《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第47話「ベルの気持ちⅡ」
足が上手くかない。
なので、リュウイチロウの宿泊している3階から、1階までおりるには苦労する。
「お、ベルちゃん。氷水の換かい」
宿屋の主人がそう聲をかけてくれた。ツルツル頭のオジサンだ。
「はい」
「こんなケガだらけの娘を働かせるなんて、ロクな主じゃないね」
「あの人のこと、悪く言わないでください」
ベルは宿屋の主人を睨んだ。
看病してくれと頼まれたわけではない。むしろ、看病なんかしなくても良いと言われているぐらいだ。
これは、ベルが進んでやっていることだ。
「ゴメンよ。冗談じゃないか」
その様子だと相當惚れこんでいるね――と主人は茶化してきた。
「……私は、けた恩を返そうと思ってるだけです」
「義理で働いてるって言うのかい?」
「……」
義理なんかではない。
しかし、ベルにはリュウイチロウに向けられるの正がよくわからなかった。
主人は意地悪そうな笑みを浮かべた。
「でも、あの主人を他のに取られたら厭だろう。ウワサに聞くと、あの傾國の姫と言われるフィルリア姫が、シラカミリュウイチロウのことを狙っているとか、なんとか」
知っている。
フィルリア姫が、専屬騎士としてリュウイチロウを勧していたところを、ベルも見ている。
フィルリア姫はしい。一緒に歩くのが厭になるぐらい、差がある。レオーネには「龍のとクロエイ」というコトワザがある。
もっとも貴重なものと、もっとも醜いもの――両極端とか、正反対の意味で使われる。まさしく自分と、フィルリア姫だ――とベルは思う。
リュウイチロウはしかし、「ベルを放ったらかしには出來ない」と言って、フィルリア姫のいを蹴ったのだ。
あれはベルにとって、涙が出るほどに嬉しいことだった。なぜ、嬉しかったのかは、自分でもよくわからない。
「奴隷は捨てられたら、また他の主人を探さなくちゃいけないから」
「いやッ」
耳をふさいだ。
もしも、リュウイチロウが死んだら、ベルは他の貴族に飼われるのだ。そんなこと想像したくもない。
一刻でもはやく、リュウイチロウには元気になってもらいたい。元気になってもらわなくては困る。
「ゴメン。し意地悪しすぎたか。彼はこの都市を救った英雄だ。誰も、彼のことを悪く思っちゃいない。君も安心して彼を信用していると良い」
はい。氷水だよ――と冷たいカタマリが渡された。
「ありがとうございます」
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