《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第2話「ケンカ」

「あのー。すみません」

龍一郎は、そう切り出した。

「あぁ?」

男3人が険悪な目を、一斉に龍一郎に向けてきた。

その目を向けられたとき、やっぱり割り込むんじゃなかった、と激しく後悔した。だが、一度切り出したからには、もう後には引けない。

「それぐらいにしておいたらどうですか。死んじゃいますよ。その娘」

「なんだ。庶民か? 貴族か?」

「は?」

庶民か貴族かと問われても、返答しかねる。

龍一郎の母親はスーパーの店員だ。父親は中小企業につとめている。どちらかというと、庶民の部類になるかな、と思う。

「庶民の分際で、口出しするとは良い度じゃないか」

「別に、ケンカしたいわけじゃないですよ。の子、死んじゃいそうですから」

が顔をあげた。

龍一郎と目が合う。

外燈が、のカンバセを照らしていた。

こうして見ていても、がアザだらけだとわかる。顔にも酷いケガをしている。ただ、怪訝なのは古い傷もなくないということだ。

右まぶたから、左にかけてヤケドの痕が見けられる。左耳から左のにかけても、同じように皮がただれている。

しかし、顔立ちそのものは人と言えた。

白髪のショートカット。は病弱なまでに白い。目元には清らかな靜けさがあった。マツゲは長く、目元を黒く縁取っている。

鼻は高くないけれど、それがを醸している。涼やかな人になるだろう、という將來を含んだ顔をしている。

セッカクの顔が、ヤケドでくすんでしまっている。いや。ヤケドだけではない。日々の疲れによって汚されたような、薄幸さがあった。

病弱なまでにの白いが、その薄幸さに拍車をかける。いわりには顔の郭がハッキリしている。そのせいで、どことなく大人びた印象をけるのかもしれない。

その濡れた瞳を向けられると、ドキリとするものがあった。

「こいつが死んでも誰も困りはしねェよ。これはオレたちの奴隷なんだからな」

「奴隷?」

ここは異世界だ。

奴隷制度があるのだろうか。だとすると、あまり良い世界に招かれたわけではなさそうだ。

「それにしても、たかが庶民がオレたちに口出ししてくるとは、良い度じゃねェーか」

「別に口出しするつもりは――」

顔面にコブシが飛んできた。

避けれない。

モロにくらった。

を切ったのかもしれない。の味が口の中で広がってきた。よろめた龍一郎に足払いをかけてくる。からみっともなく、転がった。

龍一郎はを守るため、胎児のようにカラダを丸めた。ワキバラや腰を蹴りつけてくる。嵐のような暴力が終わるのを、ひたすら待った。

「こんなもんにしておいてやるよ」

男の1人がそう言った。

「帰るぞ」

「おう」

と、3人の男たちは引き返してゆく。

痛めつけられていたは、髪をつかまれて地面をひきずられていた。まるで扱いだ。

はまったく抵抗しなかった。ただ、その靜謐せいひつさをめた目元だけは、ジッと龍一郎を見つめていた。

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