カーン、カーン、カーン。

と、村中に響きわたるような、けたたましい鐘の音が鳴り響いた。各々の家屋から村人たちが跳びだしてきた。その手には斧やらクワやらがあった。

(まさか、オレを殺そうとしてるのか？)

そんな様子ではない。

何か尋常ならぬ様子で、村人たちはストリートを駆けて行く。龍一郎が茂みに潛り込んでいる家の者も例外ではなかった。あわてたように家を飛び出している。空襲でもはじまるのかと思うような、あわてようだ。

跳びだして行った中に、さっきの薄幸のはいなかった。

よくわからないが、これはチャンスだ。家のトビラも開け放たれている。火事場泥棒のようで悪いが、これがを助ける絶好の好機に思えた。

茂みから出る。

周囲の者たちに気づかれないように、急いで家の中に忍び込んだ。

幸い、明かりは燈っている。

異世界というと中世ヨーロッパのイメージがある。でも、この世界では、電気は通っているということか。

そう言えば外にも、たくさんの外燈があった。

口は土間になっていた。木製の下駄箱がある。布の靴が置かれている。ファンタジックなじだ。

龍一郎は足だったから、一足頂いておくことにした。靴を履いたまま家の中にった。

どこもかしこも木造だ。プラスチックなどを加工する技がないのだろうか。

まだ家の中に人が殘っていないとも限らない。いちおう足音を忍ばせて、家の奧へと潛り込んだ。

木製のトビラがある。ドアノブは金屬製だった。わずかな隙間を開けた。中の様子をうかがう。

広間だった。

リビングだろうか。

木製の長椅子と、巨木を切りにしたようなテーブルが置かれている。テーブルの上には食が置かれている。食事中だったんだろうか。味そうなが乗っていた。

その向こうに、さっきのがいた。

全にコードのようなものがつながれている。

他に人がいる様子もない。龍一郎はそのに駆け寄った。

「おい、大丈夫か？」

はボロイ布きれを著ていた。布のバスタオルを巻いているかのようだ。

の出が激しい。肩は出ている。フトモモもさらけ出していた。そのカラダのあちこちに、コードが刺さっている。

そのコードをよく見てみると、カテーテルのように細い管になっていた。先端が針になってに刺さっているのだ。管の中にはのが通っているようだ。

「なんだ、これ？」

これに似たものを、どこかで見たことがある。

すぐに、ひらめいた。

獻だ。

この無數のチューブには、のが流れているのだ。まるでの翼を広げているかのようだった。

「を採られてるのか？」

針は舌にまで刺さっている。これはかなり痛そうだ。

「……」

は寡黙にジッと、龍一郎のことを見つめていた。

「抜いたほうが良いんだよな？」

こくりとはうなずいた。

「すぐに助けてやるからな」

は手足に枷をつけられていた。自分で、針を抜けないようにしているのだろう。

醫療的な知識はなかった。とりあえず一本一本を慎重に抜いていった。針は細いようで、抜いてもたいした出はなかった。

それでも、アザが殘っている。全アザだらけなのは、普段からこの謎の儀式が行われているからだろう。

すべての針を抜くことに功した。

すると――。

プツン。

家の電気が消えた。