《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第13話「質値」

「おッ。お客さんかい?」

と、聲をかけられた。

車》の停車している小屋から、1人の男が出てきた。50歳前後といったところだろうか。

頭は禿げあがっていて、茹で卵のような顔をしている。目が線になっており、鼻は丸く、も線だ。いたって単調な顔づくりだった。

「どうも」

と、とりあえず會釈した。

「どこか行きたい場所があるなら、乗せて行ってやるよ。無料ってわけにもいかないけどな」

「あー」

つまり、貸し馬屋みたいなものか。ファンタジーというと馬車が走っているイメージだが、で車をかせるなら、馬は必要ない。

このまま、ベルを背負ったままでいるのも大変だ。乗せていってもらいたい。だが、お金なんか一銭も持ってない。日本円は使えないだろうし……そもそも、日本円すら持って來てないのだけど。

「都市。グランドリオンまで」

と、ベルが言った。

「お、おい。金が――」

「大丈夫。通貨はずっと以前から使われていない」

「使われてない?」

で支払える」

「それもなのか」

そんなにを使っても大丈夫だろうか。貧になりそうだ。しかし、まだ調に異変はないから大丈夫だろう。

「お客さん。お支払はどちらで?」

「じゃあ、オレが」

腕をさしだした。

「ここからグランドリオンまでの分を、いただきますよ」

者のオジサンはチューブを、龍一郎の腕に刺しこんできた。

こういうときにも服にが開いているのは便利だ。者の服にも同じようなが開いている。

この世界の洋服デザインは、いつでも採できるように、考慮されているのだろう。

「ん?」

と、者のオジサンは首をかしげた。

「どうかしましたか?」

「あ、いや。こいつは失禮しました。質値が、200を越えてる人なんてはじめて見ましたよ。もしかして王族の方ですか」

また王子と思われているようだ。

変な誤解はやめてしい。

王子じゃなくて、一般人だと力説したのだが――。

「わかりました。お忍びということですね。グランドリオンまでシッカリ運転させていただきます」

と、頭を下げるさまは、さながらコメツキバッタだ。

者は運転席に座る。

龍一郎とベルは後部座席に乗った。

質値ってなんなんだ?」

と、ベルに尋ねた。

の品質を數値化したもの。私のような奴隷は10以下。一般庶民でも20から30。貴族となると50を越える人もいる。王族は100を越えると聞いた。でも、200は異常。信じられない」

龍一郎が悪いことでもしたかのように、ベルが睨んでくる。

隣に座っている。顔が近い。顔の痛々しい傷跡がよく見える。それ以上に、瞳の虹彩に魅られた。ツユクサの花も見劣りするような紺青。ものすごくき通っている。

「……キレイだ」

「へ?」

ベルは呆けたような顔をした。

自分のセリフが、妙な勘違いを生むことに気づいた。照れ隠しに、あわてて弁解する。

「目のが青くて、とってもキレイだなぁ――と思って」

「お世辭だとしても、うれしい」

「……」

龍一郎はにたいして免疫がない。子と男子と同じ教室にいても、子はまるで違う世界にいる。

あらためて考えてみれば、子とこんなに近くに座ることさえ、はじめてかもしれない。

今まで背負ってきたけれど、下心を思い起こす余裕がなかった。冷靜になってみると、心臓がバクバク音をたてている。

幸いベルはすでに前方に顔を向けていた。龍一郎の揺を、悟られてはいないようだ。

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