《不良の俺、異世界で召喚獣になる》2章14話

「陛下、先の件の者を連れてきました」

「ふむ。ご苦労だった、『アルヴァーナ』」

「もったいないお言葉で」

―――老騎士に連れられるまま、リリアナたち一行は、『プロキシニア』の王宮にやって來た。

「……キョーガさん。私、ちょっと狀況が呑み込めていないんですけど……」

「安心しなァ、俺もよくわかってねェからよォ」

「よく來てくれた。『召喚士 リリアナ』とその召喚獣よ。私は、この國を治めている國王、『グローリア・ゼナ・サモール』だ。お見知り置きを」

玉座に座る國王が、座ったまま頭を下げる。

禮儀のなっていない態度に、キョーガが噛み付こうとするが―――隣のリリアナから『ダメですよ、絶対にダメですからね!』と口を押さえられた。

「……お初にお目にかかります、グローリア様。私は『召喚士 リリアナ・ベルガノート』でございます」

1歩、前に出るリリアナが、優雅なお辭儀を見せる。

さすがは伯爵家の娘。こういった禮儀作法はお手のものか。

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関心したようにリリアナを見るキョーガ……と、リリアナと目が合った。

その目が示す意味は―――『皆さんも自己紹介してください!』だ。

「……俺ァ百鬼 兇牙……『死霊族アンデッド』の『反逆霊鬼リベリオン』だァ……」

「同じく『死霊族アンデッド』、『地獄番犬ケルベロス』のサリスだよ~♪」

「【自己紹介】 當機の名はマリー・ゴールド」

「……んでェ、寢てるコイツが『吸鬼ヴァンパイア』のアルマだァ」

キョーガたちの自己紹介を聞いたグローリアが、驚いたように目を見開いた。

―――無理もない。

最上級召喚獣が……しかも『死霊族アンデッド』が、この場に3人もいるのだから。

「……ほ、う……『死霊族アンデッド』……それも、最上級召喚獣が3匹とな……」

匹、という言葉に、リリアナがピクリと眉を上げるも……表を元に戻し、気になっていた事を問いかけた。

「それで、何故私たちをここに?」

「む?アルヴァーナから聞いていないのか?」

「……俺ァ聞いたぜェ。『ギアトニクス』での出來事について知りたいってなァ」

「そうか……ならば話が早い。早速教えてくれ」

「まァ待てや國王様よォ……教える前にィ、こっちの質問に答えてもらおうかァ」

「……ほう……なんだ?」

「『ギアトニクス』の件をどこで知ったァ?俺らが『ギアトニクス』の異変を解決したのはァ昨日だァ……いくらなんでもォ、報をキャッチするのが早すぎるゥ……」

そう。早すぎるのだ。

この世界には電子機はない……連絡する手段は無いはず。つまり、『ギアトニクス』が救われた事を知るには、昨日『ギアトニクス』にいなければならない。

「答えろォ……どうやって知ったんだァ?」

「……最近、『ギアトニクス』からの使者が來なくてな……不審に思った私は、昨日の晝過ぎに、アルヴァーナを使者として『ギアトニクス』に送った……アルヴァーナ」

「はっ」

國王の呼び掛けに、老騎士が1歩前に出た。

「……ワシがそこで聞いたのは、『『召喚士 リリアナ』とその召喚獣によって、この國は救われた』という住民の言葉だったのだ」

……なるほど。

確かにあの時、キョーガは住民たちにリリアナの名前を出した。

だが……それでも……

「……速、すぎんだろォ……」

「む?」

「俺らが『ギアトニクス』を出たのは午後の4時過ぎだァ……俺の足で、最短距離を走って1時間は掛かったァ……そこであんたと鉢合わせてねェって事ァ、その後に『ギアトニクス』に行ったって事だろォ……普通の馬ならァ、あの道は6時間は掛かるゥ……それを往復って事ァ、12時間は掛かるはずだァ……そんなのォ―――」

「ふむ……つまり君は、『普通の人間じゃ、そんなに速く移する事は不可能だ。だから怪しい』と思っているのかね?」

「……あァ……まァ、そういう事だァ」

キョーガほどの化ならば、それらを可能にする事ができる。

だからこそ、キョーガは違和じていた。

―――普通の人間には不可能だ。コイツらには裏がある、もしくは特別な何かがある……どちらにしても、怪しい事に変わりはない……と。

「……1つ、勘違いをしているぞ」

「あァ?俺が勘違いだァ?」

「うむ……人間離れした力を持っているのは、何も召喚獣だけでない。人間にだって可能な事だ―――自惚うぬぼれるなよ、小僧」

「―――ッ?!」

―――殺気。

今までにじた事の無いレベルの殺気。

無意識のに、キョーガが戦闘態勢にり、その額ひたいから紅角が現れる。

サリスの表が強張こわばり、いつでも迎撃できるようにを低くして構えた。

マリーが両腕を剣に変え、その鋭い切っ先を老騎士に向ける。

腕の中で眠るアルマも、尋常ならざる殺気をじ取り、飛び起きた。

「……落ち著いてくれ、ただの年寄りの悪ふざけだ」

そう言って、老騎士が目を閉じる。

それと同時、辺りを覆っていた尋常ならざる殺気が、噓だったかのように霧散した。

―――本気で、殺されるかと思った。

そう思うキョーガの顔は……恐怖に染まっている。

「……あんたァ……何者だァ……?」

「ワシは『アルヴァーナ・ガウェイル』……ただの老いぼれ騎士だ」

唯一、戦いに関して無知なリリアナだけが、アルヴァーナの殺気をけて平気にしている。

……つまり、手練てだれにしかじ取れない殺気。

そんな卓越した技は……普通の人間には、不可能だ。

だが、ここは異世界。

キョーガのいた世界の人間とは、運能力が異なるのかも知れない……と、キョーガは無理矢理自分を納得させた。

「ふむ?そちらのは……人間ではないのか?」

「【肯定】 當機は『機巧族エクスマキナ』。人間の手によって造られた召喚獣」

「『機巧族エクスマキナ』……?聞いた事の無い種族だが……」

「【當然】 當機は『ギアトニクス』で裏に造られていた。今回、『ギアトニクス』で起こった異変は、我々『機巧族エクスマキナ』による事件だ」

淡々と、冷徹に。

一切のもなく、『私が『ギアトニクス』を壊滅寸前まで追いやった』と國王に言い放つ。

「ほう……なるほど。が武に変化するのか」

「【肯定】 近距離武から遠距離武、さらに拷問も備えている……見てみるか?」

「やめとけマリー……出しゃばんじゃねェよォ」

「【了解】」

ガシュンガシュンと、音を立てながら変形し……元のマリーの姿に戻る。

「……えっと……キョーガ?ここ、どこですぅ?」

「やっと起きたかァ……おら、とっとと降りやがれェ」

「……よくわかんないですけどぉ……降りますよぉ」

軽やかに著地するアルマ……と、目の前に立つ老騎士を見て、目を細めた。

―――明らかに警戒を剝き出しにしている。

刺すような視線をけるアルヴァーナが、居心地悪そうに肩を竦すくめ……アルマの様子に気づいたキョーガが、その頭に向かってチョップを放った。

「―――痛いっ?!な、何するんですぅ?!」

「アホォ、んなあからさまに警戒心出すんじゃねェよォ……あいつァ強つえェ、ヘタに警戒心を出すなァ。リリアナに手ェ出されたら困るだろォがよォ」

「………………はい、ですぅ……」

「いやいや、そんなつもりはないから安心してもらっていい。ワシはただの老木。戦うなんて、骨が折れる事はしない」

「噓言ってんじゃァねェ……あんたの目はァ、強者の目だァ……あんたほど洗練された人間はァ見た事がねェ……」

穏やかに目を細める老騎士……だが、その目に宿る異様な覇気は、隠す事ができていない。

鋭く、視線だけで相手を圧倒する彼は……まさに、存在自が一振ひとふりの剣のようだ。

「……『召喚士 リリアナ』よ……お前のおかげで、『ギアトニクス』が救われた……禮を言う」

「いっ、いえそんな……私は何も……」

「……なァあんたァ……國王さんよォ」

「む?君は……『反逆霊鬼リベリオン』だったか?」

「あァ……ちっと頼みてェ事があんだけどよォ……いいかァ?」

「……ふむ。他國を救った禮だ。言ってみろ」

「じゃァ遠慮なく言わせてもらうわァ……こいつと戦わせてくんねェかァ?」

キョーガの睨む先……老騎士が立っている。

不敵に笑みを浮かべるキョーガに、アルヴァーナが一瞬目を細め……國王を見上げた。

「……どうだ。戦やるか、アルヴァーナ?」

「……陛下のご命令とあらば、喜んで」

老騎士の返事に、キョーガが嬉しそうに笑みを深め―――そんなキョーガの左腕を、リリアナが摑んで振り回した。

「なっ、ななな何を言ってるんですかキョーガさんっ!あ、あの方は『プロキシニア』最強の騎士、アルヴァーナ様ですよ?!勝負を力でねじ伏せる『金竜ファフニール』とは違い、技を使う『人類族ウィズダム』です!」

「まァ、そうだろォなァ」

「キョーガさんは確かにスゴい力を持ってますけど、アルヴァーナ様には―――」

「落ち著けリリアナァ……さァ、戦やろォぜェ」

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