《不良の俺、異世界で召喚獣になる》2章15話

―――王宮の中にある訓練所。

そこで向かい合う2人の人影。

片方は準備運をしており、もう片方は目を閉じて靜かに瞑想している。

「ふゥ……はァ……」

「ふむ……年、準備はいいか?」

「あァ……いいぜェ」

肩を回すキョーガと、木剣を構えるアルヴァーナが向かい合う。

ピリピリとした空気に、リリアナが息を呑み……近くにいるアルマとサリス、そしてマリーが、何があっても良いように、リリアナの背後に立った。

そして―――それらを見下ろすように、國王グローリアが、高い位置に設置された豪華な椅子に座る。

「……いつでも掛かってこい……先手は譲ろう」

「んならァ、遠慮なく行かせてもらうぜェ―――ッ!」

―――次の瞬間、キョーガの立っていた所が発した。

いや違う……圧倒的腳力が原因で、地面が砕され、砂ぼこりが舞っているのだ。

そして、塵が舞っている所に―――キョーガはいなかった。

「―――こっちィッ!」

「ふっ―――ッ!」

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目に見えぬ速さで距離を詰め、そのまま拳を振り下ろす―――と思えば、再び姿が消えた。フェイントだ。

アルヴァーナの背後に現れたキョーガが、そのまま拳を振り―――その拳をアルヴァーナが木剣でけ流し、返す勢いでキョーガの首を狙う。

「チッ―――」

「………………ほう」

天井、床、壁―――キョーガが縦橫無盡に走り、跳ね、駆け、飛び回る。

かくらん目的か、隙を探っているのか、それともフェイントか―――見守るリリアナたちには、キョーガの行が理解できなかった。

當とうのキョーガは……撹、隙を探る、フェイント……全てが目的なのだが―――

―――隙が……無い?!

というか……なんで俺のきに反応できる?!

背後に回っても、上に飛んでも、懐ふところに潛り込んでも―――眼が、追ってくる……?!

「ふむ……速いな……その若さで、この実力……將來が楽しみだ」

「そォか―――よォッ!」

弾丸のような勢いで突っ込み―――空中で回転し、踵かかと落としを狙う。

風を斬る音と共に、強烈な踵の一撃が、アルヴァーナの頭部に迫り―――

「―――ふんッ!」

「ちィ―――ィいいいィいいいいあァァああああああああああああァああああああああッ!」

木剣にけ止められ、勢いを殺される―――前に、キョーガの額から『紅角』が現れた。

そのまま振り下ろされる踵が、砲撃のような威力を発揮し―――木剣が砕され、アルヴァーナの頭に踵が迫る。

頭蓋が々になり、頭部が吹き飛ぶ―――寸前。

「―――ふんぬッ!」

「なっ―――あァ?!」

鮮やかな投げ技―――振り下ろされた踵が簡単に流され、勢いを利用されて投げられる。

「驚いた……その角があると、破壊力が増すのか……注意しなければならないな」

落ちている新しい木剣を拾い、アルヴァーナが警戒を深める。

―――と、戦いの場であるのにも関わらず、キョーガが目を閉じていた。

「む……?どうかしたか?」

「…………記録……記憶……対象モデル、『アルヴァーナ・ガウェイル』……『完全記憶コピー』完了……再現度、90%……殘る10%は、後の戦いで修正……模倣完了」

機械的に呟くキョーガがゆっくりと目を開き―――先ほどまでの狂暴な雰囲気が消え、アルヴァーナと同じ『一振ひとふりの剣』のように、冷たく、靜かな雰囲気へと変化する。

「既すでに記録済みの『剣』と、新たに記録した『剣』を混合……創造……命名、『獨自剣オリジナル・ソードスキル』……『完全再現リコール』」

地面に転がる數十本の木剣……そのの1本を手に取り、靜かに構えた。

「悪わりィなおっさん……あんたの剣ゥ、まるっと模倣させてもらったァ……いやァ、俺の知ってる剣と合わせたからァ、模倣とは言わねェかァ」

「……面白い……ワシのマネか……見せてみろ」

同じ構えを取るキョーガとアルヴァーナ……と、キョーガとアルヴァーナが同時に踏み込んだ。

同じタイミングで剣を放ち―――同じ箇所を狙った剣撃は、お互いに飛び退く事で攻撃を回避。

間髪れずに距離を詰め、頭部―――と見せかけ、腹部を狙い―――

「……スゴい……です」

「あは~♪……同じきしてるね~♪」

「技を放つタイミングも、技を避けるタイミングも、距離を詰めるタイミングも、まったく同じなんて……いくらなんでも、ムチャクチャですよぉ……」

「【驚愕】……【理解不能】」

高速で繰り広げられる剣撃……と、急にタイミングがズレた。

いや違う。キョーガがズラしたのだ。

一瞬ズレたき―――その一瞬が命取りだ。

「……左足が出てるぜェ」

最小限のきで左足を打ち―――アルヴァーナの勢が崩れた所に、キョーガが連続で突きを放つ。

「う、ぐぅ―――!」

突きを避けようと、アルヴァーナが剣をかし―――空いた右肩に、キョーガが木剣を叩き込んだ。

尋常ならざぬ威力の木剣がアルヴァーナを襲い……為なすすべなく吹き飛ばされる。

「ぐっ……は……?!」

「……実戦だったら死んでたぜェ、あんたァ」

『カラン、カラン……』と、退屈そうに木剣を投げ捨て、アルヴァーナに冷たい視線を向ける。

「ふ、む……痛いな……まさか、まだワシに痛みを與える者がいるとは……」

「ほう……アルヴァーナに膝を突かせるとは……なかなかの腕前だな」

上から見下ろすグローリアが、心したようにキョーガを見る。

その視線をけたキョーガは肩を竦すくめ、アルヴァーナに手を差し出した。

「……すまない。助かる」

「左足に重心が寄っているゥ……だからァ、剣を振る時にィ、右足に重を乗せてから振ってるゥ……」

「な……?」

「……あんたのクセだァ。そこを狙えばァ、素人でもあんたに勝てるゥ……ま、あんたの剣を振るスピードとォ、捌きならァ、それはねェかも知れねェがなァ」

言い殘し、アルヴァーナに背を向ける。

「……スゴいです、スゴいですよキョーガさんっ!」

「あー騒ぐんじゃねェよォ……まァ、相手が普通の人間ならァ俺は負けねェ」

堂々言い張るキョーガの顔には―――満足したような笑みがあった。

―――――――――――――――――――――――――

「…………ま、さか……」

「んー……初めまして?」

深夜、『プロキシニア』の教會の中。

気の弱そうな年が、目の前に立つを見て、腰を抜かしていた。

「……どしたの?」

「ほ、本當に召喚できるなんて……思ってなくて……」

「んー……ま、『ミーシャ』を召喚できる人なんて、滅多にいないけどねー」

眠たそうにあくびを溢し、銀髪が辺りを見回す。

「……ここはー?」

「え、あ、今は使われていない教會だよ……ここでなら、誰にも見られずに召喚できるかなって思って……」

「見られたくないのー?」

「………………うん……きっと、バカにされる」

を暗くする年……と、不思議に思ったが、何があったのかを問い掛けた。

「バカにされるってどゆこと?」

「う、うん……僕、落ちこぼれだから……落ちこぼれの僕が、最上級召喚獣を召喚する所なんて……誰かに見られたら、バカにされるよ」

「ふーん」

「僕より落ちこぼれの……『無能』って呼ばれるの子がいたけど……最近、學院に來ていないから、悪口の対象が僕になっちゃって……」

「そっかー」

「あ、あの……聞いてる?」

「んー聞いてるよー?簡単に言えば―――君をバカにした人を見返してやりたい、ってじでしょー?」

月明かりに照らされるが、しく微笑む。

その銀髪と相まって、幻想的なしさが増した。

「……うん……見返してやりたい」

「でしょー?……でも、見返してやるだけじゃーつまらないねー」

「え……と、どういう事?」

「君をバカにした人……いや、バカにした人の召喚獣を潰そっかー」

「あ、え?!そ、それは―――」

「見返してやるチャンスだよー?誰よりも上だって言えるチャンスだよー?……このチャンス、使わないともったいないよー?」

そう言って手を差し出すの言葉に―――年は抗えなかった。

弱き者に力を與える。強き者を引きずり下ろす力を貰える。

それは、なんて甘い言葉なのだろう。

実際、力の無い者からすれば……抗いがたいを持っている。

「そ……それじゃあ、契約……して、くれる?」

「いいよー……契約條件は、『君をバカにした者の召喚獣を潰す』だよー」

固く握手をわし―――ふと思い出したように、が自己紹介を始めた。

「あ、自己紹介がまだだったねー」

ふわりと、可憐にお辭儀し―――見た目に似合わぬ、妖しい笑みを浮かべた。

「―――『神族デウスロード』、『忌箱パンドラ』のミーシャだよー……よろしくー」

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