《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第20話「と紅茶と

「あのー」

と、飲食店のメイドが聲をかけてきた。

の下地に白い前掛けの服を著ている。いかにもメイドらしいカッコウをしている。

メイドの後ろには大柄な男が2人立っていた。用心棒か何かかもしれない。

「なんですか?」

「お支払のほうは大丈夫でしょうか?」

「ええ。たぶん――。で支払うんですよね?」

「じゃあ失禮して」

後ろに控えている用心棒は、――干からびるまでを絞り出してやるぞ――といった形相だった。

腕にチューブが刺しこまれる。また、衛兵が使っていた質計だった。

「まぁ!」

と、メイドは聲をあげた。

「足りますよね?」

「これは失禮しました。まさか質値がこんなに高いと思いませんでしたので。それでは、これだけのをいただきます」

メイドはメスシリンダーのような容を見せてきた。

そこには、龍一郎から採ったっていた。かなり量だ。龍一郎が飲んだ紅茶よりもない量だった。

「これだけで良いんですか?」

紅茶は、高級品だと聞いていたから、もっと採られるのかと思っていた。

質値が200を越えていますので、量で構いません。どうも、またのお越しをお待ちしております」

店を出るときは、メイドたちがぞろぞろと出てきた。用心棒も一緒に頭を下げてくるありさまだ。

気まずいのですぐに立ち去った。

ストリートに出た。腹ごなしと観もかねてし散歩しようかと思った。

だが、あんまり歩くのはベルが辛そうだった。広間があったから、そこのベンチでくつろぐことにした。

の質が良いってのは、すごいことなんだな……」

で電気や火を起こすことができる。それだけじゃない」

ベルが広間の中央を指差した。

広間の中央には妙なオブジェが設置されていた。臺座があって、その上に石で出來た龍の首が置かれているのだ。

年が1人、そのオブジェの前に立った。

オブジェからはチューブがびている。年はみずからの腕にチューブを刺した。チューブの中を、が通っていく。すると、龍の口からは水が出てきた。

年は、それを桶でくんでいるのだった。

「水も出るのか」

「そう。龍の管にを流しこむことで、地下から水があふれてくる。だから人はああやって給水泉で水をくんでいる。あと、森、山、川などから水を運んでくる水売りという職種の人たちもいる。水売りたちから水を買う人もいる」

「なるほど」

年のほかにも水をくみに來る人は、たくさんいた。その景を見つめていた。

晝のが、朗らかな溫もりを都市に落としていた。レオーネという世界に來てから、ようやく一息つけた気がする。

「……ありがとう」

ベルはそう呟いた。

「え?」

「フレンチトーストと紅茶。たぶん、私は一生この味を忘れない」

ベルはそう言うと、頬の左右に人さし指を當てて笑顔をつくった。

ベルの手式笑顔。

かわいい。

思わずドキッとしてしまった。

「ど、どういたしまして」

ベルの笑顔があんまりにもカワイイものだから、直視できなかった。

オレ――白神 龍一郎は異世界転移をしてしまった。

決して、平和な世界とは言えない。でも、地球に戻ろうという気はなかった。両親には心配をかけてしまうだろう。行方不明ということになってしまうのかもしれない。

それでも、異世界というのはを昂ぶらせる。毎日、學校という鉄筋コンクリートに箱詰めにされる生活よりかは、いくぶんか魅力的だ。

なにより――。

龍一郎はベルの橫顔を見つめた。白磁のような白い頬に、痛々しいヤケドの傷が2つある。

その場の勢いとはいえ、ベルというを助け出したのだ。一度、手を出したからには、責任をもってこの娘を守らなくちゃいけないと思う。

これは正義ではない。

(たぶんオレは)

この世界に見捨てられたに、をしたのだ。

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