《不良の俺、異世界で召喚獣になる》1章11話

「………………う……ぁ……?」

「目が覚めたみたいですね……どこか変な所はありますぅ?」

「あ……『吸鬼ヴァンパイア』……♪ここどこ~♪」

「ボクがお世話になってる召喚士の家ですよぉ……あなた、気絶してたんですよぉ?」

ムクリとを起こす『地獄番犬ケルベロス』……その橫には、アルマが座っていた。

「あたしが気絶~……?……あはっ♪それはあり得ないでしょ~♪だってあたし『地獄番犬ケルベロス』だよ~?そんな簡単に気絶するわけないじゃ~ん♪」

「……うーん……キョーガかご主人様を呼んだ方が速いですかね……ボクだと話が通じませんよぉ……」

「―――あ、アルマさん。その方、起きたんですね!」

「ご主人様……グッドタイミングですよぉ」

らかい笑みを浮かべるリリアナ……と、その姿を見た『地獄番犬ケルベロス』が、驚いたように目を見開いた。

「……へぇ~♪……その人、『死霊族アンデッド』に偏見へんけんが無いんだね~♪」

「えっと……は大丈夫ですか?」

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「あは~♪大丈夫だよ~♪」

心配そうな視線を送るリリアナに、『地獄番犬ケルベロス』はヒラヒラと手を振った。

「……もう……いくら手を出されたからって、やり過ぎですよキョーガさん」

「あァ?俺が悪わりィのかよォ……どっちか的に言やァ、先に手ェ出したそいつが悪わりィだろォがよォ」

「そうですけど……し手加減できません?キョーガさんは強すぎるんですから、普通に毆ったら相手を殺してしまいますよ?」

「……一応、手加減したんだがなァ……」

部屋にってくる男―――その姿、聲を聞いた瞬間、『地獄番犬ケルベロス』の本能が危険を訴えた。

は、頭は、わかっているのだろう。

―――この男が、自分を気絶させたやつだ、と。

「……あなた……何者……?」

「あァ?人に聞く前にてめェが名乗れやァ」

「キョーガさん」

「……チッ……俺ァキョーガだァ……おめェはァ?」

「あっ……あたしは『地獄番犬ケルベロス』の『サリス』♪……その、あなたも召喚獣?」

「まァそォだなァ。俺ァ『反逆霊鬼リベリオン』だァ」

―――『反逆霊鬼リベリオン』……なるほど、この底知れぬ覇気は、気のせいではなかったのか。

「えっと……それで、『地獄番犬ケルベロス』のあなたが、何故あんな町中に?『死霊族アンデッド』のあなたが見つかったら、ただじゃ済まないでしょうに」

「ん~♪まぁそうだけどね~♪あたしにも々と事ってのがあってね~♪」

リリアナの問い掛けに、サリスがゆらゆらとを揺らしながら答える。

―――話を聞くじ、こういう事だ。

『地獄番犬ケルベロス』は名前の通り地獄を守る番犬……言うならば門番だ。

今から大3年前に、サリスは父から地獄を守る仕事を継いだとの事。

だが……サリス曰いわく、ものすごく暇な仕事らしい。

毎日毎日退屈な仕事をしているサリスは、2日ほど前に、この世界に召喚された。

とりあえず門番の仕事を辭めたかったサリスは、嬉々としてこの世界に來たのだが―――サリスは召喚士に『毎日退屈させない事』を契約條件として提示した。

ここで思い出してほしい。サリスの格好かっこうを。

黒いブラジャーと黒いパンツの下著同然の服裝に、甘ったるい口調。そして巨

この姿のに、『毎日退屈させない事』なんて言われて。

―――卑猥な事を考えないやつなんて、いないだろう?

サリスとしては、3年も門番をしていて『暇にしないでほしい』という意味だったのだが、サリスを召喚した召喚士は『卑猥な事』という意味で捉えてしまった。

気持ち悪くなったサリスは、その召喚士から逃げ出した。

帰ったら門番。契約すれば18。となれば、サリスは逃げるしかなかった。

「で♪たまたま町で『吸鬼ヴァンパイア』を見つけたから♪ちょっかい出そ~って思って♪」

「アホかてめェ。なんでそこでアルマに手ェ出そうとすんだァ?ってか毆られたの俺じゃねェかァ、ふざけんなこのボケェ」

「あは~♪それはごめんね~♪」

ニコニコ笑いながら謝罪するサリスに、キョーガは小さく舌打ちをする。

「と言うか♪よくあたしが『地獄番犬ケルベロス』だってわかったね~♪」

「『サモンワールド』にいた時、一度だけ地獄に行った事がありまして……あなたの姿を見たことがあったんですよぉ」

「地獄に用事って……な~にしに來たのかな~♪ってか、あたしは覚えてないんだけど~♪」

「……そこは緒ですぅ……2年以上も前の事だから、あなたが覚えてないのも無理もないですしぃ……」

そう言ってフイッと顔を背そむけるアルマの顔を……キョーガは見逃さなかった。

―――スゴく悲しい顔だ。これまで見た事がないほどに。

その事にはれないようにして、キョーガは今の會話にあった気になる事を聞く事にする。

「なァ、その『サモンワールド』ってなんだァ?」

「召喚獣が住む世界の事ですよぉ。召喚士によって召喚される召喚獣は、みんなそこから來るんですぅ……キョーガは『サモンワールド』から來たんじゃないんですか?」

―――『サモンワールド』。

召喚獣が暮らす、この世界とは別の世界。

天國、地獄、海、なんでも存在し、サリスはそこの地獄の番犬なのだ。

「……サリスさんは、どうするんです?」

「ん~♪そだね~♪とりあえず楽しい事でも探そっかな~♪」

「楽しい事……ですか?」

「帰っても暇だし~♪それならここに殘って遊ぶ方が楽しいかな~って♪」

楽しそうに笑うサリス……その笑みは、どこか無理をしているように見える。

どうやらリリアナもキョーガと同じようにじたらしく、サリスに向かって手を差し出した。

「えっと……何のつもりかな~♪」

「1人で楽しい事を探すより、4人で一緒に過ごす方が楽しいですよ!それに、契約していない『死霊族アンデッド』が町中をウロウロしていたら、んな人から……嫌な事されちゃいますし……なら、私たちと一緒に遊びましょう?」

―――『地獄番犬ケルベロス』は理解した。

……この娘こ、本當に甘いんだ。

偏見が無いとは言え、何の躊躇ためらいもなく手を差し出すなんて……狂暴と名高い『吸鬼ヴァンパイア』と、最強無敵と言われる『反逆霊鬼リベリオン』が契約を結ぶのも納得だね~♪

「………………あっは~♪確かに、そっちの方が楽しそうだね~♪」

差し出しされる手を握り、サリスが嬉しそうに笑みを深めた。

「……契約條件は、『あたしを退屈させない事』だよ~♪頑張って契約條件を守ってよね~♪」

「はい!みんなで楽しく過ごしましょう!」

―――こうして、リリアナは新たな召喚獣。最上級召喚獣の『地獄番犬ケルベロス』と契約した。

―――――――――――――――――――――――――

「……リリアナァ?」

「あっ……キョーガさん。どうかしました?」

「そりゃァ俺の臺詞セリフなんだがなァ……こんな夜中に何やってんだァ?」

夜中。

リリアナがリビングの椅子に座っていた。

「キョーガさんこそ……眠れないんですか?」

「眠れねェってかァ……アルマが俺のベッドに潛り込んで來たからよォ……前みてェにィ吸われたら嫌だからァ、起きて來たんだよォ」

「あはは……アルマさん、最近よくキョーガさんの部屋に行きますね」

「あァ……あいつァ最年長なのにィ、頭はロリだかんなァ……俺の事も『怖い兄ちゃん』としか思ってねェんだろォよォ」

ちなみに、この4人の中で一番若いのは……驚くことに、サリスだ。

本人曰いわく、なんと15歳らしい。あんな15歳がいてたまるか。

「……んでェ?リリアナァどうしたんだァ?いつもは寢てるだろォ?」

「はい……その……ちょっと幸せ過ぎて……眠れないんです……」

「どういう事だァ?なんかあったんかァ?」

「いえ……皆さんと一緒にいられるのが幸せで……この數日間はんな事があって……友だちがたくさんできて……夢なんじゃないかって思う日もあって……寢て起きたら、皆さんがいなくなってるんじゃないかって思ってしまって……」

ポツリポツリと話し出すリリアナ……その顔は、幸せと不安が混ざりあった、複雑な表だ。

「…………アルマさんが現れて……慌ただしくて、可くて、優しい方で……今日はサリスさんと契約して……大人っぽくて、強くて、いつもニコニコしてる方で……」

遠くを見るような眼は、まるで夢を語っているようにボンヤリとしていた。

「そして……あの日、キョーガさんと出會って……最初は暴力的で、怖くて、暴な方だな、って思ってました」

「まァ否定できねェなァ」

「でも……本當は誰よりも優しくて、誰よりも人の事を考えていて、誰よりも強くて……人のために行できる方で、頼れる方で……幸せを呼んでくれる方で……」

そして―――キョーガの瞳を真っ直ぐに見つめ、ニッコリと微笑んだ。

「キョーガさんのおかげです……ありがとうございます、キョーガさん」

「はっ、笑わせんなよォ……全部おめェの力だァ。おめェの優しさがァ、あの2人の心に屆いたんだろォ……おめェの強さはそこだなァ」

「私の……強さですか?」

「あァ……俺には持ってねェ強さだァ」

そう……リリアナの強さは、キョーガも持っていない強さで……キョーガでも、勝てない強さだ。

最初こそ反発していたが……リリアナの甘さと優しさに、いつの間にかキョーガも居心地の良さをじている。

まだ出會って1ヶ月も経っていないが……それでも2人の間には、確かな信頼関係ができている。

「……なァリリアナァ」

「はい?」

「……1つ、昔話をしてやるよォ」

「昔話……ですか?」

「あァ」

暗いリビングの中―――キョーガの顔が、悲しく笑った。

「……とある研究機関にを売られた、かわいそうな男の子の話だァ」

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