《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第23話「マチス・ヒューリー侯爵Ⅲ」

質値200を越える者がいてくれれば、我がヒューリー家は安泰だ。このゼルン王國でもっとも権威の強い有力貴族となる。

王を傀儡にすることだって出來る。そして、フィルリア姫を振り向かせることも出來る。

いやいや。

振り向かせるどころではない。最強の有力貴族にもなると、第三王を貰いける権利ぐらいいただけるはずだ。

ヨダレが出そうになる。

あの高貴なお姫さまを権力をもってして、我がものにすることが出來るなら、どんなに良いことか。

本來フィルリア姫に獻上する予定だった、《影銃―タイプ0》を、こっちに獻上するのも悪くない。咄嗟にマチスの脳裏で、そういう計算が働いた。

「おい、あれを持って來い」

メイドにそう命じて、《影銃―タイプ0》を用意させた。テーブルの上にガラスケースにった《影銃》が置かれた。

いつ見てもしい。従來の《影銃》とはまず大きさが違う。

「これは?」

シラカミリュウイチロウも興味を寄せられているようだ。よしよし、食いついているなという手ごたえをじた。

「これは私のもとで開発させた。最新式の《影銃》でしてな。《影銃―タイプ0》と言います」

「《影銃》ですか」

シラカミリュウイチロウは、ガラスケースを覗きこんでいた。

「一度の発で、複數の出することが出來るようになっております。の消費量が激しいのがネックですが、なかなかの破壊力ですよ」

「ショットガンですか」

「ショットガン?」

「ああ、いえ――」

と、シラカミリュウイチロウは口ごもった。

「どうですか。良ければ差し上げますよ。ただ、我がヒューリー家に仕えていただきたいのですが」

「いや。こんなのいただけませんよ」

と、拒否された。

これだけではダメだ。

もう一押し何かあれば、懐できそうな気がする。質値200。ノドから手が出るほどしい。

「じ、実はうちには息子が1人と、娘が1人おりましてな。娘のほうはまだ12歳なんですが、貴族のですから、いずれはなかなか気品のあるになりましょう。婚約相手としていかがですかな?」

「え、こ、婚約?」

シラカミリュウイチロウはあからさまに、あわてた様子だった。

ここが押しどころだと、マチスは気づいた。

シラカミリュウイチロウという男。たしかに壯絶なの持ち主だ。ただ、やはり男だ。には弱いようだ。

「婚約ですよ。そちらの奴隷ももう使い古しのようですから、こっちで処分しておきましょう。新しく良い奴隷を用意しますよ」

「それはお斷りします」

と、シラカミリュウイチロウの聲が、急にこわばった。

「なになに。遠慮する必要はありません。うちの奴隷にはなかなか、良いのがそろっておりますから」

マチスが、指をパチンと鳴らした。

メイドたちがやって來た。シラカミリュウイチロウから奴隷を引き離そうとした。だが、次の瞬間にはシラカミリュウイチロウは、奴隷を連れて応接室を跳びだしてしまった。

「あ、こら。どちらへ行かれるかッ」

しくじった。

もしかして、お手付きの奴隷だったのかもしれない。奴隷をみ者にする貴族もいると聞く。

マチスはそういう類の人間ではない。奴隷とわったら、自分のの質が落ちるような気がするからだ。

「あの年を追いかけろ。逃がすんじゃない」

マチスは聲を張り上げた。

テーブルの上には、自慢の《影銃―タイプ0》が殘されていた。

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