《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第68話「黒髪の奴隷」

男が新しい質計を持ってくるあいだ、龍一郎とインクの2人になった。

勇ましい目が、龍一郎を見ていた。

「あんた、貴族か?」

と、インクのほうから尋ねてきた。

カラダ中が傷だらけなのはベルと同じだが、聲は潰れていなかった。

「いいや。貴族じゃない」

「ウソつけ。奴隷を買おうってんだから、貴族に決まってる」

「まぁ、貴族と同じぐらいの質値があるとは言われてるけどな」

「いいよな。質値が高いヤツは」

と、インクはいじけたように言った。

ベルと同じ奴隷だが、格はぜんぜん違う。最初に會ったとき、ベルの心は死んでいた。一方、このインクというは、反抗心に燃えているようだ。

質値なんて関係ない平等な世界をつくろうとしてる人もいる」

クラウスや、フィルリア姫のことを思ってそう言った。

「けッ。どうせ貴族どものお遊びだろ」

と、インクは龍一郎にむかってツバを吐きつけてきた。インクのツバは龍一郎の服に付著した。

インクの怒りは理解できた。この唾棄はインクの悲しい主張だとじた。そのせいか龍一郎はあまり怒りをおぼえなかった。

「オレの友人は――クラウス・ヒューリーって男だが、貴族は奴隷を守るべきだって主張してた。命をかけて最後まで、そう訴えていたよ」

クラウスの気持は決して、遊びではない。

フィルリア姫だってそうだし、エムールだって同じ気持のはずだ。

ふん――とインクは鼻で笑った。

「あんたはどうなんだよ」

「オレ? オレだって可能なかぎりは、平等な世界であれば良いと思ってる。この手で助けられるかぎりは」

「でも、あんたは最後にはきっと逃げる。あんただけじゃない。貴族ってヤツは、口では偉そうなことを言っても、どうせお遊びに過ぎないよ」

クラウスやフィルリア姫の気持を踏みにじられたような気がした。

「なに?」

さすがに龍一郎は鼻白んだ。

「賭けてみるか?」

と、インクは挑むように言った。

「なにを?」

「あんたはきっと逃げ出すよ。奴隷を救い出そうなんて、生半可な気持で手を出したら痛い目を見るんだ」

何を拠にそう言ったのかは、わからない。だが、インクは自信満々にそう言った。その態度が逆に、龍一郎に火をつけた。助けられるものなら、助けてみろ、と挑戦狀を叩きつけられている気分だった。

店主が戻ってきた。

ふたたび質計で計測された。壊れていないと確認がとれると、面長の男はたちまち顔を青くした。

「これは失禮しましたッ。まさか、王族のかただとは知りませんで……」

面長の顔をカウンターテーブルにこすりつけていた。

王族ではないし、皇族でもない。

誤解をとくのがメンドウなので、強引に話をすすめた。

「かしこまらなくてもけっこうですよ。それじゃあ、表の5人は購させていただきます。それとこの黒髪のも」

「あ、いや、それがですね――。先客がおりまして」

「先客?」

滝のように流れ出る汗をふきふき、面長の男はこたえる。

「ケルゥ侯爵がすでに奴隷の権利書を購しておりまして」

「じゃあ、どうして売ってるんです?」

「あとで引き取りに來るから、それまでこちらで預かっておいてくれ――と言われましてね。いや、悪気はなかったんですが」

先に買われたのなら、仕方がない。

インクを救い上げるには、ケルゥ侯爵と話をつけなければいけないようだ。

ウワサをすれば――そのケルゥ侯爵が奴隷をひきとりにやって來た。

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