《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第28話「雨」

クラウスが部屋を出て行くと、いっきに部屋は靜まりかえった。暴風のような男だ。

「――というわけ」

と、ベルが暴風の余韻を継いだ。

「クラウスは、本気でナンパしたわけじゃないって言ってたな」

その言葉を聞いて、安堵した。

クラウスはすくなくとも龍一郎よりイケメンだった。もしもクラウスが本気でベルに告白したら、ベルは龍一郎の手元から離れてしまうに決まっていた。

好きな子が、別の男子のところに行く。

それで好きな子が幸せになるなら応援してあげるべきだろうけど、やっぱり素直に喜べない。

しかし、龍一郎の思いとはウラハラに、ベルはショックをけたようだ。

「バケモノみたいな顔をしてる私なんかに、カワイイと思ってくれる人なんか、いるわけがない」

いっきにしゃべるのが辛いようで、ベルは途切れ途切れにそう言った。涙こそ見せないものの、ベルの表は深く沈んでいるように見えた。

「そんなことはないッ」

それは斷じて違う。

勵ましているわけでも、同しているわけでもない。

たしかにベルは顔に、酷いヤケド傷を負っている。だが、それを踏まえても、かなり人だとわかる。

白髪のショートカットも。靜けさをたたえた青い瞳も。哀愁ただよう目元も。泣くまいとするかのように、く結ばれているも……。顔立ちはしいのだ。

「じゃあ、私の顔を見てどう思うの?」

「き、キレイだよ。とっても。人だと思う」

頭にカーッと熱があがってきた。

照れ臭さが口を閉ざしてしまう前に、いっきにそう言った。

その言葉をけたベルのほうも、白い頬を桃に染めていた。

「あなたは、優しい。たとえお世辭でも――」

「オ、オレはベルのことが――」

「?」

好きだ。

言えない。

自分の顔が赤くなっていくのをじた。

「いや、なんでもない」

と、結局逃げてしまった。

スキの2文字はどうして、こんなに重いのだろうか。張もあったけれど、さっき會ったばかりの相手に言うようなことでもない気がした。

ただ、龍一郎の脳裏には、ベルの手式笑顔がこびりついて離れない。それだけは確かだ。

フレンチトーストを食べたあと、人差し指でその頬をクイッと押し上げて、「ありがとう」と言ってくれたのだ。

あれが、忘れられない。

あの笑顔を見せてくれるなら、なんでも出來る気がする。

人を好きになるっていうのは、こういうことなのかもしれない。

ポツンポツン――と窓を叩く音がした。

「ん?」

外。

水滴がついている。

「雨」

(さっきまで天気良かったのにな)

気絶してる間に、天候の変化があったのかもしれない。不穏な兆しをじた。

「曇ったら良くないんじゃないのか?」

「クロエイが沸きやすくなる。今はまだそんなに暗くもないけど、夜になると」

「オレも何か手伝ったほうが良いのかな」

龍一郎のは、特別製だ。

この都市にとって役に立てることがあるなら、使うべきだろう。クラウスの言葉に銘かんめいをけたわけではないが、都市の安全は龍一郎の安全にも直結する。

「寢ておいたほうが良い」

「オレはもうけるよ」

「そういう意味じゃない。今は眠って、夜に備えておいたほうが良い。クロエイが來たときのために」

なるほど、と思った。

「ベッドが2つあるんだ。ベルも休むと良い」

ちゃんと言っておかないと、ベルはベッドを使わないような気がした。

「うん」

それじゃあお言葉に甘えて、眠らせてもらおう。

昨日は一睡もしていないのだ。異世界転移してきた疲労もあった。気絶していたとはいえ、まだまだ眠り足りなかった。

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