《不良の俺、異世界で召喚獣になる》2章12話
「……キョーガ」
「あァ?……どォしたアルマァ」
夜……みんなが寢靜まったであろう時刻。
どこか不安そうなアルマが、靜かにキョーガの部屋にってきた。
「いえ……あの『機巧族エクスマキナ』について聞きたい事があるんですぅ……聞いてもいいですぅ?」
「……あァ。なんだァ?」
「……あの『機巧族エクスマキナ』を連れてきた理由は何ですぅ?」
紅瞳が、まっすぐキョーガを捉える。
その『何でもわかってるぞ』と言わんばかりの視線をけ、キョーガは心焦るも……表には出さないようにして口を開いた。
「別にィ……さっきも言ったろォ?監視するんだってェ」
「そこがおかしいんですよぉ……いつものキョーガなら、問答無用で破壊して、相手の事なんて無視するのに……今日に限って監視するなんて、まるで『コイツは殺したくない』って言っているようなじじゃないですですぅ?」
普段のおっとりとした口調が、何故か酷くキョーガの心を焦らせる。
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「キョーガ、ボクが別の『機巧族エクスマキナ』と戦っている時、あの『指示者コマンダー』とか言う機と何か話してましたよね?」
「あっ……あァ、まァ……」
「何を話したんですぅ?」
「……大した事ァ話してねェよォ」
「それ、噓ですよぉ?だって、『指示者コマンダー』と話した後のキョーガ……スッキリしてるように見えますぅ」
的確に痛い所を突いてくるアルマ……もう一度誤魔化そうとして―――キョーガの目に、寂しそうなアルマの姿がった。
「何を言われても、ボクはキョーガの言った事を信じますぅ。だから、正直に話してください……それで、ボクに納得させてくださいよぉ……『指示者コマンダー』は、一度殺し合った相手なんですぅ、理由も無しに信用する事はできませんよぉ」
祈るように手を合わせ、上目遣いにキョーガを見つめる。
どうするかし考えた後……観念したように大きくため息を吐いた。
「……あいつァ、昔の俺にそっくりなんだァ」
「昔のキョーガに……ですぅ?」
「あァ……だからァ……なんつーかァ……」
「殺したくない……ですぅ?」
アルマの言葉に、キョーガが無言で頷く。
「……それなら、ボクは文句はないですよぉ」
「そうかァ……ならよかったァ」
そのままの流れで、アルマがキョーガの部屋を出ようとして―――ふと思い出したように、キョーガがアルマを呼び止めた。
「あっ……おいコラちっと待てェ」
「はい?どうしたんですぅ?」
「……てめェ、まさか忘れたとか言わねェよなァ?」
「忘れたって……何がですぅ?」
首を傾げるアルマに向かって、キョーガが怒りの表を見せる。
「の話だァ……忘れたとァ言わせねェからなァ?」
「の……話…………………………あっ」
思い出したように聲を上げ、途端に慌て始める。
「あ、あっ、ちが、違うんですよぉ?忘れてたとかじゃなくてっ、その、キョーガが覚えているかなって試しただけでっ、忘れてたとか、そんな事は―――」
「……………」
「はい……ごめんなさいですぅ……」
無言の圧力に、しゅんと肩を落とす。
心なしか、黒翼まで垂れ下がったように見えた。
「うぅ……怒らないでくださいぃ……怒られるのは嫌いなんですよぉ……」
「んなの誰だって嫌いに決まってんだろォがァ……チッ……これじゃァ俺が悪者みてェじゃねェかァ」
見るからに兇暴そうな男が、いを泣かせている様子は……何も事を知らない者が見れば、悪者は確実にキョーガだ。
涙目で小さく震えるアルマを見て、キョーガは苦蟲を噛み潰したような顔になる。
「……はァ……おいアルマァ」
「はい……」
「…………………………これから多く吸う時ァ、前以もって言えやァ……いいなァ?」
「……えっ……?」
「だァから、これからァ前以もって言えってんだよォ……なんだ、不服かァ?」
ベッドから立ち上がり、キョーガが不服そうに妥協案を出す。
『不服か?』と問い掛けているのに、一番不服そうなのはキョーガだ。
「……その……いいんですぅ?」
「あァん?二度も三度も言わせんじゃねェぞロリ吸鬼がよォ」
不機嫌そうに布団にり込み、キョーガが枕元にある裝置に向かって魔力を流す。
それと同時、部屋の明かりが消え……『とっとと自分の部屋に帰れ。俺はもう寢る』と無言で伝える。
「…………あのっ、キョーガ」
「んだよ眠ねみィんだよォ」
「……一緒に寢て、いいですぅ……?」
10秒ほどの沈黙の後……キョーガがため息混じりに、素っ気なく言った。
「……勝手にしろォ」
「……えへへ……失禮しますぅ」
右を向いて寢るキョーガに合わせ、アルマがキョーガの右側にり込む。
その『構ってください!』と言わんばかりの行に、キョーガが心底鬱陶うっとうしそうに反対側を向き―――『無視しないでくださいよ!』と、アルマがキョーガの背中に抱きついた。
「…………キョーガ」
「……あァ?」
「ボクは……ボクは、獨りじゃないですよね?」
意図がわからぬ質問―――その聲は、どこかすがるように、どこか願うように震えていて……それを誤魔化すように、ギュッと、アルマがキョーガを力強く抱きしめる。
その抱きつく手を、キョーガが鬱陶しそうに振り払い……アルマのが、拒絶されたとじてビクッと小さく跳ねた。
だが直後―――グルン!とキョーガが振り向き、アルマの小さなを抱き寄せた。
「あ、ぇ……?」
「……あァ……暖あったけェなおめェ……」
溫ぬくもりを確かめるように、キョーガがアルマを強く抱きしめる。
「……どォだ?」
「え?あ、何がですぅ?」
「これでもォ、まだ獨りだとほざく気かァ?」
アルマの顔はキョーガのに埋まっているため、アルマがどんな表をしているかわからない。
わからないが―――
「……………………キョーガ…………キョーガ……キョーガ……キョーガ、キョーガ、キョーガっ、キョーガキョーガキョーガっ、きょおがぁ……!」
『まだ獨りだとほざく気か』……それは、優しさなんてじさせない、雑な言葉。
それでも……今のアルマには、これで充分だったらしい。
アルマの過去に、何があったかは知らない。ここまで獨りに怯えている理由もわからない。
サリスが初めてここに來た時に見た、アルマの悲しそうな顔……あれも、『獨り』というのが関わっているのかも知れない。
「ボク、『紅眼吸鬼ヴァンパイア・ロード』に選ばれてっ、お父さんはボクに期待しててっ、でもボクは全然ダメでっ……!」
「……大丈夫だアルマァ」
「ここに來て、みんな優しくてっ、安心させてくれてっ……!ボクは、ボクはぁ……!」
涙を流し、涎よだれをダラしなく撒き散らしながら、アルマが泣きじゃくる。
涙と涎で服が汚れるも……全く不快そうにせず、キョーガは優しくアルマの頭をでた。
その手のきに、アルマの心も優しくでられるようで……涙の勢いが増した。
「あ、うぁ……!ボクっ、頑張ってたんですよぉ!ボクなりに頑張ってたんですぅ!お父さんの言い付けも守ってたんですぅ!訓練も欠かさず頑張ったんですよぉ!」
「あァ」
「それでも足りなくて……!ボクは閉じ込められて……!暗い所で毎日暮らして……!怖くて怖くて怖くて怖くてっ、暗いのが怖くて仕方なくて……!」
―――毎夜毎夜、アルマが俺のベッドに忍び込んで來てたのは……獨りが怖かったのと、暗いのが怖かったからなのか。
「あっ、う……きょおがぁ……っ!」
アルマの頭をでながら、キョーガはふと思う。
―――寢るはずだったのに、どうしてこんな事になっているのか、と。
アルマの頭をでながら、キョーガはふと考える。
―――別に、無視して寢ても良かったはずだ、と。
アルマの頭をでながら、キョーガはふと口にした。
「……俺がいるゥ……だからァ、大丈夫だァ」
―――抱きつくアルマを見て、怯えるアルマを見て、震えるアルマを見て、泣きじゃくるアルマを見て、嗚咽混じりに涎を垂らすアルマを見て。
―――泣かせてはいけない。そう思った。
―――――――――――――――――――――――――
「……ったくよォ……泣き止んだと思えばァ、すぐ寢やがってェ」
心地よさそうに眠るアルマを見て、キョーガが苦笑を浮かべる。
―――コイツが言っていた、『お父さん』という存在。
よくわからないが……アルマが泣いたのは、その『お父さん』とやらが原因だろう。
アルマは言っていた。『ボクなりに頑張ってたんですよ』と。『言い付けを守っていた』と。『訓練を毎日していた』と。
そして―――『閉じ込められていた』と。
「……なかなかァ、殘酷な事しやがるじゃねェかァ」
キョーガには、両親がいない。
だから『普通の父親はこうだ』とか、『母親はこんな事をする』とか、そんな事はわからない。
わからない……けど。
「……自分の子どもを泣かせるって事ァ、間違ってるって事でいいんだよなァ」
眠るに問い掛ける。もちろん、返事はない。
「……『サモンワールド』かァ……ちっと興味が出てきたなァ……」
暗闇に、兇悪な笑みが浮かび上がる。
―――なんだかよくわからないが、とにかくムシャクシャする。
理由は……多分、アルマだ。
コイツも、キョーガと同じく、大変な期を送ってきたのだろう。
「……おめェの親にィ、挨拶してェなァ」
そう言ったキョーガの顔は―――今まで見た事がないほど、怒りに歪んでいた。
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