《不良の俺、異世界で召喚獣になる》2章13話

「―――今の話、どう思います?」

「……はァ?」

早朝のリビング。

真面目な顔のリリアナと、呆れ顔のキョーガが向かい合って座っている。

そのリリアナの橫には、姿勢正しく『指示者コマンダー』が立っており……キョーガの腕には、眠るアルマが抱っこされていた。

「ですから、今の話をどう思いますか?」

「いやァ、どう思うって言ってもよォ……」

靜かに立つ『指示者コマンダー』……その顔は、機械らしからぬ困ったような顔をしていた。

というか、キョーガ自も困している。

「えっとォ……つまりィ……」

どこか興したようなリリアナと、機械らしからぬ表を見せる『指示者コマンダー』。

そんな1人と1機に向かって、先ほどリリアナが言っていた事を口にした。

「『機巧族エクスマキナ』とか『指示者コマンダー』じゃ可くねェからァ、もっと可い名前を付けたい……とォ?」

「はいっ!そうですっ!」

元気に返事をするリリアナに、キョーガと『指示者コマンダー』が再び困の表を見せた。

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「……こんな朝早くに起こしたと思ったら、その子の名前を付けるためって……♪」

「はいっ!サリスさんも一緒に考えましょう!」

張り切るリリアナを見て、サリスが困ったようにキョーガを見る。

『安心しろ、俺もよくわからん』と、椅子に座っているキョーガが力強く頷いた。

「……あは♪……あたし、二度寢してくるね~♪」

「えぇ?!ちょ、ちょっと待ってください!」

「だって、あたし必要ないでしょ~♪リリちゃんが付けてあげなよ~♪」

「私じゃ良い名前が思い付かないんです!夜通し考えたんですけど、しっくりくる名前が出ないんですっ!」

「あは~♪……夜通しって、冗談でしょ……♪」

ヒラヒラと手を振りながら自室に戻ろうとするサリスに、リリアナが必死の表でしがみつく。

「はぁ……♪さすがのあたしも、朝からよくわからない事に付き合わされるのは困るよ~♪」

「よくわからないって何ですか!」

「あっは~♪……もう、わかったわかったよ~♪付き合うから落ちつきなって♪」

リリアナに引きずられながら、サリスが渋々椅子に座る。

「それでは、改めまして……この子の名前を決めましょう!」

「どォでもいいけどよォ、おめェ『指示者コマンダー』の事気にりすぎだろォ」

「その呼び方、やっぱり可くないですよ!ね、あなたもそう思いますよね?」

「【否定】 當機は呼稱にこだわらない……そもそも、お前は當機のマスターではない。よって、お前に當機の呼び名を決める権利は―――」

「おいコラ『指示者コマンダー』……そいつは俺の召喚士だァ。お前なんて呼ぶなァ、じゃねェと壊すぞォ」

「【了解】 心得た、マスター」

惚れ惚れするほどしい敬禮を見せる『指示者コマンダー』の姿に、キョーガが深くため息を吐く。

「……それで、アルちゃんはどうしたの~♪」

「……寢てるだけだァ、起こすなよォ?」

「ふ~ん……♪なんかキョーちゃん、お父さんみたいだね~♪」

「……俺がァ、コイツの親父だァ……?」

サリスの言葉にキョーガが突っ掛かり、いつも通りの取っ組み合いになる―――かと思われた、が。

「…………コイツの親父かァ……あァ、なれるんだったらァ、なってやりてェなァ」

眠るを見て、キョーガが優しく笑う。

『キョーガとアルマに何があった?』と驚くサリス……だが、キョーガの表を見て言及する気が失せたのか、いつもの笑みを戻した。

「あっは♪それじゃ早くその子の名前を決めよっ♪眠たくて眠たくてしょうがないんだよっ♪」

「そうですね!……ですけど、何か良い案はありますか?」

「それを今から考えっだろォがァ」

甘えるようにくっつくアルマを抱き直しながら、キョーガが『指示者コマンダー』を見上げる。

「……なァ、おめェは『こんな名前が良い』ってのはねェのかァ?」

「【肯定】 當機に呼稱は必要ない。それに、必要ともじない」

「だよなァ……機械が名前をむってのもォ、変な話だしなァ」

「【肯定】 ……しかし、マスターが付けてくれるのであれば、喜んでその名を使わせてもらう」

どこか期待しているように見える『指示者コマンダー』が、キョーガを見つめる。

そんな視線をけ、キョーガは本日何度目になるかわからないため息を吐いた。

「とりあえずよォ、そのマスターってのォやめねェかァ?」

「【拒否】 マスターはマスター。よって、やめる事はできない」

「あは~♪キョーちゃん、この子に何したの♪めっちゃキョーちゃんに忠実じゃ~ん♪」

「んな事ァ俺が聞きてェんだがなァ」

「この子が呼びたいって言うなら、呼ばせてあげたらどうです?」

「……だがなァ……」

『指示者コマンダー』の徹底したマスター主義の態度に、キョーガは呆れを通り越して尊敬すらじている。

とはいえ、自分が上の立場として扱われるのは、あまり得意ではない。

だからこそ『マスター』という呼び名を変えさせようとするが―――そこだけは譲れないのか、いやいやと首を振る『指示者コマンダー』と、リリアナの援護もったため、キョーガは仕方なくマスターと呼ばれる事にする。

「……そォだ……おめェの名前、『コマ』とかどォだ?」

「【質問】 そのコマという名前には、何か理由があるのか?」

「『指示者コマンダー』だからコマだァ。わっかりやすいだろォ?」

「もう!そんな適當な名前はダメに決まってますっ!」

真剣な表で『コマ……コマ……』とブツブツ繰り返す『指示者コマンダー』の姿に、『あれ?こんな簡単に決まっていいのか?』とキョーガが困した表を見せるも―――やはりダメだったらしく、リリアナから卻下が出た。

「もう何でもいいよ~♪それっぽい名前言って、早く寢直そ~♪」

「だなァ」

「お二人とも、真面目に考えてくださいっ」

ダルそうなキョーガとサリスの態度に、リリアナがプンスカ怒り……ふと思い付いたように、キョーガが口を開いた。

「……んじゃァ、『マリー』だなァ」

「……【質問】 マリーとは何か」

「俺の地元にマリーゴールドっつー黃い花があんだがァ……おめェの金髪にそっくりなしてんだァ」

「【復唱】 マリーゴールド……」

「あァ、おめェの名前は『マリー・ゴールド』……それでいいかァ?」

「……【了解】 これからは、マリー・ゴールドと名乗らせてもらう」

そう言って『指示者コマンダー』は―――否。マリーは、その名に相応ふさわしい、花のように可憐な笑みを見せた。

―――――――――――――――――――――――――

「……それにしても、よ~く眠ってるね~♪もうお晝なのに、まだまだ起きる気配がないよ~♪」

「……そォだなァ」

まだ眠っているアルマ……そのり心地のよさそうな頬に向かって手をばし、フニフニと引っ張る。

予想以上の弾力とり心地の良さに、面白がってり続け―――その手が心地良いのか、アルマがキョーガの手に自分の頭をり寄せた。

「あはっ♪……これじゃ、ただの子どもだね~♪」

「はっ、コイツァ実年齢以外はロリだかんなァ……そういやァよォ、おめェが15歳ってのはあり得ねェだろォ。何食ったらそォなるんだァ?」

「な~いしょっ♪あはっ♪」

人差し指を口元に近づけ、妖艶な笑みを見せる。

「……それより♪アルちゃんと何かあったの~?」

「あァ?別に何もねェよォ」

「噓~♪な~にがあったのかな~♪」

ユラユラとふざけたように、だが視線は真っ直ぐにキョーガを捉える。

「……あんまり詮索すんじゃねェ……俺にもコイツにもォ、言いたくねェ事ァある」

「あはっ♪……ま、そ~だよね~♪言いたくない事は、誰にだってあるよね~♪」

そう言って言及を止めるサリス―――と、唐突に玄関の扉が開かれた。

キョーガとサリスが視線を向け……そこに、年老いた騎士のような男が立っている。

―――ピリピリと、を刺すような覇気。

こんな覇気を放つのに、扉を開けられるまで、まったく気配をじなかった。

間違いない、この老騎士……強い。

「失禮。リリアナ・ベルガノート殿の住居は、ここであっているか?」

「……あァ、そォだがァ」

束ねられた白髪を揺らしながら、老騎士が中へとってくる。

その一挙一を警戒しながら、キョーガが老騎士に向かって手を出した。

「そこで止まれェ……リリアナに何の用だァ」

「……ふむ……強いな。若いのに、鍛えられている……それに、視線の送り方も悪くない」

「んな事聞いてんじゃねェよォ……何の用だァ、答えろォ」

「いやなに、々と聞きたい事があってな」

両手を上げ、戦う気はないと態度で示す。

しだけ警戒を解き……顎をしゃくって先を促す。

「そうだな……単刀直に行こう」

「あァ?」

「―――『ギアトニクス』の件について、話を伺いたい」

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