《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第6話「バケモノとの遭遇」

スッカリ誰もいないと思いこんでいた。急に聲をかけられて酷く驚いた。さきほど龍一郎のことを毆りつけてきた1人だった。

金髪で、大きな琥珀の目をしている。勝気そうな印象をけた。龍一郎と同じぐらいの年だと思うのだが、顔立ちがあんまりにも整っていて、引け目をじる。

だが、をボコボコにするようなヤツだ。なくともこいつよりかは、オレのほうが格は良いに違いない――と龍一郎は思う。

「いや、これは――」

勝手に他人の家にり込んでいるのだから、言い訳も出來ない。

「良く見れば、さっきの男じゃないか。懲りもなく毆られに來たのか」

男がコブシを構えた。

龍一郎はあわてて銃を構えた。今さっき、から渡されたものだ。

撃ってやろうというつもりはなかった。ただ、手に銃があったから構えただけだ。

「く、來るな。來たら撃つぞ」

龍一郎がそう脅したが、男は笑った。

「バカめ。それは人間にたいして撃っても効果はねェーよ。ホントに庶民はなんにも知らねェな」

男はニヤニヤ笑って悠然ゆうぜんと、龍一郎に接近してきた。

しかし、男がはたと足を止めた。そうかと思うと、怯えたように後ずさりしていく。明らかに様子がオカシイ。龍一郎に怯えているはずがない。

「か、カンベンしてくれよ」

男はそう言い殘すと、部屋の奧に走り去って行った。

「なんなんだよ、いったい」

逃げたいのはこっちの方だ。

「こっち」

と、しわがれ聲のが、龍一郎のパジャマを引っ張ってきた。

「ん?」

振り返る。

そこにはトウゼンがいる。

しかし、もう1人いた。

いや、人なのだろうか。

それは実がなく、夜から生まれたかのようにモウロウとけぶっている。劇団の黒子のようだ。

人の形をなしているが、あきらかに人間ではない。顔が異形だ。目もなければ鼻もない。あるのはただ、口のみ。顔全が口になっている。

そしてその口の奧には、鋭利なキバがびていた。ダラリと舌がびている。その舌もあきらかに人の、それではない。蛇のように長く、ウネウネといている。

「な、なんだこれ……」

地球の生ではない。この世界獨特の生きなのだろうか。オゾマシイという印象をけた。純粋にグロテスクなのだ。

舌が長いせいで爬蟲類のようにも思えるが、そんな可らしいものではない。顔面10割を占める口の獰猛さは、見るに堪えない。

さっき男が逃げ出した理由は、こいつのせいだろう。

「しーっ。靜かに。ユックリと下がって」

がそう指示してくる。

「わかった」

後ずさりする。

黒子のような存在は、呆然と立ち盡くしている。

「さっき渡した銃を構えて」

「これか」

銃の扱い方なんかよくわからない。ましてやこの銃には、妙な容がついていたり、チューブがびたりしている。

それでも、トリガーがついている。トリガーを引けば良いということぐらいは、龍一郎にもわかる。

「來るッ」

がそうんだ。

黒子は獲を見出したかのように、猛然と龍一郎にむかって襲いかかってきた。

それと同時に龍一郎の腕に針が刺された。その針はが刺しこんだものだった。瞬発的に、チューブに龍一郎のが流れて、拳銃へと送り込まれる。

そして、龍一郎はトリガーを引いた。その一連の作は、ほとんどすべて同時に行われたことだ。

結果――。

龍一郎が握っていた銃からは、紅の銃弾が出された。

その銃弾は黒子に直撃した。「キィィィィィ」と黒板を引っ掻くような音をあげて、黒子は溶けていった。墨のように黒々としたになっている。

「倒した――のか?」

なんというオゾマシサだろうか。

龍一郎のカラダは恐怖のあまり小刻みに震えていた。

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