。
その時、3人の人間が現れました。
『聖剣』を持つ『勇者』。強力な魔法をる『魔』。そして、死者をる『死霊士』です。
3人の人間は、七人の『大罪人』を倒し、『魔王』を追い払いしました。
こうして世界に平和がりました。
けれど、忘れてはいけません。
私たちが生きていられるのは、この勇敢な3人のおかげだという事を。
そして……『魔王』は、今この瞬間にも、再び世界を支配しようと現れるかもしれない事を』
「……です」
「……七人の『大罪人』だァ……?」
「この昔話に影響されて、今の『騎士』と『魔士』と『召喚士』の制度が作られたそうです」
パタンと本を閉じるリリアナを見て、キョーガが腕を組み、昔話の容を思い返す。
七人の『大罪人』―――キョーガには、どこか聞き覚えがあった。
深く考えなくても、既視の正はすぐにわかった。
「『七つの大罪』……かァ?」
「え?」
「んやァ……なんもねェよォ」
「そうですか……それじゃあ、いただきますね!」
「あァ……」
キョーガの料理を食べたリリアナが、とても幸せそうな表を浮かべたのだが―――それはまた、別の話。
一応、キョーガの『最強質』とか『何でもできる用さ』は、しっかりと事がありますので……まあいつか明あきらかにします(笑)
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