《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第71話「領主館の地下奴隷」

奴隷を収容している地下を、ケルゥ侯爵は龍一郎に見せたがった。そんなものを見せられても糞が悪くなるだけのような気がした。遠慮したのだが、ケルゥ侯爵のいは執拗だった。

その地下施設はエムールも見たことがないそうだ。

負けして龍一郎は、その地下施設へ行くことになった。ただ、その地下をベルに見せるのは慘いようにじた。ベルとエムールには地上で待っていてもらうことにした。

地下には領主館から行くことができた。

地下へと続く石段をおりる。

地下といっても隙間なく明かりが照らされていた。先を歩くケルゥ侯爵の背中を、龍一郎は見つめていた。

(この人はどうしてオレに、地下を見せたがるんだろうか……)

ケルゥ侯爵の意見に賛してもらおうとしているのか、それとも、反対意見を聞きたいのか。あるいは、ただ見せたいだけなのか。

ケルゥ侯爵の腹の底が見えない。

考えてもわからなかったので、その背中に問いかけた。

「どうしてオレに地下を見せたいんですか?」

尋ねるとケルゥ侯爵は振り向いた。

「君は質値が200もある」

「ええ」

「そして君のはいくら消費しても、なくならいそうだね」

「よくご存知ですね」

がなくならないことに気づいたことを、あまりベラベラしゃべった覚えはない。し調べさせてもらったのだよ――とケルゥ侯爵は言った。

「龍神族というのは、もとから特殊能力を持っているのではなく、こちらの召喚されたときに、そういった能力を獲得するのだそうだ。老赤龍に認められた者にだけ、與えられるチカラだ」

「老赤龍?」

「君はレオーネに伝わる、龍の話を知ってるかね?」

「ええ。だいたいは」

最後の1匹になるまで、爭い続けて、そして死んだ――という話だ。

「その最後の1匹の龍の名だよ。その龍は今もなお、このセリヌイアの付近で生きているなんてウワサがある。処のように赤く、そして、騎士の魂のようにい鋼鉄のカラダを持っているらしい」

心當たりがあった。

シュバルツ村のロッツェオが持っていた、龍のウロコを思い出したのだ。

「老赤龍……」

名を呟くだけで、腹の底でがたぎるのをじた。

「龍神族は、その老赤龍が招いているなんてウワサもある。もっとも、真相はわからんがな」

「じゃあオレも、その龍に呼ばれたかもしれないわけですか」

ケルゥ侯爵は、首をかしげた。

「どうであろうな。私はその龍に會って話したことなどないからわからん」

冗談だったのか、ケルゥ侯爵は機嫌よく笑った。

「なににせよ、何かしらの使命を帯びているから、この世界に召喚されるのだ。それはフィルリア姫にしてもそうだし、他の龍神族もそうだ。そしてリュウイチロウくんの質値は、私の知る限りでは他の龍神族をもはるかにしのぐ」

「ええ」

フィルリア姫が130だとか聞いている。

「そんな君は、すべてを知っておくべきだと思うね。そして君が出す意見を聞きたいのだ」

「たいした意見は出せないかもしれませんが、こっちの世界についてまだ無知な部分が多いですし」

「それでも良い」

ケルゥ侯爵は、龍神族の存在――ひいては、龍一郎の存在を、何か特別なものと考えているようだった。

さらに石段をおりてゆく。

1段おりるたびに、空気が粘著を帯びているような錯覚にとらわれた。これ以上、下りてはいけないという警鐘が龍一郎の脳裏に響いていた。

今すぐにでも引き返したかった。けれど、ずんずんとケルゥ侯爵は下りて行く。龍一郎もまるで糸で引かれるがごとく、足を進めてしまう。

最後の石段を下りきる。

眼前。

大きな鉄のトビラが構えられていた。

ケルゥ侯爵がそのトビラを左右に押し開いた。巨大なドーム狀の部屋があった。

そこには、悪夢が広がっていた。

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