《不良の俺、異世界で召喚獣になる》1章9話

「……なァリリアナァ」

「本當にすみません」

「まだなんも言ってねぇよォ……」

部屋で眠る姉……それを見て、リリアナがキョーガに頭を下げる。

眠る姉の隣には、包帯をグルグルに巻かれた父が座っていた。

「……あのなァ、俺ァ別に気にしてねェし、アルマの傷も、どォにか治ったから文句ねェよォ……ってかァ、むしろ謝るのは俺じゃねェかァ?リリアナの父ちゃん毆っちまったしィ、姉ちゃんも地面に叩き付けちまったしよォ」

「キョーガさんは何も悪くないですよ。悪いのは……私の父と姉なので」

「まァそォかもしれねェけどよォ……」

いきなり斬りかかってきた父親に、いきなり魔法を撃ってきた姉。

日本ならば確実に警察行きだ。

まあ日本には魔法などないが。

「……本當に大丈夫ですか?アルマさん?」

「はい!キョーガのおかげで大丈夫です!」

「おかげで俺ァ貧なんだけどなァ……」

し顔が悪いキョーガ……無理もない。今日だけで3回も吸を行おこなったのだから。

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普通の人間は、1回吸するだけでが持たないのに……キョーガはそれを3回も行おこなったのだ。

「すみませんキョーガ……さすがに3回は吸い過ぎましたぁ……」

「気にすんじゃねェよォ……1回目は日課ァ、2回目は太、3回目は俺が吸えっつったんだからなァ。おめェは何も悪くねェ」

「……そう言ってもらえると、ボクも気が楽ですよぉ」

にへっと、アルマが年相応の笑みを見せる。

その頭をでながら―――ふと、キョーガは、ずっと気になっていた事を口にした。

「……なァ、アルマって何歳なんだァ?」

「そっ、それ聞きますぅ……?」

「んァ、別に言いたくねェんなら言わなくていいんだがァ」

「……えっとぉ………………30ですぅ……」

「……30って……歳がかァ?」

「はい…………正確に言うなら、37ですぅ……」

そう言いながら、アルマが恥ずかしそうに顔を伏ふせる。

―――キョーガは困した。

37って……冗談か?だって見た目は13歳か14歳くらいじゃん。こんなロリっ子が37は……えぇ?

「……37には見えねェなァ」

「えへへ……嬉しいですぅ」

紅眼を嬉しそうに細め、漆黒の翼をバッサバッサとかす。

「それでェ……その2人、どうするんだァ?」

「帰ってもらいたいですけど……帰れそうにないですもんね」

「どうするんだァ?部屋は1つしか余ってねェだろォ?」

「……アルマさんと私が一緒に寢ますか?」

「ボクです?」

誰がどう見ても、リリアナとアルマが一緒に寢るのが一番だと思う。

だがそれは……アルマが人間ならば、の話だ。

「でも……ボク、寢相ねぞう悪いですよ?うっかりご主人様の骨とか折っちゃったり……を吸ったり……するかもですよ?」

騒な『吸鬼ヴァンパイア』だなァ……ってかァ、リリアナが姉ちゃんと寢りゃァいいじゃねェかァ?」

「……お姉様と私が一緒に寢るのは……ちょっと嫌なんですけど……」

リリアナは、姉の事があまり好きではないらしい。

もっとも……姉はリリアナの事が大好きなのだが。

ちなみにその姉は、父親が嫌いとの事。

『リリアナのに危険が迫っている!』と父親が姉に伝え、可い妹のために、わざわざ『クラリス』から『プロキニシア』に來てくれたのだ。

「……それなら、ボクとキョーガが一緒に寢ればいいですです!」

「はァ?何言ってんだおめェ?」

「キョーガなら……ほら、ボクの腕がうっかり當たっても、死なないですよね?それに、うっかりたまたまを吸っちゃっても……えへへ……」

「卻下だ卻下ァ」

―――この後、『それならお父様とキョーガさんが一緒に寢ますか?』とリリアナに聞かれ、『それだけは勘弁してくれェ』となったので……キョーガとアルマが一緒に寢ることになった。

ちなみに、キョーガとリリアナが一緒に寢るという案は出なかったと言う。

―――――――――――――――――――――――――

「チッ……なァんで俺があの2人の飯をォ……」

「すみません……私の料理だと、怪我したに追い討ちしてしまうので……」

「まァ間違いねェけどよォ……アルマはさえ吸ってりゃいいからァ、飯を作る技がねェしィ……」

「うぅ……そう言われてもぉ……ボクは料理なんて覚えなくても、があればいいですし……」

不機嫌そうに料理を作るキョーガ……その表とは裏腹に、料理の腕前はプロ級だ。

―――この世界の料理の仕方は、魔力を使う。

例えば、コンロから炎を出すには魔力を使わなければならない。

『魔士』が炎を送っても、それをいつ使うか決めるスイッチがない。

だから、魔力でスイッチのONとOFFを決めるのだ。

ちなみにこの魔力、誰にでも存在する。『魂の』と同じだ。

だが、魔力があっても『魔法の才』が無かったら魔法が使えないため、意味がない。

リリアナの『魂の』と同じだ。

『魂の』が大きくても、召喚獣を召喚できなければ意味がない。

キョーガにも魔力が存在しており―――まあもちろん、あり得ないくらいの量の魔力を所有している。本人はまったく自覚していないが。

「……よっとォ」

ゴトッと、機に敷かれた布の上に鍋を置き、キョーガが鍋の蓋を開いた。

―――らかい香りが部屋中に広がる。

「……これは……?」

じゃがだァ……食った事あんだろォ?」

らかい香りの正は、誰でも食べた事があるであろう料理―――じゃがだ。

もっとも、異世界にじゃがという料理が存在するかどうかは怪しいが。

「皿用意すっからァ、ちっと待ってろォ」

「キョーガさん!私も!私も食べたいです!」

「あァもちろんだァ」

手際よく食事の準備をするキョーガを見て、誰もがこう思うだろう。

―――お前の正は何なんだ、と。

だが、誰も口出ししない。

父と姉は、ボコボコにやられた恐怖で問いかけられず、リリアナとアルマは、何者でも別にいいと思っているからだ。

「あのぉ……今日はボクも食べていいですか?」

「へェ……珍しいなァ、アルマが飯を食いたいなんてよォ」

「その……今日はを吸い過ぎたので、自分で栄養を補給しようかなぁ、と思いまして……」

さっきは『寢てる間にを吸います』的な事を言ってたくせに。

「……あァ……マズイとか言ったら毆っからなァ」

「はい、です!」

キョーガとアルマで皿を運び、慣れた手付きでじゃがをつぎ分ける。

「……殘したら殺すからなァ」

―――予想外の味しさに、キョーガの作ったじゃがは跡形もなく完食されたという。

―――――――――――――――――――――――――

「―――いっづゥ……ッ?!」

―――深夜、みんなが寢靜まった時間。

キョーガは、鋭い衝撃をけて目が覚めた。

……腹部に……何かが突き刺さっている……?

「……ッ……!おいアルマァ……おい、起きやがれェ」

キョーガの腹部―――アルマがキョーガの服の中に潛り込み、牙を突き刺していた。

まさか、本當に寢ている間に吸するとは。

リリアナとアルマが一緒に寢なくてよかった、と心から思いつつ、キョーガはアルマを起こそうと、頭を叩いたり頬を引っ張ったりするが―――

「……はひっ……やめてくらしゃいよぉ……」

「こいつ……本當に寢てんのかァ?」

無理矢理引き離そうとしても、ガッシリとキョーガを摑んだまま離さない。

せっかくしずつが回復してきたのに、吸われたら意味がない。

頭を摑み、し強めに押し退けるが―――

「あっ……きょおがぁ……」

牙を抜いた―――かと思えば、アルマが力を込め、キョーガのを『離してなるものか!』と抱き締める。

「……力強つえェなこのロリ吸鬼がァ……ッ!」

無理に離そうとすればするほど、アルマが尋常じゃない力で抱きついている。

「…………きょ……がぁ……」

「チッ……まァいいかァ……」

キョーガは、人の溫もりに慣れていない。

だが……この1週間で、リリアナとアルマには、かなり心を開いている。

それでも、まだ完全に開いているわけではない。

たまにスゴく不安になり、リリアナとアルマに壁を作ろうとしてしまう事がある。

『俺はここにいて良いのか?』『人を傷つけ、暴力の中で育ち、『鬼神』と恐れられたクズ人間が……こんな溫かい2人の隣にいて良いのか?』と考えてしまうのだ。

キョーガが完全に心を開く時……それは―――

「……いつかおめェらに、俺の正をォ……話せる時が來ればなァ……」

そう言って、アルマの頭をでるキョーガの顔は―――どこか、辛そうで、苦しそうだった。

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