《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第19話「ベルとのお食事・後編」

2人分のフレンチトーストが來た。

パンの耳はこんがり焼けていた。の部分はミルクとバターをたっぷり吸っているせいか、なかばトロけていた。

砂糖がまばらにかかっていて、けて星屑のようにきらめいていた。

ナイフとフォークがついてきたが、それを使うほど龍一郎は行儀が良くない。

耳の部分をつまんで、かじった。ベルはどうやって食べれば良いのかわからないようで、オロオロと龍一郎の顔とフレンチトーストを見比べていた。

ずっと無反応だったから、見ていて新鮮だった。ようやくベルの人間らしい一面を見れた気がする。

「こうやって、耳の部分をつまんでかじれば良いんだよ」

「こう……」

パンのの部分からミルクが垂れて、機上に水滴をつくった。

「ほわっ」

と、ベルがあわてたような聲を発した。

「大丈夫。そのままかじれば良い」

ベルの桜が開かれる。白い真珠のような小粒の歯があらわになった。パクリ。フレンチトーストが口の中に消えた。

「!」

雷に打たれたように、ベルのカラダが跳ねた。

味しいか?」

味しい」

ベルの青い瞳が輝いていた。があるのか怪しかったが、ここまで喜んでくれる姿は、見る価値があったなと思った。

食後に紅茶を頼んだ。

特別なことをしたつもりはないが、紅茶を頼むとメイドから不審な目で見られた。

ベルの分も持ってきてもらった。ベルの手は激しく震えていて、紅茶のカップを持つことが出來ないでいた。

「紅茶を頼んだだけなんだけど、高価なブランドだったのか?」

「こ、紅茶とか、コーヒーはこの近くで栽培することが出來ない。だから輸に頼っていて、それで、稅金が高くて――」

「あぁ、要するに高級品なわけか」

地球でも、プロイセンでは、勝手にコーヒーを飲むことが止されるぐらいの高級品だった。

コーヒーや紅茶が高級なのは、ゼルン王國でも同じなのだろう。龍一郎ぐらいの青年が、紅茶を注文するというのは、それだけ珍しい景なのかもしれない。

でも、注文した甲斐はある。

ベルの顔にはあきらかに揺のがあった。表がうまくかせないと言っていたが、神的な理由なのかもしれない。心の傷を忘れているときは、表かせることも出來るのだろう。

紅茶に怯えるベルを見ながら、龍一郎は朝食を楽しんだ。

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