《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第54話「ケルゥ侯爵との出會い」
グランドリオンでもそうだったが、騎士、という存在は、王都に仕えているわけではないようだ。各都市の領主に従っているわけだ。いかにも封建制の國家といったじだ。
「やぁやぁ。下等人種のために、を差しだそうという好きがいるそうじゃないか」
と、白馬に乗った男が近づいてきた。
風貌からすると、壯年といったところだ。40歳前後と思われた。華のある顔をした男だ。金髪。目は細いが、聡明ながあった。鼻が異様に高い。口髭とアゴヒゲを薄く生やしていた。笑うと白い歯が見えた。
「あなたが、ケルゥ侯爵ですか」
「いかにも」
ケルゥ侯爵は、大仰にうなずいた。
白馬から下りて、龍一郎の前に立った。
見た目は優しそうな人だ。
しかし、龍一郎は警戒心を忘れなかった。差別意識の強い領主だと聞いている。その上、差別を肯定する政策をとっている〝純派〟だそうだ。
「オレは、白神龍一郎と申します」
フィルリア姫の命令をけて來たということ。そして、を差し出すから爭いを止めてしいということを述べた。
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ケルゥ侯爵は腹を抱えて笑った。
「はははははッ。これは面白い青年だな」
「面白いですか?」
「わざわざ庶民や奴隷のかわりに、を差し出すというのか?」
「ええ」
龍一郎のは、いくら消費しても減らないのだ。人の命がたくさん救えるのだから、貢獻するのが道理というものだ。
それで、グランドリオンやベルの信用を得たのだから、戻ってくるもののほうが大きいと思う。
「思想の違いかな。まぁ良い。そこまで言うのなら、をいただこうか。今、我が都市は大量のを必要としていてね」
「明かりですか?」
グランドリオンも、奴隷のでこうこうと照らされていた。だが、庶民までを要求されてはいなかった。
「それだけではない」
詳しくは何か教えてくれなかった。
質計が用意された。龍一郎の腕に採針が刺された。龍の管と言われるチューブを通り、龍一郎のが吸い取られてゆく。そして、「0」を指していた質計の針が、いっきに200まで跳ね上がった。
「ん? すまんな。質計が故障しているようだな」
「いえ。合ってます」
「は?」
と、ケルゥ侯爵はホウけたような表をしてみせた。
「だから、200で合ってますよ」
「ためしに他の質計で試してみても良いか?」
「ええ」
もう慣れたヤリトリだった。
ふたたび針が刺される。さすがは文化というだけあって、採針はいくら刺されてもたいした傷にならなかった。この採針に関しては、地球の文化よりもずっと優れている。
それでも、ベルのように暴に刺されたりすると、痕が殘りはする。
他の質計で試してもらった。
「やはり200か。異國の王子か? それとも、國王の隠し子かな? まぁ良い。道理であのフィルリア姫に遣わされてくるわけだ」
ケルゥ侯爵のその言葉には、何か意味がふくまれているようにじた。
「フィルリア姫に遣わされてきたら、変ですか?」
「あの娘は、王國一しいが、王國一の頑固者だからな」
「頑固?」
言われてみれば、そうかもしれないと思った。
何度も龍一郎のことを、専屬騎士に勧してくるところなんかは、頑固と言えるかもしれない。
「フィルリア姫に貢などを送る貴族も多い。あれだけの貌だからな。この私だって夢中になっていた時期がある。けれど、ゼッタイに際することを承諾しないのさ。専屬騎士だっていないしな」
「そうなんですか」
あのフィルリア姫から、専屬騎士にならないかと勧されたのは、思っていたよりもスゴイことなのだと実した。
「質値200ともなると、納得だ。もしかして、龍神族といったところか」
「はい」
ケルゥ侯爵は、品定めするように龍一郎のことを見た。
「なるほど。まぁ、おかげで良いをもらえた。約束通り、この場は我が部隊を退かせよう」
「ありがとうございます」
話のわかる人で良かった。
ケルゥ侯爵は、白い歯を見せてニカッと笑った。歯が白いせいか、笑うといっきに若返ったように見えた。薄っすらと生やしたヒゲだけが、年相応の貫録をていしてた。
「もし気が向いたら、私の領主館を訪れてくれ。面白いをお見せできるだろうと思う。待っているよ」
ケルゥ侯爵は颯爽と白馬にまたがると、さわやかな笑みを殘して行った。
約束通り軍を退いてくれた。
おかげで、爭いはおさまった。龍一郎たちもセリヌイアへ行くことができるようになった。
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