《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第16話「都市のり口」

『暗黒病に染してるぞ』

『殺せッ』

『やめてくれッ』

というヤリトリが聞こえた。

城門棟のほうで騒ぎになっているようだ。どうやら、暗黒病にかかっている人間が見つかったらしい。

『クロエイになる前に殺せ』

という聲も聞こえる。

野次馬が働いて、そのり行きを見守っていた。染したとされる男は、城の兵士に剣で首をはねられていた。生首が転がっているのが、チラリと見えた。

「うっ……」

見なければ良かった。

「もしも都市の中にクロエイがったら、大変なことになる。これは仕方のないこと」

ベルはマッタクじることなく、暗い目をしたままそう述べた。

「……かもしれないけど」

並んでいる人にも、すこし揺が伝わっていたけれど、すぐにおさまった。みんなトウゼンのように都市へと進んで行く。

さいわいにも、暗黒病にかかっている人間は他には出なかったようだ。

龍一郎たちの順番が回ってきた。

「グランドリオンに何用か?」

そう問うてくる衛兵は、皮の鎧をにまとっていた。その鎧にも、ちゃんとチューブを刺しこめるようなが開いていた。

腰には剣が攜えられている。その兇刀がひらめくかもしれないと思うと、恐怖でしかない。

「別に、用事というほどでもないんですけど」

都市があるからそこに行けば良い――とベルに言われたから、來ただけだ。深い事があったわけではない。

「通行手形や紹介狀は?」

「ありません」

チッ――と衛兵は舌打ちした。

「通號手形や紹介狀がない者を、れることは出來ない。いちおう暗黒病にかかっていないかだけ調べさせてもらう」

「……はい」

まずはベルから調べられた。調べるのに使っているのは、貸車屋で質値を調べられたと同じものだった。チューブを刺しこまれて、質値を調べられる。

質値3。暗黒病にはかかっていないが、奴隷レベルだな」

衛兵は、ベルのことを蹴り飛ばした。

「うぐっ」

と、ベルが突き飛ばされる。

龍一郎はあわててベルのことをけ止めた。

「なにするんですか!」

思わず龍一郎は、衛兵にたいして怒鳴った。

衛兵はムッとした顔になり、刀剣の柄に手をかけていた。

「なんだ? 文句でもあるのか?」

「あ、いや……」

剣をちらつかせられては、何も言えなくなる。

「大丈夫か?」

「……うん。これは普通のことだから」

奴隷に暴力を振るうのは、貴族の特権ではないらしい。

「次はお前だ」

と、なかば強引に衛兵にチューブを刺しこまれた。

チクリとした痛みが走った。

龍一郎はされるがままになっていた。おそらく暗黒病にはかかっていないはずだ。が、確信は持てない。

一度クロエイには遭遇している。そのときに、影を食われているかもしれない。張を抱えて、結果が出るのを待った。

「んんっ?」

と、衛兵が奇怪な聲をあげた。

「どうした?」

と、他の衛兵たちも集まってくる。

質計の故障かもしれん。他の質計を持って來い」

どうやら質値をはかるを、質計というらしい。また同じように、質値を調べられた。

質値……200越えだと……。まさか、フィルリア姫と同じ、いや、それ以上の……」

衛兵はブツブツと呟いていた。

「結果はどうなんでしょうか?」

と、龍一郎が問いかけた。

斬り殺される心配のため、こっちはビクビクだ。

「あ、こ、これは失禮いたしました。王族のかたとは知らずに、非常に失禮な行を働いてしまって」

どうぞ、お通りくださいッ――と道を開けてくれた。

衛兵たちの顔は青ざめていて、汗をたらたらと流している。カワイソウになるぐらいの慌てっぷりだ。あまりの対応の変化には、唖然あぜんとさせられた。

「通っても良いんですね?」

「どうぞ、どうぞ」

龍一郎はベルを連れて城門棟をくぐった。龍一郎が振り返っても衛兵たちはまだ、腰を90度に曲げていた。

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