《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第73話「迷い」

宿。

ケルゥ侯爵が手配してくれた宿だった。

フローリングの床。簡素なテーブルが一腳。ベッドが2臺置かれていた。正面にはベランダに出るトビラがついていた。がさしこんでいる。

裝飾のない部屋だが、今まで宿泊してきた宿屋のなかでは、イチバンしっかりしている。

しかも、宿1つまるまる貸しきりだ。1階には大浴場もついてあり、自由に使って良いと言われている。

都市の中だが、ベルの室も許されている。

「お疲れですか。主さま?」

ベルが心配そうに、龍一郎の顔をのぞきこんだ。

「いや、ぜんぜん。オレよりベルのほうが疲れてるだろ?」

「私は大丈夫です。主さまがお傍にいてくれるだけで、元気になります」

そう言うとベルは頬に指を當てて、クイッと頬を持ち上げる。龍一郎を虜にした笑顔だ。心臓がキュンとつかまれたような心地になる。

「オレも大丈夫」

「でも、顔が優れません。お水でももらってきましょうか? それとも、何か食べるものが必要でしょうか?」

「疲れてるように見えるか?」

「はい」

部屋にはドレッサーが置かれていた。自分の顔を確認してみた。ベルが心配するのもうなずける。青い顔をしていた。自分の顔をツルリとナでつけた。

「疲れてるっていうか、ちょっと考え事だな」

「ケルゥ侯爵の件ですか?」

「ああ」

地下で見たことをベルとエムールには話してある。エムールは、さっそくフィルリア姫に手紙を書くと言っていた。

「地下で見たことはお忘れください。なにも主さまが気にする必要のないことです」

そんなことはない、と龍一郎はかぶりをふった。

「オレは弱者を助けるように、フィルリア姫から言われてきてるわけだし――。それに、オレのチカラなら助けられるかもしれない」

助けてくれよ――と怒鳴ったインクの聲が脳裏にこびりついていた。結局、インクもあの地下で力の養分になってしまうのだろう。

「まさか、1500人分の力を、主さまが肩代わりするのですか?」

「助けるとしたら、そうなる」

他に助ける手段なんか思いつかない。

「それは、いけません!」

と、ベルはぶように言った。

「もちろん即決できる問題ではない。でも、無視もできない」

「無視してください」

ベルにしてはずいぶんとハッキリ主張するなと思って、虛を突かれた。ベルも奴隷として辛い経験をしてきているはずだ。助けるべきだと言うかと思っていたので、意外だった。

「どうして、無視するべきだと思うんだ?」

「もしも、主さまに何かあったらと思うと……」

ベルのマナジリに涙がにじんだ。

「また泣いてる」

ベルのブルーの瞳からこぼれる涙を、龍一郎は人差し指の腹で救いあげた。自然で手がいた。なんの躊躇もなく、そんな行為ができた自分に驚いた。龍一郎の人差し指に向くな滴が付著していた。

「だって――」

「心配ない。今回の問題だけじゃない。オレにもしものことがあったら、フィルリア姫が助けてくれる。ベルの安全は確保するようにフィルリア姫に頼んである」

「そうではありません」

「違うのか?」

「私は――」

ベルは何か言おうとしたが、口ごもってしまった。

「オレはたぶん、今この世界でもっとも質値が高い。200、あるいはそれ以上。カンストしてるんだ。1500人の命を助けられるとしたら、オレしかいないだろう」

口に出してそう言うと、ズンと胃が重くなった。

1500人の命が、龍一郎のにかかっているのだ。

なにゆえ、そんな大役を擔うことになってしまったのか。

「とにかく私は反対です」

「今はまだ結論は出ない。ユックリ考えるつもりだ。とりあえず、フィルリア姫の返答を待つことにしようか」

龍一郎はベッドにを投じた。

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