《不良の俺、異世界で召喚獣になる》2章9話
「『結晶技巧ブラッディ・アーツ』、『四重舞剣フィーア・グラディウス』」
空中に浮かぶ無數の赤黒い魔法陣―――そこから、數えられないほどの『紅い結晶の剣』が現れる。
その切っ先は―――空を飛び回る、2機のロボットに向けられていた。
「……舞え」
アルマの冷たい一言―――それを合図に、剣の群れが、2機の『機巧族エクスマキナ』に襲い掛かった。
散開し、曲蕓のようなきで紅剣を避ける『機巧族エクスマキナ』が、超速でアルマに迫り―――
「『裁きの線ジャッジメント・レイ』」
「『三重大盾ドライ・シールド』、『四重紅弾フィーア・バレット』」
―――迫る『機巧族エクスマキナ』の背後から、もう1機の『機巧族エクスマキナ』が線を放った。
遠くから放たれた線―――それを結晶盾でけ流し、間髪れずにアルマが紅い結晶弾を無數に展開。
線を放った『機巧族エクスマキナ』は、四方の魔法陣から放たれる紅弾を避け―――られず、被弾しながら建のへと隠れる。
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「……『四重紅槍フィーア・スピア』」
「【駆除】【掃討】【破壊】」
右手の剣を振り上げながら接近する、もう1機の『機巧族エクスマキナ』―――それに対し、アルマは深紅の槍を構える。
高速で振り下ろされる剣と、神速で突き出される槍が差し―――『機巧族エクスマキナ』の右腕が、軽々と空中を舞った。
「【駆除】【掃討】【破―――」
「遅い」
銃を叩きつけようと、左腕を振るが……その前に、アルマが鮮やかな後ろ回し蹴りをれる。
簡単に吹き飛ばされた『機巧族エクスマキナ』は、建を破壊しながら飛んで行き―――『ギアトニクス』を囲っている外壁に激突し、やっと勢いが止まった。
「はっ……あの蹴りァ、俺のマネかァ?」
圧倒的な力を見せるアルマ……その姿を見ていたキョーガは、面白いを見たように笑っていた。
―――今の蹴りは、朝襲ってきた『機巧族エクスマキナ』にキョーガが放った蹴り技にそっくりだ。
まさか1回見ただけでマネできるとは……『吸鬼ヴァンパイア』、恐るべしである。
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「……【質問】 お前は何者だ?ここへはどうやって來た?誰から頼まれた?」
「おうおゥ、1回に何個も質問すんな機がァ……さっきも言ったが、大した者じゃねェ、ただのキョーガだァ。ここへは馬車で來たァ。誰から頼まれたかってのはァ……一応、黙しとくぜェ」
ダルそうにしながら、しかし1つ1つの質問に丁寧に答える。
―――普通の人間が、ここまでの覇気を出す事は不可能。つまり、この人間は異常イレギュラー。
片手を機関銃のように、片手を狙撃銃のように変化させた『指示者コマンダー』が、より一層警戒を深め、両方の銃口をキョーガに向けた。
「まァ待てやァ……俺も聞きてェ事があんだよォ」
「………………【許可】 質問は?」
「おめェらは、何が目的なんだァ?俺ァそれを知りてェ」
先ほどまでの覇気は消え……ただ純粋に答えをむキョーガ。
その雰囲気の変化に心困しつつ、『指示者コマンダー』がゆっくりと答えた。
「【解答】 何故、當機より弱い者の言う事を聞かなければならないのか。當機は人間より強い。強者は弱者に従わない。弱者が強者に従うべきだ。と、當機は判斷……理解したか?」
銃口を向け、無表のまま淡々と告げる。
その返答を聞いたキョーガは……何かを噛み締めるように目を閉じ、長いため息を吐いた。
「…………………………あァ……バッチリ理解したァ」
「【驚愕】 何故、理解できる?普通の人間は、當機の言う事を理解できない」
「普通の人間ならなァ……だがァ、俺は普通じゃねェ……」
目を開き、キョーガが『指示者コマンダー』を見る。
その視線をけた『指示者コマンダー』は―――脳を理由のわからない【エラー】に支配された。
―――キョーガの目。
それはリリアナに向ける優しい視線ではなく、アルマに向ける兄のような視線でもなく、サリスに向ける好敵手のような視線でもない。
この視線は―――同族を見る目だ。
「【理解不能】 何故、そんな視線を向けるのか?」
「……検番號『100番02號』。功作の狂……これが、俺の本當の名前だァ」
「……検、番號……?……【理解】 お前は、研究に使われていたと判斷」
「あァその通りだァ……俺もお前と同じ考えを持ってたァ。『なんで俺より弱い者の言う事を聞かなきゃならない?』ってなァ……やっぱ、強くなるとそういう考えが出るんかねェ」
過去、キョーガは研究員に研究材料として扱われた。
だからこそ、わかるのだ。
この『機巧族エクスマキナ』の『指示者コマンダー』が、何故研究員に逆らったのかを。
「……【提案】 お前が人間を憎んでいるのなら、當機たちの仲間にれても良い」
「……あァ?……斷るに決まってんだろォ?」
「【疑問】 何故?お前と當機の考えは一致。お前は人間が憎い、當機は當機より弱い者の言う事を聞きたくない、強者が弱者を支配するべきと判斷……利害は一致。手を組むのが得策」
「ざっけんなアホォ……確かに俺ァ研究員が嫌いだァ、だが、人間を憎んでいるわけじゃねェ。勘違いすんなァ」
「……【理解】 手は組めないと斷念。これより、攻撃を開始する」
後ろに大きく飛び―――機関銃の銃口をキョーガに向けた。
「『魔弾の豪雨スコール・レイン』」
「『完全再現リコール』ゥ!」
雨のように降る弾丸―――その數、アルマの紅弾以上。
それに対しキョーガは、腰を落として迎撃の構えを取り―――降りしきる弾丸の雨を、手でけ流していた。
「ふゥゥゥゥ―――!」
あり得ない景……目にも止まらぬ弾丸雨を、目に見えない速さで捌いていた。
1000発以上の弾丸を撃ち……これではキリがないと、『指示者コマンダー』が銃撃を中斷する。
「……【理解不能】 當機の攻撃をけて、立っているなんて……」
「あァ?さっきも言っただろォがァ……創造が創造者に勝てるわけねェだろってなァ」
「【否定】 そんなわけがない……當機は今まで、簡単に人間を始末、捕獲してきた」
「だったらァ、今日が初めて負ける日だァ」
「【否定】 そんなわけがない。當機は……當機が人間に負けるわけがない。『魔の熱線イグナイツ・レーザー』」
『指示者コマンダー』の左腕に、青白いが収束する。
本能的に恐怖をじたキョーガは、反的にその場を飛び退のいた。
直後、『指示者コマンダー』の狙撃銃から青白い熱線が放たれ―――キョーガの立っていた所を熱で溶かし、その先の建全てを吹き飛ばした。
「……おいおいおい……『金竜ファフニール』よりヤベェじゃねェかァ……!」
「【當然】 當機の戦力は、『殲滅組』の5倍……最上級召喚獣にも引けを取らないと自負している」
さすがのキョーガも、今の景を見れば警戒を深めるしかない。
無言のまま睨み合うキョーガと『指示者コマンダー』……と、急に辺りが明るくなる。
何事か、と上空を見上げ―――空を覆っていたはずの霧が消えている事に気づいた。
これは……まさか……!
「―――アルマァ!」
先ほどまで猛威を振るっていたアルマが……元の姿に戻り、力無く地面に倒れていた。
―――『機巧族エクスマキナ』がその隙を逃すわけがない。
弱ったアルマを仕留めんと、銃口からを放ち―――
「『裁きの線ジャッジメント・レイ』」
「させっか、よォ!」
線がアルマに直撃する―――前に、キョーガがアルマを抱え、そのまま地面を踏み込んだ。
圧倒的破壊力で地面に亀裂をれ、辺りを砂ぼこりが覆う。
「……【知】 砂ぼこりの中に生命反応を確認。攻撃は當たっていないと判斷……『殲滅組1班』は砂ぼこりが晴れるまで待機」
「「【駆除】【掃討】【破壊】」」
「【命令】 『殲滅組2班』と『殲滅組3班』は、至急、町北部に集合せよ。『地獄番犬ケルベロス』は後だ」
砂ぼこりから視線を逸らさない『指示者コマンダー』……と、唐突に砂ぼこりが晴れた。
そこに立っていたのは、先ほどの黒髪の年……ではなかった。
「……ったくよォ……ちょっと頼りになると思えばァ、すぐヘタレやがってェ」
「う、うぅ……キツい……ですぅ……」
「とりあえず俺のローブ著とけェ。ちったァマシだろォ……よし、手ェ離すなよォ、しっかりしがみついとけェ」
拳を上に突き上げた年……拳の風圧で砂ぼこりを払ったのだろう。
その年の額ひたいから、何故か大量のが流れていた。
「おらァ、しィ吸っとけェ」
「い、いいんですぅ……?」
「このままだとお前死ぬだろォ。死なない程度に吸っとけェ」
「ありがとう、ございますぅ……」
キョーガの背中にしがみつくアルマが、牙を突き立てて吸を行おこなう。
「……なんか痛いてェと思ってたらァ、こ・れ・が生えてきてたからかァ」
「……【疑問】 お前は、一……?」
「俺ァ『反逆霊鬼リベリオン』のキョーガァ……召喚士 リリアナの召喚獣だァ」
額ひたいから『紅の角』が生えたキョーガが、鬼のように恐ろしい笑みを浮かべた。
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