《不良の俺、異世界で召喚獣になる》2章1話

―――『地獄番犬ケルベロス』が一緒に暮らす事になって、2日経った。

ちゅー……ちゅー……

「……よっし……んなじかァ……」

ちゅー……ちゅー……

「アルマァ、ちょっとこれ著てみろォ」

ちゅー……ちゅー……

「……おい、アルマァ」

「……………」

ちゅー……ちゅー……ゴツンッ!

「―――痛いっ!いきなり何するんですぅ?!」

「いつまで吸ってんだこのボケェ!俺のが無くなんだろォがァ!」

「あうぅ……ボクの至福の時間がぁ……」

名殘惜しそうに牙を抜くアルマに、バフッと青い布が投げ付けられる。

フードが付いた、ダボダボのローブ……キョーガが一晩かけて作った、アルマ専用のローブだ。

ちなみに、キョーガ専用の黒いローブも作ってある。

「えっとぉ……これ、ボクにですぅ?」

「じゃなきゃ誰に作ったんだよォ……外に出る時はこれ著てろォ。おめェの翼は目立つからァ、人に見られたら厄介だろォ?」

「……もしかして、ボクを心配して作ってくれたんですです?」

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「……さあなァ」

フイッと顔を背そむけるキョーガ……それを見て、『えへへへへ……』と、嬉しそうに青のローブを抱き締めた。

「嬉しいですよぉ……わざわざボクのためにありがとうございますぅ……」

「……あァ―――」

「おはよ~♪キョーちゃん遊ぼ~♪」

と、キョーガの部屋の扉が開けられ、サリスが甘ったるい聲を出しながら中にってきた。

「……サリスかァ……どォしたんだァ?」

「あは~♪いつも通り遊びに―――ねっ♪」

言いながら、サリスがキョーガに襲い掛かった。

それを予知していたかのように、キョーガがサリスに向かって手を出し―――いつも通り、手四つになる。

「毎、日……毎日毎日飽きねェなァ……!」

「あっ、はぁ……♪あたしが本気でぶつかれるのっ、キョーちゃんしかいないからねぇ……♪」

ギリギリと握力比べとなり……キョーガとサリスが摑み合うだけで、辺りの空気がビリビリと振を始める。

「っはァ……!うざってェなァ……!」

「あははぁ……♪今の戦績っ、あたしの17戦17敗だからねっ……♪そろそろ勝ちがしいかな~……っ♪」

「寢言は寢て言えこのエロ犬がァ……!俺に勝てるわけねェだろォがよォ……!」

「……またエロ犬って言ったね~♪ほんっとに、怒っちゃうっ、よ~♪」

勝負は互角に見えるが―――ややキョーガの方が優勢だ。

しずつサリスの顔が苦痛に歪み始め……キョーガの顔が、勝ちを確信した笑みに変わる。

「おらァ……!とっとと降參しやがれよォ……!」

「あ、ぐ……♪……わかったわかったよギブアップ♪あたしの負け~♪」

サリスの言葉を聞いて、キョーガが力を緩める。

痛そうに掌を開閉するサリス……ふと、アルマの持ってるローブに目を向けた。

「なにそれ~♪アルちゃんの新しい洋服~?」

「あ、はい。キョーガが作ってくれたんですぅ」

「あはっ♪いいないいな~♪キョーちゃんあたしに冷たいからな~♪」

「ふざけろバカがァ。おめェはその服じゃねェと落ち著かねェって言ってたろォがァ」

「よ~く覚えてるね~♪あはっ、その通りだけどね~♪」

ニコニコと考えが読めないサリスに向かって、茶のローブが投げ付けられる。

まさか用意されていたとは思わなかったサリスは、投げ付けられたを見てキョトンとしている。

「……一応作っといたァ……おめェの格好はエロいから、目立つんだよォ……アルマと違ってェ、おめェは太ァ大丈夫だろォがァ、一応フードを付けてるからよォ」

「………………あは♪……ありがと~♪」

嬉しそうにローブを広げ―――元の文字を見て、アルマとサリスが首を傾げた。

「……これ、なんて書いてあるんですぅ?」

「見たことない文字だね~♪」

「『R』……まァ深い意味ァねェからァ、気にすんなァ」

この『R』は……もちろん、リリアナのRだ。

『一応俺たちはリリアナの召喚獣だから』という意味が込められたりする。

「キョーガキョーガっ、どこか遊びに行きましょうよぉ。ご主人様もって、4人でどこかに行きましょうよぉ」

「……おめェ、ローブ著て外に行きてェだけだろォがァ」

「えっ?!そ、そんな事ないですよぉ……?」

本心がバレバレのアルマ……本當にこいつが最年長か?と本気で疑いたくなる。

「……リリアナ起きてんのかなァ?」

「リリちゃんなら起きてたよ~♪キョーちゃんの部屋に遊びに行くって言ったら、ほどほどにね~って言われちゃった♪」

「おめェが暴れるとメチャクチャになっからなァ」

「キョーちゃんも一緒になって暴れるくせに~♪」

嬉しそうにローブを著るアルマと、大事そうにローブを抱き締めるサリスと共に、キョーガはリリアナの所に向かった。

―――――――――――――――――――――――――

「……………」

「あー……リリアナァ?何怒ってんだァ?」

「別に怒ってないですっ。3人が違いの洋服著てるからって、別に気にしてないですっ。私だけ仲間外れなんて気にしてないですっ」

朝の町……4人の中で、リリアナだけいつもの格好だ。

キョーガは『こっちの世界には制服とかないから、制服の上にローブを著てる方が、格好としては目立たないだろう』と。

アルマは『『吸鬼ヴァンパイア』特有の黒い翼を隠す。そして、弱點である太を遮斷するために、ローブに付いているフードを被る』と。

サリスは『そのエロい格好と型は目立つから、できるだけを隠せ』と。

3者3様の理由で、それぞれ黒、青、茶のローブを著ているの……だが。

『自分だけ仲間外れにされた』と思っているリリアナが、不貞腐ふてくされているのだ。

「……悪かったよォ」

「別にいいですっ」

「……今日リリアナの分も作っからァ、機嫌直してくれやァ」

「………………本當ですか?ちゃんと、キョーガさんの手作りですか?」

「あァ、ちゃんと作っからよォ」

「……なら、許します」

『やっぱり怒ってたんじゃないか』と言い掛け、慌ててその口を閉じた。

と、2人の様子を見ていたアルマが、何やらクスクスと小さく笑っている。

「どォしたんだよォ、なんかおもしれェかァ?」

「いえ……最強のキョーガでも、ご主人様には頭が上がらないんだな、とぉ……」

「あは~♪ペコペコしてるね~♪」

小さく笑うアルマと、ニコニコとキョーガを見るサリス。

そんな2人の視線に小さく舌打ちし、早足に先を歩く。

「あっ、キョーガさ―――ぁ」

ピタッと、リリアナのきが止まった。

アルマとサリスが首を傾げ、キョーガも振り返ってリリアナの様子を確認する―――

「……?……ああ、リリアナか」

「あ、えっと……お久しぶりです、『デント』さん」

リリアナとすれ違った男―――デントと呼ばれた青年。

「最近學院に來てないらしいが……サボっているのか?」

「い、いえ、あの……出席日數とテストの點數は足りているので、あとは卒業式に出るだけなんで……」

「ふーん……その3人がお前の召喚獣か?」

「え、えっと……はい、そうです……」

……なんか、変だ。

キョーガもアルマもサリスも、デントと喋るリリアナを見て、違和じていた。

『死霊族アンデッド』すらも恐れないリリアナが、怯えている……?

「……へぇ……よかったなリリアナ……召喚獣と契約できて……しかも3人も」

「あ、はい。あ、ありがとうございます……」

視線を逸らしながら禮を言うリリアナ……と、デントの視線がキョーガに向いた。

「……あァ……?んだコラジロジロ見てんじゃねェよォ」

「いや……アバンのサイクロプスが、リリアナの召喚獣にやられたと聞いたから……君か?」

「アバン……あー……あのクソ生意気な野郎かァ。そういやそんなのも殺ったなァ」

「怪力サイクロプスが手も足も出ないと聞いた……ぜひ、俺の召喚獣と手合わせしてほしいんだが」

その言葉を聞いたリリアナが、ギョッとした表でキョーガを止めようとするが―――

「あァいいぜェ……てめェの召喚獣はァ、ちったァ楽しませてくれんだろォなァ?」

「ああ、もちろん―――來い、『金竜ファフニール』の『ファニア』」

―――それは、圧倒的な存在。あのサイクロプスが小さく見えるほどの巨大さ。

まるで、空気が重くなったかのような錯覚を覚える。

けど……違う。

空気が重くなったのではなく、それの存在がデカ過ぎて、空気が圧迫されているだけだった。

リリアナの表が、絶に変わる。

最上級召喚獣の『吸鬼アルマ』と『地獄番犬サリス』さえも、目の前に現れたそ・い・つ・を見て、驚きを隠せずにいた。

さすがのキョーガも、そ・い・つ・を見て、余裕の表ではいられなかった。

―――『金竜ファフニール』。

それは、キョーガが初めて見る種族『竜族ドラゴニア』で―――

「ダメですキョーガさんっ!『金竜ファフニール』は最上級召喚獣で、『竜族ドラゴニア』の中でも上位三番にる力を持つ竜ですっ!」

―――キョーガが初めて見る、3人以外の最上級召喚獣だった。

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