《不良の俺、異世界で召喚獣になる》2章4話

「―――ふわああぁあああああああっ?!」

平和な野原……そこを走る、1臺の馬車。

しかし、それを引っ張っているはずの馬はおらず―――代わりに1人の男が車両を引っ張っていた。

「すと、ストップ!ストップしてくださいキョーガさんっ!怖い、怖いです!ちょっとアルマさん!止めてください!」

「あ、あっ……騒がないでくださいご主人様……今日はまだ日課の吸をしてないから、調が良くないんですよぉ……」

馬車の中から、騒がしい聲と死にそうな聲が聞こえてくる。

そんな事もお構い無しに、キョーガが馬車のスピードを上げた。

「わ~♪速いねキョーちゃんっ♪」

「はっはァ!もっと飛ばすかァ?!」

「飛ばそ~♪もっともっと飛ばそ~♪」

「やめてくださいキョーガさんっ!死んじゃいます!私、死んじゃいますよっ!」

「アルマァ!リリアナが死なないように見ててやれェ!今から飛ばすぞォ!」

「そのアルマさんが死にそうなんですよー!」

『ギュオッ!』と加速した馬車が、野原を走する。

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その早さ、最早もはや車である。

―――ちなみにこの馬車はリリアナの私

前は馬を買っていたらしいが、騎士に売ったらしい。何ともリアルな話である。

「おいリリアナァ!このまま真っ直ぐ行っていいんだよなァ?!」

「そうですそうですけど!ちょっと止まってください!」

「あァ?!何でだァ?!」

「怖いんです!こんなの馬車じゃないです!私の知ってる馬車はもうちょっとゆっくり走ります!」

「これァ馬車じゃねェ!人力車だァ!だから速はえェんだわかったかァ!」

「何が言いたいかわからないです!」

「ぶっちゃけ久々に本気で走んのが楽しィんだァ!悪わりィなリリアナちょっと我慢してくれェ!」

さらに加速し、リリアナたちの乗る馬車が大きく揺れる。

―――キョーガは、今まで本気で暴れる事ができなかった。

の力を理解しているし、その力を本気で振るえば、周りに被害が出る事を理解しているからだ。

だが昨日……『金竜ファフニール』と戦った際、本気の一撃を放てた事。

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そして今、全力疾走ができているのは……キョーガによって、幸福なのだ。

「あう、あ、きょ、きょおがぁ……」

「なんだどォしたアルマァ!お前も風になるかァ?!」

「ち、違っ……きぶ、気分が……」

「あァ?!酔ったかァ!はっはァ!吐け吐けェ!そこら辺に吐いとけェ!」

「なんかキョーガさんがぶっ飛んじゃってますよ?!サリスさんどうにかしてください!」

「は~い♪キョーちゃん、リリちゃんがもっと飛ばしたいって~♪」

「おっしゃァ任せとけェ!」

「違いますよいい加減にしてください!」

―――――――――――――――――――――――――

「……すまん……久々に本気で走れて調子乗ったァ」

「いえ、私は全然大丈夫なんですけど……アルマさんが……」

「こいつはィ吸わせときゃどォにかなる……朝の吸もしてねェからァ丁度いいだろォ」

「うぅ……キョーガってボクの扱い雑じゃないですぅ?」

「黙って吸ってろロリ吸鬼ィ」

何か言いたげなアルマが、ジロッとキョーガを見て……諦めたように吸を再開する。

―――現在、『ギアトニクス』に行く道中。

飯を食べていないため、ここらで軽く食事を取ろうとリリアナが提案した。

リリアナの提案を呑んで馬車を停め、外にシートを敷いて休憩しているのだ。

「……しっかし遠いなァ……もう1時間は走ってんぞォ?まだ著かねェかァ?」

「いえ……ここまで來ればもうしです」

「あは~♪キョーちゃんがいればあっという間だね~♪」

―――今から一國の危機を救いに行くと言うのに、ピクニックか何かと勘違いしているのだろうか。

「アルマァ、しっかりフード被ってろよォ。せっかくィ吸ったのにィ、また太にやられたとかなったらダリィからなァ」

「……ボクは全然構わないですよぉ……?」

「俺が構うんだよアホォ」

深くため息を吐き、まだ吸を続けるアルマを引き剝がす。

そして―――何かをじ取ったように、はるか遠くに目を向けた。

「…………はァ……なるほどなァ」

「……?……キョーガさん、どうかしましたか?」

「『機巧族エクスマキナ』ってのはァ、なかなか厄介だなって思ってなァ」

キョーガが視線を向ける先―――そこに、何かが浮いていた。

リリアナの目には、それが何か全くわからないが―――キョーガたち3人は、それが何か直で理解した。

―――『機巧族エクスマキナ』だ。

「チッ……リリアナァ、ちょっと馬車ん中に隠れてなァ」

「え?えっ、あれってまさか―――」

浮かぶ『機巧族エクスマキナ』が急加速し、キョーガたち目掛けて突っ込んでくる。

―――まるで、本年のようだ。

とても人工で作られたとは思えないほどにリアルで、そこら辺の年だと言われれば、キョーガでも信じてしまいそうなほどに。

「【報告】 『偵察機』から『指示者コマンダー』へ。他國の『人類族ウィズダム』の姿を確認、捕・獲・の許可を求める」

な聲でどこかと連絡を取り―――返事が來たのか、年姿の『機巧族エクスマキナ』がキョーガに突っ込んだ。

だが―――いきなりキョーガに突っ込んだのは間違いだ。

「『完全再現リコール』―――おらァッ!」

後ろ回し蹴り―――プロの空手家を彷彿ほうふつとさせる鮮やかな蹴り技。

風を斬りながら放たれた蹴りは、『機巧族エクスマキナ』の頭を的確に捉えたように見えた―――が。

さすがは機械。當たる寸前に右腕を犠牲にし、頭への直撃を避けた。

その直後―――蹴りを食らった『機巧族エクスマキナ』が、まるでボールが飛ぶように軽々と吹き飛んで行く。

「固かってェ腕だなァ……あんぐれェの威力じゃダメって事かァ……」

「い、今のってやっぱり……」

「あァ、十中八九『機巧族エクスマキナ』だろォなァ……まさかバレるとは思ってなかったがなァ」

そう、ここはまだ『ギアトニクス』の道中。

あの『機巧族エクスマキナ』が、たまたまここら辺をうろついていたのか、それとも目的を持って行していたのか……定かではない。

しかし、1つ言える事は……サルモの言う通り、あの『機巧族エクスマキナ』をっている機がいる。

先ほど、突っ込んでくる時に言っていた『指示者コマンダー』……おそらくそいつが暴走した『機巧族エクスマキナ』だ。とキョーガは仮定した。

「【報告】 捕獲対象が迎撃を開始。よって、こちらも『戦闘形態』で捕獲を続行する―――『戦闘バトルフォーム』、展開」

『ガシュンガシュン』と、音を立てながら年のが変化し―――両腕が機械的な変化を遂げる。

右手首から先は剣に、左手首から先は銃のように変化……なるほど、確かにその姿は『機巧族エクスマキナ』だ。

「【警告】 大人しく當機に従うのなら、五満足の狀態で國に連れて行く。従わないのなら、瀕死にしてでも連れて行く。選択の権利を與える」

「バァカ、そりゃ選択って言わねェぞォ」

「……【理解】 瀕死にしてでも連れて行く」

年の左腕にが集まる。

―――それはまるで、『金竜ファフニール』が使っていた『破壊の咆哮デストロイ・クライ』。

そして―――集まったから、レーザーのような線が放たれる。

の速度で迫る線に対し、キョーガは拳を握って―――

「『結晶技巧ブラッディ・アーツ』、『大盾シールド』」

キョーガの前に現れた結晶壁が、放たれた線をけ止めた。

「……『金竜ファフニール』に比べれば、まだまだですよぉ……これなら、ボクでも勝てそうですぅ」

フードを深く被ったアルマ……その手には、赤黒い魔法陣が浮かんでいる。

「……【理解不能】……【解析】……【判明】 相手に『吸鬼ヴァンパイア』がいると仮定。さらに、あの紅い瞳、おそらく『紅眼吸鬼ヴァンパイア・ロード』。戦力、未知數……こちらの戦力、推定9000以下……不利だと判斷。『偵察機』から『指示者コマンダー』へ。當機では捕獲不可能と判斷。よって國へと引き返す」

線を放った『機巧族エクスマキナ』が、『ギアトニクス』に引き返そうと浮かび上がる。

―――それを、最上級召喚獣の『吸鬼ヴァンパイア』が逃すはずがない。

「逃がしませんよぉ―――『針山ニードル』」

『ビキビキビキッ!』と地面に亀裂が走る。

直後、『ギアトニクス』に逃げようとした『機巧族エクスマキナ』の足下から、『赤黒い水晶の針山』が現れた。

それを見たキョーガが思い浮かべたのは―――地獄にあるとされる、『針山地獄』だ。

突然の攻撃に『機巧族エクスマキナ』は避ける事もできず―――簡単にだらけにさせられ、力無く地面に落ちる。

「ふぅ……こんなじですですぅ……」

「やるじゃねェかアルマァ……まさかァ、お前がこんな殺り方するとァ思ってなかったぜェ」

「これが一番手っ取り早いですよぉ……それにしても、ボクたちを見つけるのが早いですね?もう見つかったんですぅ?」

「わかんねェなァ……ただァ、ここも安全じゃねェのは確かだァ……どうするリリアナァ?」

「な、何がです?」

「本気で『ギアトニクス』に行くかって聞いてんだよォ……ビビったんならァ、引き返してもいいぜェ?」

「………………確かに怖いですけど……皆さんがいますから、大丈夫です!」

ボロボロになった『機巧族エクスマキナ』……その殘骸を拾い上げたサリスが、不思議そうに首を傾げた。

「ん~……?……あっ♪キョーちゃんキョーちゃんっ♪」

「どうしたエロ犬ゥ?」

「おいっ♪……ま、いいや♪これこれ♪の中に『魔鉱石』があるよ♪珍しいね~♪」

「……『魔鉱石』ィ……?」

「魔力を貯める事ができる鉱石です。希価値が高く、滅多に手にらないんですけど……しかし、なぜ『機巧族エクスマキナ』のの中に……?」

サリスと同じく、不思議そうに首を傾げるリリアナ。

そんな2人の反応を見て、アルマが退屈そうにため息を吐いた。

「……ボクは頭が悪いから、何が何だかわからないですぅ」

「安心しなァ、俺も何が何だかわかんねェからよォ」

一通ひととおり『機巧族エクスマキナ』を眺めた4人は……元兇を潰すべく、『ギアトニクス』へと急いだ。

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