《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第44話「《影銃―タイプ0》と龍一郎の能力」
クラウスは助からなかったが、龍一郎は間に合った。ガラス張りのケースの中にベルもいるから、すぐにでも助けられる。しかし、この館がクロエイに囲まれているという狀況に変わりはない。
クラウスの生首が床に転がりっ放しなので、ソファに置いておいた。手を合わせて冥福を祈った。
一刻も早くベルを救い出したいところだ。だが、ベルはチューブとつながっている。この執務室の部屋の明かりを保ってくれているのだ。
チューブを外さないように気を付けて、手足の枷を外した。
「ベル。大丈夫か?」
「……うん」
「良かった。生きてて」
顔をボコボコになるまで毆られているから、さすがに元気はないようだ。
「ありがとう」
ベルは自由になった手を、みずからの頬に持っていった。そして人差し指で、クイッと頬を持ち上げてみせた。
ずっと見たかった、ベルの笑顔だ。
抱きしめたくなる衝をおさえるのに必死だった。こんな狀況だというのに、龍一郎は自分の顔が熱くなるのがわかった。
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「え、えっと……。チューブは刺さったままだけど、大丈夫か? 良かったら代しようか?」
「大丈夫。この部屋の明かりだけだから、たいした量のは採られていない」
「なら良いけど。ムリはするなよ」
「うん」
ベルは下著姿だった。執務室を漁ってみると、何著か、ガウンのようなものを見つけた。ベルには、それを著ていてもらうことにした。
フィルリア姫はイスに腰掛けて、思案気な表をつくっていた。そのイスはさっきまでスクラトアが座っていた重厚のあるものだった。フィルリア姫のような気品のある者が座ると、いかにも様になった。
を飲ませてもらったこと。フィルリア姫に禮を言っておくべきだと思った。
「あの――。を飲ませていただいて、ありがとうございます」
「気にすることはない。それよりも――」
品定めでもするかのように、フィルリア姫は龍一郎を見てきた。
「なんですか?」
ところどころ服は破れているし、ケガもしている。特に左肩の出が激しい。クロエイにかぶりつかれたところだ。ジロジロ見られて、堂々としていられる姿ではない。
「君の質値を調べさせてもらいたいのだが」
「オレのですか?」
「今晩は、籠城戦になる。君の戦力を確認しておきたい」
「わかりました」
質値200だと口で言うこともできる。だが、200だと言ってもみんなあまりの數字に、確認し直したほどだ。口で説明するよりも、実際に確認してもらったほうが、信じてもらえるだろう。
「は足りてるか?」
「ええ。今のところ、問題ないみたいですけど」
カラダが冷えるということも、メマイがするということもない。気盛んというわけでもないが、を消費しすぎたはなかった。
フィルリア姫にチューブを刺されて、質値を調べられた。
質値の結果を見て、フィルリア姫は目を見開いていた。
「質値200だとッ」
「そうみたいです」
質計と龍一郎の顔を何度も見比べていた。そのあまりに整った顔立ちが、驚愕のあまり多歪んでいた。それでも人であることに、変わりはないが。
「並の質値ではないと思っていたが、まさかここまでとはな。そうすると13人目の龍神族というわけか」
「龍のを引いてるはずは、ないんですけどね」
「龍神族というのは龍のを引いている者ではない。龍と同等の質値を持つ者という意味だ。しかし、まさか質計の針が振り切るほどとはな」
フィルリア姫は咳払いをはさんで、言葉をつづけた。
「龍神族のはふつうの人間とは違って、特殊なチカラをめている。たとえば私の場合は暗黒病にならないということ。他人に自分のを飲ませれば、暗黒病を治すことが出來るということだ」
「はい」
その能力のおかげで、龍一郎は助かったのだ。
「私の予想でしかないのだが、君の龍神族としてのチカラはもしかすると――」
「なんですか?」
「が減らないのではないか?」
「が、減らない?」
と、龍一郎はおうむ返しになった。
おうむ返しにもなるのもムリはないだろう。が減らないなんて、クロエイに負けず劣らずのバケモノだ。
「《影銃》というのは、消費するの量が激しいのだ。それを君は今日、何発も撃っている。おまけに、さきほどクロエイに噛まれて酷い出をしている。なのに君はピンピンしている」
言われてみれば、そうかもしれない。
クラウスも《影銃》はの消費が激しいと言っていた。
「フィルリア姫がそう言うなら、そうなのかもしれません」
「そこで――これだ」
フィルリア姫が機上を指差した。
そこには、マチス侯爵の虎の子である《影銃―タイプ0》が置かれている。のショットガンだ。
「一発撃つだけで、貧になるとかスクラトアは言ってましたけど」
まったく実用的じゃない。
「もしも君が、の減らない能力を持っているのであれば、この銃はまさしく君専用の武と言っても過言ではない」
「たしかに、そうですね」
ガラスケースから《影銃―タイプ0》を取りだした。今まで使っていたものより、はるかに重みがあった。裝著されているチューブも5本になっている。
「とにかく、朝になるまでは籠城戦になる。使えるものは使うべきだろう」
「そうですけど、5本もチューブを刺すのは厭になりますね」
「そう言うな」
と、フィルリア姫は苦笑してみせた。
いつクロエイが來ても良いように、右腕に2本。腹部に3本のチューブを刺した。あんまり振り回したりすると、チューブが抜けてしまいそうだ。全部のチューブを刺し終えたとき――。
「助けて……助けてくれッ……」
泣きながらってくる者があった。
スクラトアだ。
その後ろにクロエイがいる。
舌打ちしそうになる。
勝手に出て行ったあげく、クロエイを引き連れて戻ってきたようだ。
おまけに、スクラトア本人も暗黒病にかかっているのが、すぐにわかった。
たちまち闇がスクラトアを呑み込んでいく。
「次から次へと、ホントウにクロエイというのは厄介なものだな」
フィルリア姫が、ウンザリしたように立ち上がった。
スクラトアがクロエイになることに関しては、別に悲しいとは思わなかった。むしろ、ベルのカタキを討つことが出來る。ただ、後ろにくっ付いてきたクロエイには驚かされた。顔がマチス侯爵だったのだ。
これは厄介だ。
クラウスのクロエイにも、あれだけ手を焼いたのだ。
今度はそれが2匹。
しかも1匹は侯爵だ。
この世界において、侯爵というのはかなり質値が高いのではないか、と容易に想像できた。
ただ、さきほどのクラウス戦とは、その手にある武が違う。あと問題なのは、ホントウに龍一郎にが減らないという能力が、宿っているのか否かといったところだ。
龍一郎は、《影銃―タイプ0》を構えた。
- 連載中10 章
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